不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

首都圏を中心に、マンション選びのためのお役立ち情報を提供しています


耐震強度偽造事件についての各業界の反応


本日木曜日は、マンション広告なし。

    • -

本件を偽造(=にせ物をつくること)と言ったり、偽装(=他人の目をごまかすための装いや行動)と言ったり、マスコミの表現上の扱いは、さまざま。
「偽造」「偽装」のどちらで表現するかは、あまり本質的なことではないだろう。
でも、「問題」「事件」のどちらで表現するのかとなると、それぞれの立場が絡むため、その表現の扱いについては、慎重にならざるを得ないだろう。


日本建築学会は、次のように会長声明の中で、タイトルは「偽装問題」と中立的な表現をする一方で、文中では、「重大な犯罪行為」「この事件の背景・・・」と言い切っている。

■(社)日本建築学会(会長 村上 周三)/12月2日
会長声明「耐震強度偽装問題に関して」
今回発生した建築士による構造計算書偽造に関わる一連の不祥事は、安全な建物を提供すべき建築関係者の責務に違反する重大な犯罪行為といえる。
日本建築学会は、この問題を建築分野全体の社会的信用を失墜させかねない深刻な事件と受け止め、学術団体として再発防止のための活動を緊急に進めることが必要であると考える。
この事件の背景には、倫理的課題だけでなく、建築産業の変容などの経済的側面、建築確認制度、建築士制度、発注・受注における元請け・下請などの法制度や建築生産全般に関わる数多くの問題が存在することを見逃してはならない。
従って我々会員は、この事件を偶発的なものとして受け止めるのではなく、建築生産全般に関わる構造的問題として位置づけ、その対応策を検討し、学術団体としての社会的責任を果たすべきである。(後略)



次の日本建築士会連合会も「偽装問題」と中立的な表現をする一方で、「重大な事件」と言い切っている。
「重大な事件」であることの理由に、社会に大きな不安を与えることに加え、「建築界、特に建築士に対する社会的信頼を損ねる」ことを掲げているのは、自分たち中心に過ぎないか・・・・・・。

■(社)日本建築士会連合会/12月16日
耐震偽装問題から派生する「建築士法改正」に対する本会の考え方
今回の建築士事務所による構造計算の偽装問題は、社会に大きな不安を与えると共に、建築界、特に建築士に対する社会的信頼を損ねる重大な事件と考えている。直接の因果関
係は司直の調査に譲るとして、国は「建築確認検査制度の見直し」と「建築士法の改正」
を踏まえた協議を開始するとしている。
新聞やテレビで様々なことが混乱して報道されているが、本会は、この事態に際し、冷
静な判断と実効性のある提言及び活動を推進することが肝要と考える。今回の問題に直接
関連する事柄とその背景となる課題、法で対応すべきものと行政の制度運用の改善や民間
の活動で行った方が実効性の高いものを整理して論じる必要がある。(後略)
http://www.kenchikushikai.or.jp/



「偽装問題」に姉歯建築設計事務所の元請けとして会員事務所が係っていたことから、日本建築士事務所協会連合会会長の次のコメントは、とても暗い。

■(社)日本建築士事務所協会連合会(会長 小川 圭一)/11月29日
姉歯建築設計事務所による構造計算書偽造問題について
(前略)姉歯建築設計事務所は当連合会の建築士事務所協会の会員事務所ではありませんが、本来建築物の安全性を確保し、国民の生命、財産を守るべき立場の建築士が、建築設計の構造計算書を偽造し、居住者等に多大な被害を生じさせ、また全国の国民を不安に陥れたことは、全く許されるべきことではなく、あってはならないことであります。
今回の問題については、今後国土交通省や司法等の調査結果を待たねばなりませんが、これまで新聞報道等の範囲では、構造計算書を偽造した建築士に直接の責任があることは明白であります。しかしながら、建築設計を担当する元請の建築士事務所(建築設計事務所)は、構造設計についても元請として統括・調整する立場にあり、その役割と責任は大きいものと考えています。元請の建築士事務所については遺憾ながら当連合会の建築士事務所協会の会員事務所も含まれていることが判明しました。会員事務所が関わったことについてはまことに残念であり、当該建築士事務所が所属する建築士事務所協会と致しましても行政処分の動向を見つつ、必要な調査・処分を行ってまいります。(後略)
http://www.njr.or.jp/m01/051127/index.html



これまで日陰者扱いであった、建築構造技術者にとって、本事件は、地位向上の千載一遇のチャンス。
次の日本建築構造技術者協会会長のコメントも、かなり力が入っている。

■(社)日本建築構造技術者協会(会長 大越 俊男)/12月13日
構造設計者の役割明確に
(前略)では、どうすれば防げるか。これは、専門家によるチェックしかない。
英国では公的審査がなく、第三者によるチェックをしている。米国では設計に不備があれば、消費者や施主に構造設計者自身が訴えられる社会だ。専門的なことは専門家でしか見ることができないとして、専門家同士が複数チェックする「ピアチェック」を義務づけている州もある。
社団法人の日本建築構造技術者協会は、構造設計者の位置づけを法的に明確にして責任を持たせると同時に、ピアチェックを基本に据えるべきだと考えている。審査機関が申請者にピアチェックを要求するか、発注者と設計者に保険を義務づけることで、保険会社が構造設計者および構造設計について、別の専門家を通して審査する仕組みが確立できるはずだ。相互監視は、技術者の倫理観を高めることにもつながるはずである。
http://www.jsca.or.jp/vol2/23news_release/2005False/jsca20051210asahi.html



ゼネコンの団体である建築業協会のホームページには、次のような国土交通省の案内が掲載されているだけ。本件について、なんらコメントがないのは、かなり違和感がある。

■(社)建築業協会
2005/12 国土交通省「マンションの耐震性についてのQ&A」について
2005/12 国土交通省「マンションの耐震性等に関する相談窓口」
http://www.bcs.or.jp/



耐震強度偽造マンションの瑕疵担保責任を負うべきマンション・デベロッパーの多数が加入している不動産協会のホームページに、本件についての記載が全くないのは、とても不自然。
嵐が過ぎ去るのをじっと待っているのだろうか・・・・・・。

■(社)不動産協会
http://www.fdk.or.jp/

2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
Copyright(C)マンション・チラシの定点観測. All rights reserved.