(建設中のマンション写真。本文とは関係ありません)
首都圏の新築マンションのm2あたりの発売単価が上昇傾向にある(次図参照)。
(不動産経済研究所が毎月発表しているデータをもとに作成)
過去13年間の首都圏の新築マンション市場を振り返ると、07年から09年にかけて「平均専有面積」を小さくすることで「平均価格」を抑えていたのだが、その後じわじわと「平均専有面積」「平均価格」ともに上昇に転じている。
アベノミクスの影響もあり、2013年に入ってから、労務費と資材費が高騰し、建設費が上昇している。
具体的なデータで確認してみよう。
労務費(建設技能労働者過不足率)と資材費(建設資材物価指数)と建設費(建築費指数)が高騰する様子を指数で示したのが次のグラフ。
「建設技能労働者過不足率(全国)」は、11年から不足感が高まり始め、今年に入りさらに不足感が加速している。
また、「建設資材物価指数(全国)」も、今年に入って上昇し続けている。
両指標が上昇するのと呼応するカタチで、「建築費指数(東京)」も11年から上昇し続けている。
各指数は、次のデータを使用した。
- 労務費:建設技能労働者過不足率(全国)
- 「建設労働需給調査(国土交通省)」のうち、建設技能労働者過不足率の推移(8職種計・全国)
- 資材費:建設資材物価指数(全国)
- 「資材物価指数(建設物価調査会)」のうち、建築部門(全国平均)
- 建設費:建築費指数(東京)
- 「建築費指数(建設物価調査会)」のうち、東京・RC造・集合住宅の工事原価
「建築費指数(東京)」のデータに、東京都が公表(07年以前は国交省データを使用)している「マンション着工戸数(東京都)」を重ね合わせたのが次のグラフ。
今年に入って3千戸から5千戸の水準で着工しているのに対して、「建築費指数(東京)」が上昇し続けいることが改めて確認できる。
着工後に建築費が大幅に上昇し、コストダウンの工夫の余地がなくなると、施工業者は自らの利益が低下することに甘んずるか、マンションの質を下げて自らの利益を確保するか、あるいはその両者の合わせ技に走るしかなくなる。
そもそも、建設労働者が十分に確保できないとなると、工期の遅れを取り戻すために余計なコストがかかるだけでなく、仕事が雑にならざるを得ない。
よってもって、現在建設中のマンションやこれから着工するマンションの品質は確保されているか、気になるところである。