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マンション建設反対運動、住民勝訴の判決は少ない

マンション建設反対の写真
Photo by マンション・チラシの定点観測 CC BY 3.0.
<マンション建設反対の写真>本文とは関係ありません。


(※17年6月28日この記事を更新)


もくじ


泉岳寺隣にマンション 反対住民の請願採択(東京新聞記事)

泉岳寺隣にマンション 反対住民の請願採択
赤穂浪士の墓でも知られる泉岳寺(港区高輪)の真横に計画されたマンション建設で、景観を損ねると主張して反対する周辺住民と寺が提出した請願が19日、港区議会の建設常任委員会で全会一致で採択された。

(東京新聞 14年9月20日)

港区登録文化財「中門」の真横に、8階建て高さ23mのワンルーム中心のマンションを建設するというトンデモナイ計画に待ったをかけることができるのか?
区建築課は「法的に問題はなく、業者にはよく説明するよう指導している」というよくあるパターンだ。
建築関係法令に抵触していなければ、行政は淡々と手続きを進めざるを得ない。
そうして、周辺住民の建設反対を押し切ってマンションが建設されるケースのほうが多そうだ。


念のために、裁判にまで至った例をひも解いてみよう。
一般財団法人 不動産適正取引推進機構のRETIO(判例検索システム)に「マンション建築紛争」として登録されている判例は43件(2017年6月28日現在)。
そのうち、眺望や日照、景観などのほか、住民の反対運動に関連した判例は26件(下級審での判決を除く)。


周辺住民の立場から判決の勝ち負けを見てみると、眺望や日照、景観など全21件のうち、建築工事の差止めに至ったのはたったの1件、慰謝料請求の一部を認めたのが1件、損害賠償を命じたのが1件、周辺住民の訴えの一部を容認したのが5件、残りの13件はすべて棄却されている。住民にとっては分が悪い結果となっている。
一方、住民の反対運動に関連した判例5件のうち、4件は住民側の勝訴、1件だけが業務を妨害されたとして100万円の支払いが命じられる結果となっている。


全26件の概要は以下の通りである。

マンション建設反対運動 判例26件の概要

眺望・日照(21件)
  • 【眺望】 札幌地裁(判決日:H16.3.31)RETIO 60-056
    • 分譲業者が建築し販売した15階建てマンションの高層階の購入者が、売主らが新たに同マンション南側に近接して15階建てマンションを建築したのは、信義則上眺望を害さないよう配慮すべき義務に違反するなどと主張して、売主らに対し提起した損害賠償請求の一部が認容された事例


  • 【眺望】 東京地裁(判決日:H15.1.21)RETIO 59-064
    • 自宅隣接地に建築予定の分譲マンションの高さ制限等を内容とする裁判上の和解に違反して建物が建築された場合において、和解成立後に同建物を買い受けた区分所有者等に対する損害賠償請求の一部が容認された事例


  • 【眺望】 東京高裁(判決日:H12.12.22)RETIO 52-071
    • 不動産販売会社のマンション建築・分譲計画において、建築確認取得後に市の条例が改正・施行され、高さ20メートルを超える建築物の建築が禁止された事案において、根切り工事・山留め工事は、建築基準法の「現に建築の工事中」の段階に至っておらず、改正後の条例の適用を受けるとして、高さ20メートルを超える部分は建築基準法に適合しない建築物になるとした事例


  • 【眺望】× 東京地裁(判決日:H20.1.31)RETIO 73-192
    • 温泉リゾート地のマンションの区分所有者らが、南側隣地に新築されたマンションによって眺望が阻害されたとして、分譲業者らに対し、共同不法行為に基づき、精神的損害に対する慰謝料を請求したところ、住民の眺望利益は法的保護に値するが、分譲業者らのマンション建築行為に違法性があるということはできないとし、住民の請求が棄却された事例


  • 【眺望】× 横浜地裁(判決日:H15.1.15)RETIO 58-064
    • 市の建築主事が建設会社に対して行った共同住宅の建築確認処分について、近隣住民らが高さ制限違反、容積率違反等を理由として、建築主事に取消しと国家賠償法に基づく損害賠償を市に求めた事案において、建築確認は、法的効果を付与されているにすぎず、当該工事が完了した場合においては、建築確認処分の取消しを求める訴えの利益は失われたとして却下され、本件処分には違法がないとして、損害賠償請求が棄却された事例


  • 【眺望】× 大阪高裁(判決日:H10.11.6)RETIO 42-045
    • マンションの建築により眺望が阻害されたことを理由とする住民の損害賠償請求について、原審では一部容認されたが控訴審では生活環境の受忍限度を越える立証がないとして棄却された事例 (原審 H10.4.16 大阪地裁 RETIO41-62)


  • 【眺望】× 大阪地裁(判決日:H20.6.25)RETIO 71-104
    • 超高層マンションの高層階を購入した住民らが、購入後、分譲業者が近隣に別のマンションを建築した結果、眺望等を害されたとして、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償を求めた事案において、住民らの眺望権が認められなかった事例


  • 【眺望】× 大阪地裁(判決日:H11.12.24)RETIO 45-054
    • 中高層建物が既に相当数建築されている地域において、約33m先のマンション建設により眺望が阻害される損害を負ったとする住民の損害賠償請求が棄却された事例


  • 【日照】 大阪高裁(判決日:H26.1.23)RETIO 99-72
    • 分譲マンションの住民らが、当マンションを分譲した分譲業者らが新たに南側の土地で始めたマンション建築に関し、日照阻害を理由とする建築工事差止めと、日照阻害又は分譲時の説明義務違反を理由とする慰謝料請求。分譲業者らの控訴を棄却した事例。


  • 【日照】 神戸地裁(判決日:H11.10.26)RETIO 48-069
    • 準工業地域における鉄筋コンクリート造り10階建てマンションの建設に関して、隣接地のマンション住民からなされた建築工事差止の仮処分が、日照阻害の点については地域性を考慮して受忍限度を超えていないとされたものの、著しい圧迫感・閉塞感を生じているとして一部容認された事例


  • 【日照】× 大阪地裁(判決日:H17.9.29)RETIO 65-080
    • 隣接土地に建築されたマンションにより、冬季は全く日照がなくなり、日照権を違法に侵害されたとして、隣接建物所有者に対して、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案において、その建物により日照が侵害されてもそれは社会通念に照らして受忍限度を超えるものとは認め難く、不法行為を構成するものではないとして、損害賠償請求を棄却した事例


  • 【日照】× 神戸地裁(判決日:H15.7.10)RETIO 60-044
    • 居住建物に隣接して建設されたマンションにより日照権が侵害されたとして、不法行為に基づく損害賠償を求めたが、本件マンションの建設による日照時間の減少や、圧迫感、閉塞感は受忍限度を超える違法なものと認めることはできないとして、本件請求(損害賠償請求)を棄却した事例


  • 【景観】× 最高裁(判決日:H18.3.30)RETIO 64-062
    • 東京都国立市所在の通称「大学通り」に面した分譲マンションの建築販売について、本件建物の近隣地域に学校を設置し、居住し、通学し、又は大学通りの景観等に関心を有する原告ら50名が、本件建物のうち、高さ20mを超える部分の撤去と、不法行為に基づく損害賠償をマンション分譲業者に求めた事案において、上告審においていずれも棄却された事例 (控訴審 H16.10.27 東京高裁 RETIO61-80)


  • 【景観】× 東京高裁(判決日:H15.2.27)取判 313
    • 憲法の規定ないし現行の都市計画法の規定は、特定の個人に景観を侵害する行為の排除を求めるべき地位を認めたものと解することはできないとされた事例


  • 【景観】× 横浜地裁(判決日:H17.10.19)取判 305-306
    • 開発区域におけるがけ崩れ又は溢水により直接的な被害を受ける可能性のある範囲の地域に居住している者は、開発許可の取消しを求める原告適格を有するが、良好な環境下に生活する利益ないしは景観権の侵害を理由とする原告適格は認めることができないとされた事例


  • 【眺望・日照】 仙台地裁(判決日:H7.8.24)RETIO 32-036
    • 眺望を売り物に9階建てマンションを分譲した業者が、その分譲後まもなく当該マンションの眺望及び日照を阻害する隣接マンションを建設することは信義則上の義務に違反するとして、当該マンション買主らが隣接マンションの工事差し止めを求めた事案において、隣接マンションの建築未着手部分について建築工事の差し止めを認めた事例


  • 【景観・日照・騒音】 東京地裁(判決日:H17.11.28)RETIO 65-072
    • 高層マンションの分譲業者に対して、近隣住民が景観利益、圧迫感のない生活利益、日照権及びプライバシー権を侵害されたとして、損害賠償等を求めた事案において当該マンションの一部撤去請求及び損害賠償請求が否認される一方、建築工事に伴う同住民の騒音被害については受忍限度を超えるとして慰謝料請求が一部認容された事例


  • 【景観・眺望】× 東京高裁(判決日:H13.6.7)RETIO 51-069
    • 隣地の4階建てのマンションの建築により、古都鎌倉の景観、眺望が侵害されたとする損害賠償請求が、景観を破壊、侵害したものでなく、また眺望利益についても受忍限度内のものであるとして、棄却された事例


  • 【景観・日照】× 名古屋高裁(判決日:H15.12.26)RETIO 57-136
    • 市の教育委員会から町並み保存地区に指定されている地区内に、マンション建築工事をしようとした開発業者に対し、地区住民が、高さ20メートルを超える部分の建築工事の差止めを求めた事案において、地区住民が主張した景観利益の侵害や受忍限度を超える日照被害等を根拠とした建築禁止の仮処分の申立ては理由がないとして棄却された事例


  • 【騒音】× 大阪高裁(判決日:H11.3.24)RETIO 45-079
    • マンションの建設により鉄道騒音道路騒音が反射して増大したとして、近隣住民がマンション分譲業者に損害賠償を請求した事案において、騒音の増加は僅かをもので、受忍の限度内であるとして、第1審判決を取り消し、請求を棄却した事例 (原審 H9.8.21 大津地裁 RETIO41-81)


  • 【風害】 大阪高裁(判決日:H15.10.28)RETIO 57-130
    • 高層マンションの建設により、風害が発生して被害を受けたとして、近隣住民がマンションの分譲業者等に対し損害賠償を求めた事案において、マンション建設による風害の因果関係、損害の発生等が認められ、分譲業者等に対し、共同不法行為により、財産的損害を含む損害賠償を命じた事例 (第一審 H13.11.30 大阪地裁 RETIO52-55)
反対運動(5件)
  • 【反対運動】 横浜地裁(判決日:H15.9.24)RETIO 58-080
    • マンションの建築予定地の近隣住民による、ミニコミ誌やインターネットの掲示板での当該マンションの建築に反対する趣旨の表現行為について、当該マンションの建築業者の名誉・信用を違法に毀損するものとは認められないとした事例


  • 【反対運動】 横浜地裁(判決日:H10.11.16)RETIO 48-060
    • マンションの売主業者が、近隣住民らに対し、設置した反対看板等の撤去及びビラ配布等の禁止を求める仮処分命令の申立てをした事案において、掲示物の内容は客観的な事実あるいは近隣住民の主張を記載したものであり、売主業者の人格権を侵害するものではないとして、申立てを却下した事例


  • 【反対運動】 名古屋地裁(判決日:H14.7.5)RETIO 56-064
    • 古くから商業地域内に居住していた住民が、自宅の南側に高層マンションが建設されることに抗議して、同マンションの建設販売会社等が出展している集合住宅展示場の周辺道路で、建設反対のプラカードを掲げ、ビラを配布した等のため、当該会社が、名誉を毀損されたとして、その行為を禁止する旨の仮処分命令を求め、住民側が表現の自由等を根拠に争った事案において、住民側の行った表現行為は違法性を帯びるとはいえないとし、仮処分の申請が却下された事例


  • 【反対運動】 大阪地裁(判決日:H11.2.26)RETIO 47-063
    • 分譲マンションの建設工事に反対する近隣住民の建設工事妨害行為が違法なものであるとまでいえないとして、分譲会社の近隣住民に対する損害賠償請求が否認された事例


  • 【反対運動】× 東京地裁(判決日:H9.7.9)RETIO 38-048
    • マンション販売業者が、マンション建設にあたり、周辺住民に対して8回の説明会を開き、工事協定書を取り交わしたにもかかわらず、独り販売業者を誹謗、中傷する虚偽の事実を記載したビラや看板を掲示し続けた者がおり、業務を妨害されたとして、その者に対して、その撤去と損害賠償を求めた事案において、同掲示は違法なものであるとして、その撤去と100万円の支払いが命じられた事例

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