国土交通省は12月17日、今年度の一級建築士の合格者を公表。
受験者数25,804人のうち、一次試験(学科試験)と二次試験(設計製図試験)を突破した人数は3,774人。合格率は12.4%であった。
一級建築士の受験者数が2009年以降急激に減少
同公表資料には、過去5年分のデータしか掲載されていない。
そこで、アーキ・コミュニケーション研究所が運営している「建築士の塾」のサイトに掲載されている昭和61年(1986年)以降のデータを利用して、1級建築士の受験者数・合格者数・合格率をグラフにしてみた。
2003年までは約5万人で推移していた受験者数(1次試験)は、2009年以降急激に減少していることが分かる。
合格率は、2000年代の変動時期を例外とすれば、概ね12%前後で推移している。
ということは、2009年以降、新たに生まれる一級建築士の数が急激に減少していることを意味している。
なぜ、急激に減少しているのか?
少子高齢化の影響で 一級建築士を受験する絶対人口そのものが減少しているからなのか?
いや、そうではない。
建築業界を志望する人が減少
建築技術教育普及センターの「一級建築士試験データ」によれば、今回の合格者の平均年齢は32.5歳となっている。
そこで、一級建築士の受験者数を全国の33歳の人口(総務省統計局データ)で割った値をグラフ化してみた(次図)。
33歳人口当たりの一級建築士受験者数の割合が減少しているということは、建築士を必要とする仕事に関わっている人の割合が減少していることを意味している。
もっと端的にいえば、建築業界を志望する人が減ってきているということだ。
将来、建物の品質・安全確保が危うくなる!
一級建築士の合格者の平均年齢は32.5歳だから、大学を卒業して約10年後に取得していることになる。
3Kを嫌う若者が建築業界よりもIT業界に向かう傾向は1990年頃から始まっていたので、10年後の2000年頃から1級建築士の受験者数が減少し始めた時期と符合する。
2005年11月に発覚した構造計算書偽造事件(姉葉事件)によって、建築系の学部を志望する学生の減少が加速。
人材不足、職人不足、資材高騰のなかで、復興事業や2020年東京オリンピックに向けた建設工事など、建設業界は疲弊している(傾斜マンション・杭工事データ偽装問題とは何だったのか?)。
今回のマンション傾斜・杭工事データ偽装事件によって、学生の建築離れに拍車がかかるようだと、将来の建物の品質・安全確保が危うくなる。
(本日、マンション広告なし)