【予告広告】神田駅徒歩8分。総戸数120戸、23階建。販売戸数/未定、1LDK(31.72m2)〜3LDK(83.67m2)。販売価格/未定。平成25年4月下旬竣工(本チラシ掲載日の1年3カ月後)。
「9駅10路線 徒歩10分圏内利用可能」の、都心の真ん中(千代田区)に建つ超高層マンション。
新聞半紙大のチラシ裏面の「物件概要」に目を凝らすと、あまり見かけない表記がある。
- ※本マンションは居住以外の用途に使用することはできません。
(筆者:投資目的の購入はダメということだ)
- ※入居に際しては、千代田区への住居登録及び町会等地域活動への参加をお願いしております。
(筆者:「お願い」ということは、義務はないということだ)
千代田区の定住人口の回復策として、マンションを建設するデベロッパーに対して、条例や要綱などで様々な規制を設けていることであろうことは容易に想像がつく。
千代田区のホームページで調べてみると、平成4年7月1日に制定(平成18 年4月1日に改正)された「千代田区住宅付置制度要綱」という文書を発見!
以下に要綱の内容をひも解いてみた。
第7条(住民登録推進の要件)
区長は、共同住宅の居住者の定住を推進するため、付置住宅若しくは隔地住宅で総戸数が10 戸以上のもの又は付置住宅若しくは隔地住宅を含む共同住宅で総戸数が10 戸以上のもの(以下これらを「付置住宅マンション」という。)について、住民基本台帳法(昭和42 年法律第81 号)に基づき住民としての記録を受けること(以下「住民登録」という。)を入居要件とするよう求めることができる。
- (1) (省略)
- (2) 開発事業者は、付置住宅マンションの賃貸又は分譲を目的に募集広告等をするときは、別に定める方法により住民登録の要件を枠囲い等でわかりやすく表示し、入居者の募集を行うものとする。
- (3) 開発事業者は、付置住宅マンションに賃貸又は分譲の申込みをしようとする者に対し、別に定める方法により住民登録の意思を確認しなければならない。
「付置住宅マンション(いかにも役所的な、センスのない呼称だ)」については、「住民登録の要件を枠囲い等でわかりやすく表示」しなければならないので、本日のチラシにあのような記述があったのだ。
ただ、「分譲の申込みをしようとする者に対し、住民登録の意思を確認しなければならない」と規定されてはいるものの、「意思を確認」すればいいだけで、登録義務を課しているわけではない。
なので、チラシのように「お願い」どまりの表現になっていたのだ。
第12条 (付置住宅等の定住管理)
開発事業者は、付置住宅及び隔地住宅(以下「付置住宅等」という。)について、住宅以外の用途に変更し、又は使用されないよう、次の各号に定めるところにより維持管理(以下「定住管理」という。)をしなければならない。
- (1) 付置住宅等の入居者が千代田区に継続して住民登録を行うことを条件に、入居者を選定すること。
- (2) 付置住宅等の入居者に対し、町会に加入するように指導すること。
(以下、省略)
この第12条に「住宅以外の用途に変更不可」や「町会加入への指導」が規定されていたのだ。
と、全部で17条からなる要綱を読んでいると、第14条に興味深い条文があることに気が付いた。
第14条 (適切な家賃、分譲価格の設定)
- 開発事業者は、付置住宅の供給にあたっては、定住の推進に協力するため、賃貸住宅の家賃又は分譲住宅の価格について、その低廉化に配慮し、適切な価格の設定に努めるものとする。
開発事業者(デベロッパー)は、分譲価格の低廉化に配慮し、適切な価格となるよう求められているのだ。
ただ、これも努力義務に過ぎないので、絵餅条項にとどまっている。