政府が、マンションなどの空き部屋に旅行客を泊める「民泊」を北九州市でも認める方針を決めたことを伝える朝日の記事。
- 北九州市でも「民泊」可能に(朝日の記事)
- 北九州の民泊条例案の中身
- 北九州市内のAirbnb登録件数はたったの25件
- パブコメに寄せられた意見はたったの3名
- 大田区とは真逆の民泊可能エリア
- 北九州市の特区民泊は地方創生の起爆剤となるか?
- あわせて読みたい
北九州市でも「民泊」可能に(朝日の記事)
政府は民泊新法の制定の見通しが立っていないなかで、特区民泊を先行モデルにしたいと考えているらしい。
北九州市でも「民泊」可能に 政府方針、東京・大阪の一部に続き
政府は、マンションなどの空き部屋に旅行客を泊める「民泊」を北九州市でも認める方針を決めた。東京都大田区や大阪府内の一部に続く例となる。ホテルや旅館が営業できない郊外の住宅地域で民泊事業を認め、国内外の観光客の受けいれ拡大や地域活性化を目指す。
(中略)
特区の民泊事業が認められているのは東京都大田区や大阪府内の34市町村。政府は各地で民泊ができるようになる新法の制定も検討しているが、見通しは立っておらず、特区民泊を先行モデルとしたい考えだ。(朝日新聞 9月30日)
北九州の民泊条例案の中身
北九州市が目指す特区民泊は、「外国人をはじめとする観光客等の多様な滞在ニーズに応える」とされている。
条例制定の背景・目的
(前略)本市が目指す特区民泊は、外国人をはじめとする観光客等の多様な滞在ニーズに応えるため、本市ならではの魅力を堪能してもらうとともに、観光・ 地域振興を図るよう「自然体験」と「地域住民との交流」をテーマに実施し、にぎわいのあるまちづくりを推進するものです。
(「(仮称)北九州市国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業に関する条例案について」より)
同市が目指す方向は、山本幸三内閣府特命担当大臣が9月16日に「国家戦略特区シンポジウム」でプレゼンした「内外の観光客の滞在ニーズへの対応」と一致している(次図)。
「国家戦略特区シンポ 山本特命担当大臣が棒読みする特区民泊の成果」より
条例案の概要
(1)事業の用に供する施設を使用させる期間
- 期間は、外国人等の滞在状況を踏まえ、施行令で定められる基準 の下限の日数(現行では7日)以上とします。
(2)立入調査等の権限
- 市長は、市の職員が、事業の認定要件が守られていることやその 実施状況を確認できるよう、必要な限度において、事業者の事務所 または外国人滞在施設に立ち入り、関係者に質問することができる ようにします。
(3)近隣住民への事前説明
- 事業を行おうとする者は、近隣住民の生活環境に配慮する観点か ら、事業計画の内容を、近隣住民に対して事前に説明する規定を設 けます。
(4)手数料
- 事業の認定または変更のための事務の手続きや施設の確認に係る 手数料を定めます。
(「(仮称)北九州市国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業に関する条例案について」より)
同市の条例案の概要(≒骨格)は、大阪府や大阪市、大田区とほぼ同様。金太郎あめ状態である。
したがって、ここでも罰則規定を伴わない実効性に疑問符が付くのである(大阪市は民泊条例を遵守させる気がない?)。
北九州市の民泊条例施行で、市内のAirbnb登録件数はどう変化していくのか?
まずは、実態を確認しておこう。
北九州市内のAirbnb登録件数はたったの25件
福岡県は、Airbnb登録件数の都道府県別ランキング第5位(次表)。
福岡県内のAirbnbの登録件数は、8カ月足らずで、倍増する勢いで増加している(次図)。
(AirbDatabankデータをもとに筆者作成)
福岡県内のAirbnb登録物件の分布をみると、福岡市内に集中していることが分かる(次図)。
(AirLABO地図に追記)
市町村ごとにみると、福岡市が圧倒的に多く(1,345件)、2位の北九州市でもたったの25件しかない(次図)。
(AirLABOデータをもとに筆者作成)
パブコメに寄せられた意見はたったの3名
「(仮称)北九州市国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業に関する条例案」は約1か月間(8月25日~9月23日)パブコメにかけられていた(次図)。
※現在、同パブコメ募集のページも添付PDFもホームページからは削除されていて閲覧できない。
パブコメの結果等は9月30日、北九州市議会(保健病院委員会)のページにアップされた。
意見の数はたったの3名(電子メール2人、郵送1人)による16件。
大田区とは真逆の民泊可能エリア
パブコメ結果等の発表文書のなかに、さらっと書かれた文章に注目!
対象地域は、既存のホテル・旅館との競合を避け、「都市と田舎が近い」本市の特色を活かした賑わい作りを創出するため、ホテル・旅館を建設できない『市街化調整区域、第1種・第2種低層住居専用地域』に限定する。
北九州市と大田区では、民泊可能エリアの考え方が真逆なのだ。
北九州市は既存のホテル・旅館との競合を避けるために、ホテル・旅館を建設できないエリアに限定しているのに対して、大田区は既存の都市環境、住環境保全の観点から、ホテル・旅館の建設が可能なエリアに限定しているのである。
北九州市はホテル・旅館との競合回避を優先しているのに対して、大田区は住環境悪化の回避を優先しているようにみえる。
北九州市の特区民泊は地方創生の起爆剤となるか?
太田区とは真逆の民泊可能エリアを設定した北九州市。
民泊条例は表面的には類似しているが、民泊の捉え方が大きく異なっている。
Airbnbの登録件数がたったの25件しかない地方都市だからできることがありそうだ。
「自然体験」と「地域住民との交流」をテーマに、にぎわいのあるまちづくりを推進したい北九州市にとって、特区民泊は地方創生の起爆剤となり得るのか?
今後、投資型(家主不在型)を抑制し、ホームステイ型(家主滞在型)を増やすしていくための具体策の立案・実行が期待される。
あわせて読みたい
(本日、マンション広告なし)