駅チカの大規模な土地区画整理事業(開発総面積35万m2)の土地の一画に建つ、4棟からなる大規模マンション。
物件概要
【予告広告】東京駅直通27分、D棟エントランスまで駅徒歩7分。総戸数869戸(販売総戸数670戸)、A棟(6階建)・B棟(24階建)・C棟(24階建)・D棟(13階建)。販売戸数/未定、2LDK+S(67.54m2)〜4LDK(90.83m2)。販売価格/未定。平成27年6月下旬竣工(本チラシ掲載日の1年1カ月後)。
- ※2013年9月7日(土)・12月8日(日)、2014年1月31日(金)の物件と同じ。
新聞全紙大の立派なチラシ。
スペースはたくさんあるのに、裏面に掲載された「物件概要」は――何じゃこりゃ。
チラシの下部、見開きの左端から右端まで、長が〜い文章が改行されることもなく、6行に詰め込まれているのだ。
こんな感じ。
その幅、約74センチメートル。
36センチメートルのプラスティックの定規を当てないと、とてもじゃないが視線が定まらない。
そのうえ行頭に視線を移すたびに、文意が途切れてしまう。
よほど読ませたくないのであろう。消費者に対して誠実さに欠ける広告だ。
「不動産の表示に関する公正競争規約施行規則」第10条では「見やすい大きさの文字による表示」として、次のように規定している。
第10条(見やすい大きさの文字による表示)
規約に規定する「見やすい大きさの文字」とは、原則として7ポイント以上の大きさの文字による表示(7ポイント未満の大きさの文字による表示であっても、文字の大きさのほか、文字数、レイアウト、書体、文字色、文字間隔、行間隔等を勘案して総合的に判断し、見やすい大きさの文字であると認められる文字による表示を含む。)をいう。
文字数やレイアウト、文字間隔や行間等といっておきながら、最後は「総合的に判断」しようというなんとも曖昧なルール。
本日の広告のように横に長が〜い文章表示の適否を、誰が「総合的に判断」するのか。
不動産広告のバイブルである、不動産公正取引協議会連合会 公正競争規約研究会の編による「不動産広告の実務と規制(11訂版)」(頁85)をひも解くと――
一般に、ある広告が本条でいう「明りょうな表示」に該当するかどうかは、当該広告媒体の種類、広告スペース等を踏まえて、社会通念によりそれぞれ個別に判断される。
たとえば、(中略)、背景色と同系色の色彩で文字を重ねて印刷する場合、あるいはチラシの周囲の余白部分に必要な表示事項を記載しているものなどは、見やすい場所に表示していないものとして取り扱われる。
横に長が〜い文章表示が、「社会通念により」許容範囲と判断されるとは思えないのだが――。
まあ、ゴマ粒サイズの小さな文字に目を通さなかった結果、あとで泣くのは保険の約款と同じ。
あとで「よく読まなかったあなたが悪い」と言われないよう、ここはシッカリ目を通しておくしかあるまい。
不誠実なチラシとして、もう一点。
チラシのオモテ面に喧伝された次のキャッチコピーだ。
第1期240組登録申込み御礼[第1期総来場者数 2,500組超]
この文言をからは、「第1期の販売時に訪れた2,500組の一割近い人が登録申込みを行った」とても評判のよい物件であるかのように連想させる。
ただ、よく読むと、「完売御礼」ではなく、「登録申込み御礼」であることに気づく。
第1期の販売戸数が明らかにされていないので、登録申込みに至らなかった戸数が分からない。
そこで、リクルート社のフリーマガジン「SUUMO新築マンション(首都圏版)」のバックナンバー(2014年4月1日号)をひも解くと、このマンションの第1期の販売戸数が261戸であることが分かる。
第1期261戸の販売に対して、登録申込みが240戸。
つまり、21戸(=261戸−240戸)が売れ残ったということだ。
「21戸が売れなかった」という負の側面を隠し、「240戸も売れた」という正の側面を強調するキャッチコピーは、企業のスタンスとしてはありがちだが、消費者にとっては不誠実な態度だと思う。
(本日、マンション広告1枚)