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国交省がいうほどには増えていない?共同住宅の屋上緑化

国土交通省は8月9日、「平成27年 全国屋上・壁面緑化施工実績調査の結果報告」を公表。

共同住宅や商業施設において様々な種類の植物を用いた庭園型の屋上緑化が増加しているという。


もくじ

平成27年における全国の屋上・壁面緑化の施工実績について、最近の傾向をとらえるために全国の施工企業等にアンケート調査を行った結果、屋上緑化は約17.6ヘクタール増加し、特徴として、共同住宅や商業施設において利用の促進等を目的に高質で魅力ある空間とするため、様々な種類の植物を用いた庭園型の屋上緑化が増加していることなどが分かりました。

平成27年 全国屋上・壁面緑化施工実績調査の結果報告| 国土交通省

 

全16枚からならるPDF資料には、庭園型植栽の例として、富久クロス(55階建て、1,093戸)や深大寺レジデンス武蔵野テラス(14階建て、570戸)が写真付きで紹介されている。

立体駐車場上部を活用した屋上緑化の例
(立体駐車場上部を活用した屋上緑化の例)
「平成27年全国屋上・壁面緑化施工実績等調査結果|3枚目」より

 

そのほかに、全国の屋上緑化と壁面緑化のグラフやデータも多数掲載されているので、気になったデータを可視化してみた。

屋上緑化は「複合」「セダム」「芝生」の施工面積が多い

各種の建物(マンションに限らない)に施工された屋上緑化は、植栽タイプ別に見ると、「複合」「セダム主体」「芝生主体」の施工面積が多い。「低木主体」や「コケ主体」は少ないことが分かる(次図)。

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「複合」とは、庭園型の植栽で、どちらかといえばクォリティの高いマンションで用いられている。


セダム(メキシコマンネングサ)は、水分の蒸発量が少ないので屋上緑化による冷却効果が少ない(ヒートアイランド現象の緩和効果が少ない)にも拘わらず、維持管理にほとんど手間を要しないので、都内のように、一定の緑化面積の確保が義務づけられている(後述)ような場合に用いられている。

メキシコマンネングサ|Wikipedia
メキシコマンネングサ|Wikipedia

 

壁面緑化の大半は、「ツル性植物主体」である(次図)。

施工面積的には、壁面緑化(73万m2)は屋上緑化(413万m2)の2割に満たない。

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08年でマンションの屋上緑化ブームは終わっている

全国の屋上緑化・壁面緑化の年度別施工面積データが掲載されている(次図)。

この図からは、屋上緑化・壁面緑化とも、施工面積が順調に伸びているように見える。

08年でマンションの屋上緑化ブームは終わっている
「平成27年全国屋上・壁面緑化施工実績等調査結果|P2」より

 

「住宅・共同住宅」のデータも掲載されていたので、グラフに整理してみた(次図)。

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09年以降、住宅系建物では屋上緑化はあまり施工されていない。

08年9月15日に発生したリーマンション・ショック以降、首都圏の新築マンション着工戸数が激減し(次図)、マンションの屋上緑化ブームは終わったのであろう。壁面緑化のほうは、ほとんど普及していない。

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都内の分譲マンション着工戸数 昨年と今年の6月は異常に多かった」より

 

「屋上緑化」「壁面緑化」はマンション住人にとってメリットがあるのか

東京都は、ヒートアイランド現象の緩和、都市景観の向上など、屋上緑化を推進するため、2001年4月、改正自然保護条例を施行し、敷地面積1,000m2以上の民間建築物(公共建築物は250m2以上)を新改築する際、利用可能な屋上面積の2割以上の緑化を義務づけている(緑化計画書の届出|東京都環境局)。

たとえ敷地面積が1,000m2以上であっても、「利用可能な屋上面積」がゼロであることを理由に、コストアップとなる屋上緑化を設けないことも可能だが、販促のためにあえて屋上緑化を施工するデベロッパーも少なくない。

分譲後の維持管理費用は住人の負担であることを忘れてはならない。しかも、住人は、植栽が屋上にあるがゆえに、常時緑を楽しめるわけではない。
施工された植栽がセダムだとすれば、上述のように水分の蒸発量が少ないセダムにはヒートアイランド緩和効果は期待できない。

 

壁面緑化は義務づけられていないが、広告のCGが映えるので採用されているようなところがあるのでは(マンションの壁面緑化は誰のため? )。

 

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