不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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「マンション総合調査結果報告書」にみるスラム化の兆候

国土交通省が4月23日、「平成25年度マンション総合調査結果」を公表。
同調査は、「管理状況」や「居住者の管理に対する意識」等、マンション管理に係る基礎的な資料を得ることを目的として、約5年ごとに実施されている。


民間が実施している「首都圏新築マンション契約者動向調査(リクルート)」や「長谷工総研レポート」、「マンショントレンド調査(メジャーセブン)」といった供給サイドのバイアスがかかった報告書に対して、「マンション総合調査結果」はマンションの実態を把握するための客観的なデータが詰まった、大変貴重な報告書だ。
同報告書はデータ編も含めると344ページとかなりのボリュームになるので、忙しい皆さんに代わって、以下にひも解いてみた。


もくじ

「居住者間のマナーをめぐるトラブル」大規模マンションほど増加
半数が永住派
年とともにスラム化(賃貸化率・空室率)が進行
完成年次が古いほど修繕積立金が高くなる
東京圏の管理費は高い
マンションの規模が大きいほど滞納率が高い


「居住者間のマナーをめぐるトラブル」大規模マンションほど増加
「特にトラブルなし」というマンションは22.3%(08年度)から26.9%(13年度)に増加しているものの、依然として約4分の3のマンションが何らかのトラブルを抱えている。
なかでも、「居住者間のマナーをめぐるトラブル」が55.9%と圧倒的に多い。以下、「建物の不具合(31.0%)」「費用負担(32.0%)」と続く。
トラブルの発生状況


この「居住者間のマナーをめぐるトラブル」は、総戸数が多いほど、つまり大規模マンションになるほど増える傾向にある。
居住者間のマナー(総戸数規模別)


さらに、「居住者間のマナーをめぐるトラブル」の具体的な中身を見ていくと、「違法駐車・違法駐輪(40.1%)」が最も多く、次いで「生活音(34.3%)」「ペット飼育(22.7%)」となっている。
これら「違法駐車・違法駐輪」「生活音」「ペット飼育」は、常に上位を占めている。
「マンションの3大トラブル」といわれるゆえんだ。
居住者間のマナー(具体的内容)


半数が永住派
34年前(1980年度)には6割近く(57%)が「いずれは住み替えるつもりである」と答えていたマンション居住者の永住意識は、年と共に低下し、約15年前(1999年度)の調査では永住派(永住するつもりである)が住み替え派(いずれは住み替えるつもりである)を逆転している。
今回の調査では、永住派がついに半分を超えた(52.4%)。
永住意識の変化
このような永住派の割合が増えてきたのは、世帯主の年齢の変化からも説明できる。
34年前(1980年度)には60歳代以上の割合が1割にも満たなかった(8%)が、約15年前(1999年度)の調査では4分の1を超え(26%)、今回の調査では4割に迫っている(39%)。
今回の調査では、60歳代以上の世帯主が5割を占めるに至っている。
世帯主の年齢の変化


マンションの永住派にとって、気がかりであろう事象も今回の調査結果にみられる。
「賃貸戸数の割合」や「空室戸数の割合」の増加だ。
年とともにスラム化(賃貸化率・空室率)が進行
竣工後20年ほど経つと賃貸化率20%を超えるマンションが約1割、25年以上経過すると約4割を占めるようになる。
竣工時期別の賃貸化率(棟数ベース)


空室率5%超で見ると、竣工後20年で約2割を占めている。40年経つと約5割まで拡大していることが分かる。
竣工時期別の空室率(棟数ベース)


空き住戸の増加と共に、住民の高齢化や賃貸化が進み、大規模なマンションほど合意形成が困難で、管理組合が機能不全になる。
管理組合が機能不全になると、適切な維持管理ができなくなるので、経済的に余裕のある人は二束三文で住戸を売却して出ていく。そしてマンションのスラム化が進む。


完成年次が古いほど修繕積立金が高くなる
スラム化を回避するうえで重要なことのひとつは、シッカリした「長期修繕計画」を立てることだ。
「計画期間25年以上」の長期修繕計画に基づいて修繕積立金の額を設定しているマンションは、10年前(07年度)に約2割しかなかったのが、今回(13年度)は5割に迫る勢いで増加している。
「計画期間25年以上」の長期修繕計画に基づき修繕積立金の額を算定


では、修繕積立金はどのくらいの水準にあるのか?


駐車場使用料や専用使用料からの充当を除いた「現在の修繕積立金の額/月/m2当たり」のデータをグラフ化してみた。
「100円超〜150円以下」が21.6%(不明を除くと32.4%)と最も高く、次いで「50円超〜100円以下」が19.5%(不明を除くと29.2%)となっている。
現在の修繕積立金(月額・m2当たり)の分布


また、現在の修繕積立金の平均値を完成年次別にグラフ化してみた。
概ね、完成年次が古くなるほど高くなる傾向が確認できる。
現在の修繕積立金(完成年次別平均値)


東京圏の管理費は高い
管理費についても、駐車場使用料や専用使用料からの充当を除いて、月額・m2当たりのデータをグラフ化してみた。
「100円超〜150円以下」が19.8%(不明を除くと33.8%)と最も高く、次いで「50円超〜100円以下」が14.1%(不明を除くと24.1%)となっている。
管理費(月額・m2当たり)の分布


管理費のほうは、修繕積立金と違って、完成年次別のデータが掲載されていたので、代わりに都市圏別のグラフを作成してみた。
都市圏別の管理費(月額・m2当たり)の分布
京阪神圏と名古屋圏の管理費が「100円超〜150円以下」の割合が最も高いのに対して、東京圏はより月額の高い範囲にシフトしていることが分かる。


マンションの規模が大きいほど滞納率が高い
管理費・修繕積立金の滞納状況についても可視化しておこう。


完成年次が古いほど滞納住戸が「ある」マンションの割合が高いことは想像通りだ。
滞納住戸が「ある」マンションの割合(完成年次別)


驚くべきことにマンションの規模が大きくなるほど、滞納住戸が「ある」マンションの割合が高くなる傾向がある。
また、総戸数300超の大規模マンションは、「1年以上」の滞納住戸が「ある」マンションの割合が跳ね上がるのも大きな特徴だ。
滞納住戸が「ある」マンションの割合(総戸数規模別)


ちなみに、「3カ月以上」滞納が「ある」マンションのうち、滞納住戸の割合を可視化したのが次図。
「3カ月以上」滞納が「ある」マンションのうち、滞納住戸の割合
マンションの規模が大きくなるほど、滞納住戸の割合が高くなる傾向が見られる。
お互いの顔の見えない大規模なマンションほど、滞納者の居座りが可能ということなのだろうか・・・・・・。

2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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