新年早々、朝日新聞がマンションのスラム化記事を2日にわたって掲載している。
ひとつは1月4日の夕刊「荒れゆくマンション」
池袋駅から徒歩15分、築44年の5階建て分譲マンション。
20m2ほどの部屋20戸に、中国や東南アジアの外国人が半分を占め、部屋からゴミを投げ捨てる姿も目につくが、苦情を持っていく窓口となる管理組合もないという。
もう一つの記事は、翌1月5日の社説「大都市の危機」のなかで「街中の限界集落」として取り上げられている。
都心では高齢者が5割を超える都営住宅が出現し、自治会も高齢化、孤独死防止が難しい。高齢者世帯が多い郊外のマンションも人口減少で買い手がつかず、空き家が増えているという。
このままでは財源不足から行政サービスは追いつかず、都会の限界集落があちこちでスラム化する近未来が待っていると「今、そこにある危機」に警鐘を鳴らしているのだが――。
残念ながら、マンションのスラム化の兆候を定量的に把握できる公的データは、限られている。
ひとつは総務省統計局が5年ごとに実施している「住宅・土地統計調査」
現在公表されているのは20年度の調査結果。25年度の調査結果はこの夏に速報版が公表される予定だ。
同調査結果から、東京都区部の「分譲マンション」「賃貸マンション」「賃貸アパート」ごとの空き家率が分かるのだが、いかんせんサンプル数が少ないので信頼性が低いとされている。
このあたりの事情については、富士通総研/上席主任研究員の米山秀隆氏の著作「空き家急増の真実―放置・倒壊・限界マンション化を防げ」に詳しい。
もうひとつの公的データは、国交省が5年ごとに実施している「マンション総合調査」だ。
現在公表されているのは20年度の調査結果。25年度の調査結果は今年の4月ごろに公表される予定。
同調査結果には、直接的なデータではないが、竣工時期別の「賃貸戸数割合」や「空室(3ヶ月以上)戸数割合」といったデータから、ある程度スラム化の兆候を推し量ることができる。
※詳しくは、昨年の11月5日のブログ記事「マンションのスラム化データ(賃貸化率・空室率)を可視化してみた」をご参照ください。
「都会の限界集落があちこちでスラム化する近未来が待っている」ことに対応していくためには、現状を的確に把握するための行政データが欠かせない。
でも、「住宅・土地統計調査」や「マンション総合調査」は、5年ごとという調査頻度はともかく、項目的には十分とはいえないだろう。
このあたり、日本建築学会の動きはどうかといえば――
会員向けに発行している「建築雑誌」2014年1月号において、篠原聡子日大教授(会誌編集委員長)は2014年から2年間を通した編集方針として「住むことから考える」を掲げていながら、いまのところマンションのスラム化問題については言及がない。
今後の展開に期待したい。
(本日、マンション広告なし)
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