不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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マンション政策部会、事務局と委員らとの攻防(3)

昨日の続き
国土交通省の審議会のひとつである「マンション政策部会」が3月6日、「分譲マンションストック500万戸時代に対応したマンション政策のあり方について(答申)」を公表。
超高層マンションについて、ちょっとしか触れられていない理由を知りたくて、過去に開催された全5回の部会議事録を読み解く。
本日は、第5回部会(2008/12/25)の議事録から。

■事務局の説明
(前略)
また、近年急増してございます超高層マンションにつきましては、今後本格的に大規模修繕などの時期を迎えることになりますが、その実態や課題が必ずしも明らかではないという面もございますので、引き続き実態把握と課題の抽出を行いまして、その上で、必要に応じた制度の運用や見直しをしていく必要があるのではないかということを考えてございます。
以上が4.今後のマンション政策としての具体的施策でございます。

今回も業界寄りの「参考人」が事務局の説明内容に噛みついてくる。

■参考人の意見
(前略)
この間もご指摘させていただいて、大分トーンは変わっているんですけれども、超高層マンションの修繕費が、他のマンションよりも高額になる傾向があるというのは、まだよく実態がわからない
今日でなくても結構です。別のときに、もしそういう実態があるなら教えていただきたい。
我々のニュアンスでは、そういうふうな感じでは捉えていないという感じがございます。
(中略)
かえって小規模のマンションのほうが修繕費が高くなる可能性もありますし、逆に合意形成についても、お互いの意見がなかなか難しいときは、少ないがゆえに、逆に合意形成が余計しにくいケースというのもありますものですから、超高層マンション自体が合意形成しにくくなるというだけではないような感じがいたしますので、その辺の単体のマンションについての何らかの形のものが必要かなという感じがいたします。
(後略)

今回も事務局は次のように収めるのが精いっぱいだったのであろう。

■事務局の説明
(前略)
事務局としては、今時点で確たるデータを持っていないというのが現状でございまして、今日いろいろなご指摘がありましたけれども、事務局としては、高い低いという、確たることは言えませんで、今後の実態把握とか、そういったところの中で、超高層については関係者の皆様ともどもいろいろと注視していきたいというトーンにしたいと思っております
その他のいろいろ細かいご指摘をいただいておりますが、基本的にはこの場では細かく言えませんが、趣旨を踏まえまして修正をしてみたいと思っております。
以上でございます。

かくして「分譲マンションストック500万戸時代に対応したマンション政策のあり方について(答申)」において、超高層マンションについては「引き続き、その実態把握及び課題の抽出を行うべき」という骨抜き文章が残ったのだった。


ちなみに、本件を答申したマンション政策部会の部会長は越澤明 北海道大学大学院教授(専門は都市計画)。
委員は次の5名。

  • 浅見泰司東京大学空間情報科学研究センター教授(都市住宅学、都市計画、空間情報解析)
  • 井出多加子成蹊大学教授(不動産経済学、計量経済学)
  • 岩沙弘道三井不動産(株)代表取締役社長
  • 櫻井敬子学習院大学教授(行政法)
  • 西谷剛國學院大學法科大学院教授(元 国土庁大都市圏整備局長)

この5人の委員の顔ぶれをみれば、事務局との攻防を繰り広げていた業界寄りの某委員が誰だったかは予想がつくだろう。

2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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