不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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売れ残り住戸の管理費等は誰が負担するのか?

幹線道路と2車線道路の交差点沿いに建つ、郊外の中規模マンション。

物件概要
【第先着順】大手町駅直通42分、駅徒歩5分。総戸数91戸、10階建。販売戸数15戸、2LDK(73.31m2)〜4LDK(83.55m2)。販売価格2,890万円〜3,809.384万円、最多価格帯3,400万円台(4戸)。平成25年2月28日竣工済み(本チラシ掲載日の1年4カ月前)。

B4サイズのチラシ裏面の「物件概要」に目を凝らすと、すでに1年4カ月前に竣工済みのマンションであることが分かる。
チラシでは「免震」であることを喧伝しているが、あまり売れていないようだ。
総戸数91戸に対して、15戸(16%)が売れ残っている。
たとえ安価であっても、駅チカであっても、幹線道路沿いの環境劣悪で、郊外のマンションともなると、なかなかな買い手が付かないということなのであろう。


さて、竣工して1年4カ月が経っているのに、まだ15戸が売れ残っている。
この15戸分の管理費や修繕積立金は誰が負担することになっているのか?
以下、整理にしておこう。


もくじ


売れ残り住戸の管理費等は誰が負担するのか?

結論から言えば、売れ残り住戸の管理費等は、原則、分譲業者が支払義務を負っている。

区分所有法では、管理組合成立前のマンションについての分譲業者の管理責任が規定されていない

管理組合成立前のマンションについての分譲業者の管理責任については、日本の区分所有法は格別言及していないが、はたして立法論的にみて妥当かどうかは、区分所有法改正後に生じた数々の区分所有者の団体内部での紛争を顧みるならば、将来的に再考されるべき問題点である。
(日本マンション学会法律実務研究委員会編「マンション紛争の上手な対処法(第3版)」頁129)


分譲業者であっても、未分譲の区分所有権を所有する以上、共用部分の管理費等を支払わねばならない

でも、複数の区分所有権関係が発生した時期からは、分譲業者であっても、未分譲の区分所有権を所有する以上、共用部分の管理費等を支払わねばならないのは当然とされている(東京地判平成2・10・26判時1393号102頁・わかりやすい49。法19条)。
次のように、分譲業者には管理費等の支払が免除される旨の商慣習は認められていないのだ。

区分所有者は、複数の区分所有権関係の発生した時期、すなわち「区分所有建物の譲渡により区分所有権が発生し、区分所有権の登記等により区分所有建物であることが客観的に認識される状熊になった時から、法令、規約、区分所有者の団体の集会で定めるところに従い、共有部分の管理費等を支払う義務を負うと解すべきである。
上の時期に至ったならば、分譲業者であっても、未分譲の区分所有権を所有する以上、共用部分の管理費等を支払わねばならないのは当然である

被告(分譲業者)は、分譲業者には管理費等の支払が免除される旨の商慣習があるというが、上の慣習の存在を認めるに足る証拠はない」(東京地判平成2・10・26判時1393号102頁・わかりやすい49。法19条)。

なお、本稿で定義する管理組合が成立する以前においてもあるいは「管理組合」が事実上機能できないほどに崩壊している場合であっても、区分所有者の団体の構成員(未分譲区分所有権を有する分譲業者も含まれること勿論である)は、管理費等の支払義務を負担することになる。
(日本マンション学会法律実務研究委員会編『マンション紛争の上手な対処法(第3版)』頁135)


「未販売住戸があった場合、分譲会社は管理費や修繕積立金の支払い義務は免除される」といった旨を管理規約に盛り込むことで、分譲業者だけは、管理費や修繕積立金を支払わなくても済む

ただ、分譲業者は、必ず売れ残り住戸の管理費等を負担しなければならないのかと言えば、そうではない。
分譲業者は、売れ残り住戸の管理費等を負担しなければならないのは、あくまでも原則。
「管理組合が設立された以降において、未販売住戸があった場合、分譲会社は管理費や修繕積立金の支払い義務は免除される」といった旨を管理規約に盛り込むことで、分譲業者だけは、管理費や修繕積立金を支払わなくても済むのだ。


分譲業者が作成する原始管理規約で、自らの都合のいいような免除規定が有効なのか疑問に思うところではあるが、次の2つの判例において、分譲業者が作成した有利な管理規約は有効であると認められているのだ(北九州マンション問題研究会・福岡マンション問題研究会編『わかりやすいマンション判例の解説―紛争解決の実務指針(第2版)』頁287)。

  • マンハイム武庫之荘事件(大阪地判昭和62・12・25)
  • 熊本地判平成3・2・18


特定の者のみ減免する規約の項目に特記がなければ、売れ残り住戸の修繕積立金や管理費等は分譲業者が負担することになる

では、このような分譲業者の手前味噌な規定を確認する手立てがあるのかといえば――ある。
宅建業法施行規則16条の2で「マンションに関して特に説明すべき事項」として義務付けられている次の9項目のうち、「修繕積立金、管理費等の費用を特定の者のみ減免する規約の定め」の内容を確認すればいいのだ。

  1. 建物の敷地に関する権利の種類および内容
  2. 共用部分に関する規約の定め
  3. 専有部分の用途その他利用制限に関する規約の定め
  4. 建物または敷地の専用使用権に関する規約の定め
  5. 修繕積立金、管理費等の費用を特定の者のみ減免する規約の定め
  6. 修繕積立金の内容および既に積み立てられた金額
  7. 通常の管理費の金額
  8. 管理委託業者の氏名および住所
  9. 建物の維持修繕実施状況の記録

特定の者のみ減免する規約の項目に特記がなければ、売れ残り住戸の修繕積立金や管理費等は分譲業者が負担することになる。
「分譲会社は管理費や修繕積立金の支払い義務は免除される」といった特記があれば、マンション管理組合が負担(=マンション購入者が負担)することになる。
そんな業者都合(売れ残りリスクをマンション購入者に負担させている)の規約を設定しているようなマンションは避けるのが無難であろう。

マンション管理規約に定められる金銭的な負担を特定の者にのみ減免する条項について

ちなみに、平成13年1月6日付けで国土交通省総合政策局不動産業課長から各地方支分部局主管部長あてに通達した文書「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」には、購入者にとって不利な規約を定めること自体望ましいものではないとしながらも、宅建業者(分譲業者)に説明義務を負わすことで、購入者不利規定の存在を容認している。

マンション管理規約に定められる金銭的な負担を特定の者にのみ減免する条項について(規則第16条の2第5号関係)
マンション管理規約とは、分譲マンションの区分所有者が組織する管理組合が定めるマンションの管理又は使用に関する基本ルールであるが、新築分譲マンションの場合は、分譲開始時点で管理組合が実質的に機能していないため、宅建業者が管理規約の案を策定し、これを管理組合が承認する方法で定められる方法が多い。
そのため、購入者にとって不利な金銭的負担が定められている規約も存在し、その旨が「中高層分譲共同住宅の管理等に関する行政監察報告書」(平成11年11月)においても指摘されているところである。
このような内容の規約を定めること自体望ましいものではない場合もあるが、契約自由の原則を踏まえつつ、購入者の利益の保護を図るため、管理規約中に標記に該当する内容の条項が存在する場合は、その内容の説明義務を宅建業者に義務付けるものである。
(以下、省略)

まとめ

  • 区分所有法では、管理組合成立前のマンションについての分譲業者の管理責任が規定されていない。
  • 分譲業者であっても、未分譲の区分所有権を所有する以上、共用部分の管理費等を支払わねばならない。
  • 「未販売住戸があった場合、分譲会社は管理費や修繕積立金の支払い義務は免除される」といった旨を管理規約に盛り込むことで、分譲業者だけは、管理費や修繕積立金を支払わなくても済む。
  • 特定の者のみ減免する規約の項目に特記がなければ、売れ残り住戸の修繕積立金や管理費等は分譲業者が負担することになる。

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