不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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30代は永住できない大規模超高層マンション


官民が連携・協働して環境に配慮した街づくりの実現を目指す「グリーン・エコアイランド構想」の一画に建つ、大規模超高層マンション。

【予告広告】銀座1丁目駅直通6分、駅徒歩12分。総戸数1,110戸、44階建。販売戸数/未定、1LDK(53.25m2)〜4LDK(130.92m2)。予定販売価格3,500万円台〜13,900万円台、予定最多価格帯5,500万円台。平成26年8月下旬竣工(←ホームページでは「平成27年3月下旬竣工」となっているので、チラシの期日は誤記?)。

  • ※2012年11月15日(木)、2013年1月14日(月)・4月20日(土)の物件と同じ。

B4判8ページからなる本日のチラシ。
湾岸の風景をバックに、上下を涼しげな白色の麻製品で決めた、江口洋介がトップページを飾っている。
2頁から5頁にかけて、来場者2,045組のアンケート結果による「物件の魅力」ベスト5が喧伝されている。

  • 第1位:水と緑と空の東京
  • 第2位:東京駅5km圏&豊洲
  • 第3位:壮大な眺望
  • 第4位:免震&制震
  • 第5位:充実の共用施設



この物件のセールスポイントは、チラシやホームページにいくらでも記載されているし、マンションギャラリーに行けば、営業マンがいくらでも教えてくれるだろう。
では、ネガティブ情報としてはどのようなことが考えられるのか――。

近くにスーパーがない!
ひとつ目は、この立地固有のことなのだが、近くにスーパーがないので、日常の買い物に不便なことだ。
自転車で遠くまで買い出しにいくにしても、雨の日はどうするのか。
週末に、車でまとめ買いするのか。それにしては、駐車場台数が656台、総戸数1,110戸の6割しかない。残り4割の車を持たない人は、どうすればいいのか。
ネット宅配に依存するのか。
マンション内に設置される「住民専用のミニショップ」で我慢するのか。


大震災時の機能不全リスク
二つ目は、大震災時の機能不全リスク。
このマンションは免震なので、建物構造的には特に問題ないとしても、エレベーターが使えなくなった場合には階段を上り下りしなければならない。
東京都防災会議地震部会が作成した「首都直下地震による東京の被害想定(最終報告)平成18年3月]」首都直下地震等による東京の被害想定(平成24年4月18日公表)」によれば、東京湾北部地震M6.9が発生した場合、エレベーター約14.5万台中、閉じ込めが発生するエレベーターは約7,500台、M7.3では約9,200台と想定されている。


3.11の教訓を踏まえ、エレベーターに自動復旧機能が備わっていたとしても、電力が復旧するまでの間、非常用電源で対応できるのか?
東京湾北部地震M7.3の場合、電力の停電率は1日後で13.2%、4日後で5.3%。電力が95%回復するまで6日間かかると想定されている。


スラム化リスク
3つ目は、スラム化リスク。
江口洋介(1967年12月31日生まれ、45歳)と同年齢の人が、このマンションを購入した場合は特に問題はない。
平成23年簡易生命表(厚生労働省)によれば、現在45歳の男性の平均余命は35.98年(女性は42.05年)。
つまり、マンションの建て替えが必要になり始める40年よりも4年ほど前、すなわち81歳で寿命が尽きるからだ(女性は、築42年経過時点、87歳で寿命が尽きるのでギリギリセーフか)。



では、30代の人、たとえば35歳の人がこのマンションを購入した場合は、どうか。
現在35歳の男性の平均余命は45.47年(女性は51.69年)。
男性は築45年経過時点、80歳で寿命が尽きるので、建て替え問題をなんとかやり過ごすことができたとしても、女性は築51年、86歳まで生きるので、建て替え問題に巻き込まれることになる。


30代の購入者がこの問題を回避するためには、経済力のあるうちに転売しなければならない。
つまり、このマンションは、30代にとっては永住することはできないのだ。
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超大規模マンションの建て替え問題について、もう少し掘り下げてみよう。
賃貸ならば、少数のオーナーの判断で建て替えや大規模修繕を容易に実行できるのだが、分譲マンションとなると、区分所有者がいるため、決議までにかなりの時間と労力を要する。
ましてやこのマンションのように1,000戸を超える規模となると、建て替えを決議することは不可能に近い。


そもそも上層階と下層階では経済格差のある住民が、専有面積あたり同じ管理費・修繕積立金を支払っていることに無理がある。
さらにいえば、上層階の住民のほうが、エレベーターや揚水のための電気代を多く使っているし、大規模修繕に多くの費用を要している(たとえば、外壁の修繕は高層マンションであるがゆえに、ゴンドラを使わざるを得ない)にも係らず、専有面積あたり同じ管理費・修繕積立金を負担しているという不公平感については、あまり認識されていない。


建て替え問題を回避するために30代が次々と転売していくと、転売されるたびに価格は下落していくであろうから、経済力の低い住民が増加することなる。
ところが、管理費や修繕積立金は以前と変わらない(むしろ見直しのたびに増える)ので、経済力の低い住民への負担が重くのしかかる。


経済格差が拡大すればするほど、建て替えもさることながら、大規模修繕の意思決定が出来ず、超高層マンションは荒廃し、スラム化が進む。


超高層マンションが将来スラム化しやすいという指摘は、筆者だけが主張しているワケではない。
たとえば、建築系の隔週専門雑誌「日経アーキテクチュア」2007年8月27日号に「超高層マンションの研究」と題した特集記事の中でも、福井秀夫 政策研究大学院大学教授(元国交省)らにより指摘されている。

(本日、マンション広告2枚)

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