不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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名古屋圏・地方圏のマンション事情(平成28年第3四半期)

国土交通省は11月25日、全国主要都市の計100地区を対象に四半期ごとに実施している「主要都市の高度利用地地価動向報告(地価LOOKレポート)(平成28年第3四半期)」を公表。

同レポートは比較的バイアスがかかっていない、新築マンションの市況を知り得る数少ない情報だ。 名古屋圏・地方圏の新築分譲マンションの価格動向を中心に、「鑑定評価員のコメント」をピックアップしておいた。


もくじ

平成28年第3四半期 主要都市の高度利用地地価動向報告
「平成28年第3四半期 主要都市の高度利用地地価動向報告」より

名古屋圏

名古屋市(東区/大曽根)

マンション開発素地が供給されればマンションデベロッパー間での取得競争が予想される。

地価動向

  • 名古屋市内の立地条件に優れるマンションの販売状況は好調である一方、ファミリー層等の中間所得者層が購入者の中心となる郊外のマンションで立地条件が劣る物件では、売れ行きがやや劣るものも見られることから、マンションデベロッパーは事業採算が見込める名古屋市内の立地面に優れたマンション素地を需要する傾向が強い。
  • 当地区は名古屋市内でも交通の便が良く、生活利便施設も充実しているため、ファミリー層等の中間所得者層からのマンション需要が見込める地区であるため、マンション開発素地が供給されればマンションデベロッパー間での取得競争が予想される
  • 以上のように、マンション素地に対する強い取得需要によって、取引価格が緩やかに上昇していることから、当地区の地価動向はやや上昇傾向にある。

将来地価動向

  • マンションデベロッパーは依然として高止まり傾向にある建築費をマンション販売価格に転嫁せざるを得ない状況にあるが、そのような転嫁が可能な優良物件に対する各デベロッパーの素地取得意欲は旺盛で、当地区はこうした転嫁が可能な地区としてデベロッパーに認識されている。
  • 当地区のマンション素地に対する強い需要の背後にはこのような状況が存在し、事業採算が見込めるマンション素地の強い需要が当面見込めることから、将来の地価動向はやや上昇傾向が続くと予想される。

 

名古屋市(千種区/覚王山)

仕様グレードの高いマンションは、分譲価格が相対的に割高であっても、良好な資金調達環境を反映して購買力のある高所得者層からの強い需要が当期も見られ、販売状況は好調である。郊外のマンションについては、売れ行きに明確な格差が生じている。

地価動向

  • マンションデベロッパーは高止まりしている建築費をマンション分譲価格に転嫁せざるを得ない状況になっており、当地区は高所得者層をターゲットとした分譲マンション需要が見込めるため、建築費の上昇分を分譲価格に転嫁可能な地区としてデベロッパーに認知されている。
  • こうした状況を受け、当地区でマンション開発素地が供給されるとデベロッパーの取得競争が予想され、取引価格の緩やかな上昇傾向が続いているため、地価動向はやや上昇傾向で推移した。

将来地価動向

  • 名古屋市内の立地面に優れ仕様グレードの高いマンションは、分譲価格が相対的に割高であっても、良好な資金調達環境を反映して購買力のある高所得者層からの強い需要が当期も見られ、販売状況は好調である。
  • 一方、ファミリー層等の中間所得者層が購入者の中心となる郊外のマンションについては、マンション分譲価格が上昇局面にあるなかで、立地条件に優れる物件と劣る物件とで売れ行きに明確な格差が生じているが、当地区は立地条件に優れ、さらに高所得者層の需要が見込めるためマンション開発素地に対するデベロッパーの旺盛な取得需要は当面続くと予想される。
  • したがって、当地区の将来の地価動向は引き続きやや上昇傾向と予想される。

 

名古屋市(昭和区/御器所)

上昇した建築費を転嫁しても一定の事業採算性が確保できる状況が当面続くと予想される。

地価動向

  • 当地区は都心への接近性が良く、生活利便施設も充実し、住環境も良好であるため、当地区のマンションは利便性を重視するDINKS層のみならず、ファミリー層からも人気がある。
  • 一方、マンションデベロッパーは高止まりしている建築費をマンション販売価格に転嫁せざるを得ない状態にあり、安定したマンション需要を背景に、当地区は建築費の上昇分を転嫁可能であることから、マンション開発素地に対するデベロッパーの取得需要は強い状態が続いている。
  • 以上から取引価格は上昇し、当期の地価動向はやや上昇で推移した。

将来地価動向

  • 中間所得者層のマンションに対する物件選好性は高まっており、割安感のある物件や立地条件に優れる物件の販売状況は堅調である。
  • そのなかで当地区は都心への接近性が優れる等によって、当地区のマンションは幅広い層から人気があり、上昇した建築費を転嫁しても一定の事業採算性が確保できる状況が当面続くと予想される。
  • こうした状況を背景に、当地区でマンション開発素地が供給されればマンションデベロッパーから相応の需要が見込める状態が続いているため、将来の地価動向はやや上昇傾向が続くと予想される。

 

地方圏

札幌市(中央区/宮の森)

立地に優れた中央区中心部の物件に供給を絞り込む傾向を一層強めており、マンション分譲価格の上昇が継続している。

地価動向

  • 札幌市では人口増加が続き、特に当地区を含む中央区に人口流入が集中している。こうした傾向から、デベロッパーは立地に優れた中央区中心部の物件に供給を絞り込む傾向を一層強めており、マンション分譲価格の上昇が継続している。
  • 当地区は、古くから名声の高い住宅地で、市内の需要者のほか、市外・道外・海外富裕層からの需要も長期的に見込める地区であるため、高い競争力を有しており、マンション分譲価格の上昇期においてもエンドユーザーの需要は引き続き旺盛で、完成在庫量も安定している。
  • 当期においても引き続きマンション素地の高額な取引が散見され、地価動向は上昇が続いている。

将来地価動向

  • 当地区では今後も高級住宅地として道内外のデベロッパーの開発意欲やマンション適地に対する需要は堅調に推移する見通しである。
  • また、開発素地も限られていることから、マンションの乱開発に伴う供給過多に陥ることは考えにくく、販売価格が大きく値崩れする立地ではないことから、今後も堅調な用地取得需要に支えられ、将来の地価動向は当面は上昇が継続すると予想される。

 

仙台市(青葉区/錦町)

マンション分譲価格の極端な上昇が続いているが、追従可能なエンドユーザーは徐々に減少している。

地価動向

  • 東日本大震災以降、建築費の高騰を背景にマンション分譲価格の極端な上昇が続いているが、追従可能なエンドユーザーは徐々に減少しており、高水準にて推移していた契約率はこれまでの水準を下回って推移している。
  • このため、既に分譲価格はエンドユーザーの予算上限に迫りつつあることが窺え、幅広い所得層を集客することが難しい水準に近づきつつある。
  • ただし、当地区のように高価格帯の分譲を可能とするエリアにおけるマンション素地の供給は極めて少なく、適正な事業採算の見込めるマンション素地に対する需要は十分に認められる。
  • また、市内中心部への接近性が良好な当地区では、投資用物件又はセカンドハウス的な需要も十分に見込まれる。
  • 以上より、地価動向は引き続きやや上昇傾向で推移している。

将来地価動向

  • マンション分譲価格の上昇によって、エンドユーザーを幅広く集客することが難しい状況となっているため、メインターゲットの明確化や専有面積狭小化等による商品構成戦略の重要性が高まっており、デベロッパー各社のリスク許容度に基づく投資スタンスの違いが、マンション素地価格に影響することが予測される。
  • このような中、市内中心部からの接近性に優れ、富裕層のエンドユーザーが多く見込まれる当地区においては、分譲価格も安定的に推移することが見込まれ、デベロッパーからの選好性は高いと考えられることから、上昇幅は縮小しながらも、将来の地価動向は引き続きやや上昇すると予想される。

 

草津市(南草津駅周辺)

今後供給が見込まれる新築マンションはほとんどない。

地価動向

  • 当期は当地区及びその周辺地区においてマンション開発素地の取引は見られないが、草津駅周辺で平成29年度竣工予定の分譲マンションの第1期(全住戸の約半数の住戸)の販売が行われ即日完売し、マンション需要の強さが裏付けられた。
  • また、隣接する大津市でもマンション計画が多く見られ、また、分譲中の物件についても売れ行きは概ね堅調である。
  • なお、草津駅・南草津駅を最寄り駅とする分譲マンションは近年ほとんどが竣工前に完売している状況であり、当地区でも平成28年2月に竣工したマンションは竣工前に完売した。
  • また、草津駅、南草津駅周辺では大規模な土地の供給がほとんど見られず、開発適地も限られていることから今後供給が見込まれる新築マンションはほとんどないが、中古マンションの売れ行きが引き続き好調で、マンション需要は旺盛である。
  • 以上の状況から、JR草津駅、南草津駅から徒歩圏内の物件を高く評価するデベロッパーが多く、マンション分譲価格はこれ以上の上昇が見込めないとの見方はあるものの、当地区に対する土地取得需要は強いため、当期の地価動向はやや上昇で推移した。

将来地価動向

  • 当地区は住環境が良好である点や新快速停車駅で利便性が高いこと等からマンション素地等の需要が非常に強く、南草津駅から徒歩圏内のエリアを中心に、マンションデベロッパーから事業成立性が県内で最も高い地区と評価されている。
  • 当地区は、マンション素地の供給が限定的で、新規のマンション分譲は少ないが、草津駅周辺の分譲マンションは売れ行きも好調で、また隣接する大津市では新築マンションの計画も多く、マンションデベロッパーの取得意欲は引き続き強い傾向が窺える。
  • 建築費や販売価格の水準は当面大きく変化はないと判断しているデベロッパーは多いものの、草津市の人口は増加傾向にあり、草津駅、南草津駅から最寄りのエリアを限定してマンションを求める需要者も多く、前記のように当分の間はマンション需要は堅調に推移すると予想されることから素地に対する取得需要が旺盛で、将来の地価動向はやや上昇傾向が続くと予想される。

 

広島市(中区/白島)

マンション分譲価格も緩やかに上昇しているが、販売は好調を維持。

地価動向

  • 平成27年3月に開業した新白島駅の効果が続いており、立地条件が優る一部の賃貸住宅で新規賃料が上昇しているが、全体では概ね横ばいである。
  • 投資用賃貸マンションの供給は減少傾向にあるが、取得需要が強い状況に変化はない。投資物件の供給が不足しているため、当期は取引を確認できなかったが、賃貸マンション等の収益物件の取引価格は上昇傾向で推移している。
  • 一方、マンション分譲価格も緩やかに上昇しているが、販売は好調を維持し、完成在庫もエリア全体で220戸程度と低い水準で推移している。
  • 当期は地区内において戸建住宅向けの開発素地が取引され、相場をやや上回る取引であった。
  • 開発素地の仕入れが困難な状況が続いており、取引価格はやや上昇傾向にある。そのため、地価動向はやや上昇している。

将来地価動向

  • 当地区は、住宅地としてのブランド力のある地区である。新白島駅の開業効果は定着すると見込まれ、富裕層向けの戸建住宅や分譲マンション及び賃貸住宅等の開発素地の需要は、当面強い状態が続くと予想される。
  • マンション販売は好調を維持しており、利便性の良い高級住宅街では戸建需要が強く、高額での取引が見られることから、旺盛な住宅需要に牽引されて取引価格の上昇は当面続くと見込まれる。
  • 以上から、賃貸住宅は、駐車場として利用していた土地が賃貸マンションとして建築される事例や相続対策による建築が増える等、新築物件の増加が今後の賃貸マーケットに影響する可能性があるものの、将来の地価動向はやや上昇傾向が続くと予想される。

 

福岡市(中央区/大濠)

マンションの売行きに減速感が出てきている。

地価動向

  • 当地区で現在販売中のマンションの売行きに減速感が出てきている。市内の他の優良マンションエリアも同様で、マンション分譲価格の上昇はこれ以上に見込みにくくなっている。
  • また、中央区・早良区等の優良マンション適地で行われているマンション素地の入札では相変わらず競合が激しく、依然として高値での落札が続いているものの、これまでのように入札が行われる度に価格が大幅に上昇するような状況は見られなくなっている。
  • 市場では地価は上限に達しているとの認識が広まりつつあると見込まれるが、取引意欲が依然として旺盛なデベロッパーが存在しており、当地区で予定されている国有地の入札にも注目が集まっている。
  • したがって、取引価格の上昇の勢いはさらに弱まりつつも、地価動向は依然としてやや上昇傾向にある。

将来地価動向

  • マンション分譲価格がほぼ上限に達しているため地価上昇は一層見込みづらくなってきているが、当地区ではマンションの供給が比較的少なく、良好な融資環境の影響もあって、建築の仕様や利益を調整して高額な土地代に耐えるデベロッパーがまだ複数存在しており、こうした状況はもうしばらく続くことが予想される。
  • したがって、将来の地価動向についても、販売不振マンションの大幅な増加がない限り、上昇幅は縮小しつつもやや上昇傾向が続くと予想される。

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