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市町村バラバラ!? 京都府民泊条例の骨子案 規制と普及

京都府は12月28日、民泊条例の骨子案を明らかにした。

生活環境の悪化を防ぐため、住居専用地域を対象に市町村ごとに営業制限期間が定められている。


もくじ

民泊条例、市町村ごとに規制と普及使い分け(京都新聞)

京都府は12月28日、民泊条例の骨子案を明らかにした。

生活環境の悪化を防ぐため、住居専用地域を対象に市町村ごとに営業制限期間が定められている。

民泊条例、規制と普及使い分け 京都府が骨子案

京都府は28日、来年2月議会での制定を目指す民泊条例の骨子案を明らかにした。生活環境の悪化を防ぐため、住居専用地域を対象に市町村ごとに営業制限期間を定める。京都市周辺や府南部の10市町で9カ月以上禁止して規制色を強める一方、府北部を中心とする12市町村には制限期間を設けず、普及を図る。(以下略)

(京都新聞 12月28日)

民泊条例の骨子案

京都府のホームページに京都府住宅宿泊事業の適切な実施の確保等に関する条例(仮称)の骨子案のパブコメが掲載されているので中身を確認してみよう。

条例制定の目的:生活環境の悪化防止、観光客の利便性向上

条例制定の目的として、生活環境の悪化防止だけでなく、観光旅客の宿泊に関する利便性を高めることも掲げられている。

条例制定の目的

「住宅宿泊事業法」の趣旨を踏まえ、住宅宿泊事業の適切な実施の確保に必要な事項、住宅宿泊事業の実施の促進に関する施策その他必要な事項を定めることにより、住宅宿泊事業に起因する事象による生活環境の悪化を防止するとともに、観光旅客の宿泊に関する利便性を高めることで、その来訪及び滞在を促進し、もって府民生活の安定向上及び府民経済の健全な発展に寄与することを目的に条例を制定することとします。

民泊禁止期間:市町村バラバラ

住居専用地域については、市町村ごとに民泊禁止期間が設定されている(次表)。

市町村長の意見を踏まえた結果だからなのか、民泊禁止期間は微妙に違っている。3月から11月までを民泊禁止している自治体が多いが、たとえば八幡市では1・2月も民泊禁止期間に加える一方で、6・7月は民泊可となっている。

また、民泊の普及を図るために、12市町村では民泊禁止期間が設定されていない。その多くは府北部なのだが、同じ北部に位置する宮津市では7・8月は民泊禁止となっている。

住居専用地域における民泊禁止期間(案)
学校等の敷地から100m以内の地域では、どの市町村でも学校等の休業日にしか民泊の営業が認められていない

優良な民泊施設を認証

他の自治体にみられない条項として、民泊の「推奨基準」がある。

「損害賠償保険への加入」や「 外国人、障害者等全ての宿泊者に配慮した運営」などを満たすことで、優良な「住宅宿泊事業者の届出住宅」として認証される。

安心・安全な住宅宿泊事業の活用の促進【推奨基準】

推奨する基準を設け、優良な「住宅宿泊事業者の届出住宅」として認証して、その増加を図ることにより、地域住民や宿泊者の安心・安全の確保を図ることとします。

  • (1)知事は、住宅宿泊事業の活用を促進し、優良な住宅宿泊事業者の届出住宅を認証します。

  • (2)優良な住宅宿泊事業者の届出住宅とは、3の義務基準及び4の努力基準に加え、次の事項について一定の基準を満たすものとし、その基準は、知事が別に定めることとします。
    損害賠償保険への加入
    外国人、障害者等全ての宿泊者に配慮した運営
    ウ 地域との連携
    エ 委託義務のない家主居住型住宅宿泊事業における住宅宿泊管理業者等との連携

違法民泊は京都市内に集中している

府の民泊条例は、独自に条例化を進めている京都市を除き、各市町村に適用される。

では、実際に京都市を除く各市町村には現在、どの程度民泊物件があるのか?

京都府内でAirbnbに登録されている物件は、6,043件(17年12月31日日現在)。そのうち京都市内の物件は5,850件、97%を占めている(AirLABOデータによる)。

 

府内の各市町村のAirbnb登録物件数の内訳を可視化したのが次図。

京都市内を除くと、Airbnb登録物件はほとんどないのである。

だから、府北部を中心とする12市町村には制限期間を設けず、民泊の普及を図るという方向性は間違っていないのだろう(旅館・ホテルとの共存をどうするのかという問題はあるが)。

Airbnb登録件数(京都府)
(AirLABOデータを元に作成)

雑感

京都府が昨年末ギリギリ28日に公表した民泊条例の骨子案がユニークだったので、今回あえて記事化しておいた。

そもそも京都府内の民泊物件は、京都市内に集中している。宇治市など、一部の自治体を除けは、民泊物件数は極めて少ない状況にある。京都市では既に、市長の強いリーダーシップのもと、様々な違法民泊対策が実施され、民泊の条例化も進められている。そんななか京都府は、市町村ごとにバラバラに民泊禁止期間を設定している点でユニークなのである。

市町村長の意見を踏まえた結果だとしても、府の条例で市町村の民泊禁止期間を固定化してもいいものだろうか

地域の姿は将来にわたって変わっていくだろうに、市町村の都合でその都度、府条例を改正するのは手続きが面倒ではないのか? 手続きが面倒だと、府条例の改正が行われず、民泊禁止期間が固定化されたままで、市町村の実態と乖離していくことはないのか……。

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2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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