民泊新法案(住宅宿泊事業法案)の閣議決定で、影が薄くなった「特区民泊」制度を活用して、「グリーン・ツーリズム」をアピールしようという新潟市の目論見。
新潟市、「特区民泊」今夏にも始動(産経記事)
「特区民泊」制度を活かして「グリーン・ツーリズム」をアピールしようという新潟市。
中心市街地の宿泊施設との競合を避け、市内の田園地帯で展開するという。
新潟市、「特区民泊」今夏にも始動 「田園型」PRで存在感発揮
国家戦略特区の規制緩和で住宅の空き部屋などに有料で旅行客を泊められる「特区民泊」が、順調にいけば新潟市でも今夏にスタートする。
同市は20日に内閣府が東京で開く国家戦略特別区域会議に事業計画案を示すとともに、関連する条例案を6月の市議会に諮り今夏の施行を目指す。
市は、農作業の体験など自然や文化に触れる「グリーン・ツーリズム」のプランを食文化など地元の魅力とともにアピールする構えだ。
(中略)
対象は主に市内の田園地帯で、開発を制限している市街化調整区域。中心市街地の宿泊施設との競合を避ける。市は条例施行後、民泊の営業許可に関する申請の受け付けを始める。(以下略)(産経ニュース 4月20日)
新潟市の特区民泊の中身
新潟市の特区民泊の中身は、4月20日に開催された「国家戦略特別区域会議」で、新潟市が提出した資料で概略確認できる。
特区民泊を活用して「グリーンツーリズム」と「新潟暮らし」を促進しようという考え。そのために、市内NPO法人が事業者となって、越前浜地区にある古民家(空家)を民泊施設として活用するというのが基本スキームのようだ(次図)。
(資料4 新潟市提出資料)
新潟市は、特区民泊条例案(新潟市国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業に関する条例)のパブコメを4月13日に終了。
同条例案では、「認定事業者の責務」として、グリーン・ツーリズムを楽しむ機会を積極的に設けることと、近隣の観光事業者へ配慮することの努力義務を課している。
(認定事業者の責務)
第3条 法第 13 条第4項に規定する認定事業者( 以下「認定事業者」という。)は、同項に規定する認定事業( 以下「認定事業」という。) の実施に当たっては、本市における法第9条第1項の認定区域計画の策定の趣旨を踏まえ、当該認定事業に係る令第 12 条第1号に規定する施設(以下「施設」という。)の滞在者に対して、グリーン・ツーリズム(緑豊かな農山漁村地域において、その自然、文化又は人々との交流を楽しむもので、農業体験等の滞在型の余暇活動をいう。)を楽しむ機会を積極的に設けるとともに、近隣の観光事業者(観光に関する事業を営む者をいう。)と観光資源の活用にかかる情報を共有すること等連携を図るよう努めなければならない。
新潟市の特区民泊事業者の認定要件のひとつに、「グリーン・ツーリズムを楽しむ機会を積極的に設けること」の努力義務が課せられている(第3条)。だから、特区民泊と言っても、大田区や大阪市が展開している宿泊施設確保に主眼を置いた特区民泊とは似て非なるものだ。
とはいうものの、いつものように新潟市のAirbnb登録件数の実態を確認しておこう。
新潟市内のAirbnb登録件数は24件
新潟県は、Airbnb登録件数の都道府県別ランキング第17位(次表)。
「民泊新法の影響!?Airbnbの登録件数が全国的に減少」より
新潟県内のAirbnbの登録件数は、177件(17年4月1日現在)。
今年に入って失速している(次図)。
(AirbDatabankデータをもとに筆者作成)
新潟県内のAirbnb登録物件の分布をみると、妙高市(赤倉温泉スキー場)と湯沢町に集中していることが分かる(次図)。
(AirLABO地図に追記)
市町村ごとにみると、妙高市(61件)が圧倒的に多い。
新潟市(24件)は4番目(次図)。
(AirLABOデータをもとに筆者作成)
新潟市の特区民泊は地区とNPO法人決め打ち(?)の古民家民泊
民泊新法案(住宅宿泊事業法案)の閣議決定で、影が薄くなった「特区民泊」制度を活用して、「グリーン・ツーリズム」をアピールしようという新潟市の目論見。
新潟市が4月5日開催した第9回目の「新潟市国家戦略特区推進協議会」で配布された資料によれば、民泊施設の開設時期は今年の7月が予定されている(次図)。
(資料5 |第九回新潟市国家戦略特区推進協議会)
越前浜地区で空き家を活用したNPO法人決め打ちの古民家民泊だけでなく、もう少し幅広に展開してもいいのでは。