東日本大震災で脚光を浴びる免震マンション。
「これからは免震マンションですよ」という営業マンのセースルトーク。
マンションの供給サイドから、免震の良い面は喧伝されても、ネガティブ情報はなかなか漏れてこない。
建築の専門雑誌「日経アーキテクチャ」7月10日号の特集記事「免震の真価」の中から、いくつかネガティブ情報を拾ってみよう。
宮城県大崎市に建つビジネスホテル、12階建てのエクセルイン古川。
建物に被害がなかったものの、免震装置を構成する鉛ダンパーに15mm程度の亀裂が生じたという。
川村建設は鉛ダンパー8基すべての交換を決めた。
「交換する厳密な基準はないものの、再び大きな地震が繰り返し発生するリスクを考えたからだ」(中山所長)
また、石巻市にある石巻赤十字病院も免震装置に変状が現れた建物のひとつ。
補修や交換の費用は建物所有者や管理者が負う。
石巻赤十字病院の場合、合計1000万円ほど掛かるという。
「『免震だから壊れないと聞いていたのに』とマンションの居住者から苦情を言われた」。
ある建設会社の幹部は打ち明ける。
今後、消費者に対する事前の説明や破損防止の対策が不可欠だ。
今回の大震災で明らかになった「免震の5つの課題」として、次の項目が掲げられている。
- 課題1:技術者が応急点検にすぐに駆け付けられない
- 課題2:免震建物の約半数が定期点検を実施していない
- 課題3:免震ピットやドライエリアが狭くて交換作業が大変
- 課題4:メーカー撤退や残留変形によるダンパー形状の変更で同じ装置の調達に時間が掛かる
- 課題5:設計者が建物所有者や管理者に交換が必要なことを事前に説明していない。交換の基準も曖昧
免震建物は通常、応急点検のほか5年や10年おきに実施する定期点検を条件に性能評価や建築確認を受けている。
ところが、費用負担などを嫌って「半数の免震建物が定期点検していない」(日本免震構造協会の可児長英専務理事)。
津波で免震ピットが浸水した建物もあるなか、点検による経過観察が欠かせない。
ダンパー交換の難しさも浮き彫りとなった。
交換できるように設計しているものの、「交換のしやすさ」は設計者によってまちまち。
ドライエリアが狭く、いざとなったら免震ピットの擁壁や1階の床スラブを壊して搬出入する計画の建物もある。
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