不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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総戸数に管理室や店舗を含む水増し作戦は、許されるのか?


土曜日、マンション広告2枚。

大手町駅33分(途中乗り換え)、駅徒歩9分。総戸数23戸(管理室1戸店舗1戸含む)、8階建。販売戸数未定、2LDK(55.56m2)〜3LDK(71.29m2)。予定販売価格2,780万円〜3,770万円。平成18年7月下旬竣工(本チラシ掲載日の5カ月後)。

幹線道路の交差点に建つ、ワンフロア3戸・8階建ての小規模マンション。
「物件概要」に目を凝らすと、「総戸数23戸(管理室1戸店舗1戸含む)」と記載されている。
総戸数23戸とあるが、実際に住戸としての分譲可能戸数は、管理室1戸と店舗1戸を除いた21戸だ。
100戸を超えるような大規模マンションであれば、1戸や2戸の違いはあまり気にならないのだが―。
たったの21戸の分譲可能住戸数に、2戸(管理室1戸と店舗1戸)も水増しされているのを知ることにつけ、上げ底の土産物をつかまされたような気分になるのは、筆者だけだろうか。
実際のところ、この辺りの「総戸数」の定義はどうなっているのか?
業界の自主的ルールである「不動産の表示に関する公正競争規約施行規則(平成18年1月4日施行)」をひもといてみた。
第1条(用語の定義)第2項(4)号には、次のように記されている。

  • 総戸数
    • 新築分譲住宅においては、開発区域内に建築される住宅(建築予定の住宅を含む。)の戸数をいい、新築分譲マンションにおいては、現に取引しようとするすべての建物の一棟ごとの住戸の戸数をいう。

この条文によれば、新築分譲マンションの「総戸数」とは、「現に取引しようとするすべての建物の一棟ごとの住戸の戸数をいう」とのことだが、文法的にとても理解しにくい表現になっている!
「現に取引しようとする」のが「建物」を指しているのか、「住戸」を指しているのか、とても曖昧だ。
「現に取引しようとする」のが「建物」を指しているとすれば、本物件の「住戸」の戸数は、管理室1戸を含んだ22戸となる(店舗は、住戸とはみなさない)。
一方、「現に取引しようとする」のが「住戸」を指しているとなると、物件の本物件の「住戸」の戸数は、管理室1戸と店舗1戸を除いた21戸ということになる。
いずれにしても、「住戸」≠「店舗」という前提に立つと、本物件の総戸数は、広告で示された23戸とはならない。
では、なぜこのように総戸数の扱いに違いがでてくるのか?
冒頭で示した「不動産の表示に関する公正競争規約」は、今年の1月4日に施行されたばかりの新しいルールだ。
平成18年1月4日施行以前の旧規約では、総戸数の定義は、第15条(一般事項の表示基準)第(17)号に次のように記されていた。

  • 分譲共同住宅の総戸数は、現に取引しようとする1棟の建物ごとにそのすべての区分建物の戸数を表示すること。ただし、店舗、事務所等を含む場合はその旨及びその戸数を表示し、店舗等の戸数が確定していないときはその旨を明らかにすること。

つまり、新規約では、「店舗、事務所等を含む場合はその旨及びその戸数を表示し、店舗等の戸数が確定していないときはその旨を明らかにすること」という、旧規約にあったただし書きが削除されていることがわかる。
新規約の策定途上で公表された「新旧対照表」の備考欄には、次のようなメモ書きが残されている。

  • 店舗、事務所等を含む戸数を明示させるべきとの意見多し。ただし書きを復活するか?

結局、新規約が策定される過程で、旧規約にあったただし書きは、多数の復活意見があったにもかかわらず削除されてしまったようだ。
旧規約では許されていた総戸数の水増し作戦が、新規約では許されなくなったと、筆者は解釈したのだが―。
この辺りの解明については、まだ「社団法人首都圏不動産公正取引協議会」のホームページには掲載されていない。

2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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