国土交通省は11月25日、全国主要都市の計100地区を対象に四半期ごとに実施している「主要都市の高度利用地地価動向報告(地価LOOKレポート)」を公表。
同レポートは比較的バイアスがかかっていない、新築マンションの市況を知り得る数少ない情報だ。
湾岸エリアのタワーマンションに興味のある方が多いので、月島、豊洲、有明など、湾岸エリアの新築分譲マンションの価格動向を中心に、「鑑定評価員のコメント」をピックアップしておこう。
ざっくり言うと
- 【東京圏地価】「上昇」が 6 地区で減少、「横ばい」が 6 地区で増加
- 【湾岸エリア地価】踊り場(0%)を迎えた
- 【佃・月島】資産保有目的の富裕層による需要が減退
- 【豊洲】価格上昇の動きが一段落。今後、マンション取得者による売却の動き
- 【有明】ピークアウトとの見方が強まっている
なんだか雲行きが怪しくなってきている。
【東京圏地価】「上昇」が 6 地区で減少、「横ばい」が 6 地区で増加
東京圏(43)では上昇が 33 地区(前回 39)、横ばいが 10 地区(前回 4)となり、約 8 割の地区が上昇となった。
上昇が 6 地区減少し、横ばいが 6 地区 増加した。
「平成28年第3四半期 主要都市の高度利用地地価動向報告」を切り貼り
【湾岸エリア地価】踊り場(0%)を迎えた
月島、豊洲、有明などの湾岸エリアの地価は、過去1年以上上昇傾向が続いていたが、佃・月島・豊洲は遂に踊り場(0%)を迎えた。
「平成28年第3四半期 主要都市の高度利用地地価動向報告」を切り貼り
それでは各地区の「鑑定評価員のコメント」を見てみよう。
【佃・月島】資産保有目的の富裕層による需要が減退
分譲価格の高騰や国内外の経済情勢の不透明感等を背景に資産保有目的の富裕層による需要が減退。
中古マンションの在庫は増えつつあり、今後マンション需要が反転増加に転じる要因は見当たらず、供給過剰感が生まれつつある
地価動向
- 当地区は、銀座を中心とする都心への接近性を備える一方、東京タワーや東京スカイツリー等のランドマーク施設や河川等に囲まれた変化に富んだ眺望が得られることから、分譲・賃貸ともに高層マンションの需要が強い地区である。
- 高グレードのタワーマンションが相次いで供給され、マンション市況は好調に推移してきたが、建築工事費の上昇等を要因とした分譲価格の高騰や国内外の経済情勢の不透明感等を背景に資産保有目的の富裕層による需要が減退している。
- また、中古マンションは新築への住み替えによる売物件が増加傾向にある。マンション素地については、建築費の高止まりによりデベロッパーによる採算性の検証が厳格化し、取得意欲はあるものの選別化が進んでいる。
- こうした背景から当期の取引価格は横ばいの安定化傾向となって地価動向は横ばいに転じた。
将来地価動向
- 地区内外で再開発や東京五輪関連施設の建築計画があり、都市基盤整備として環状2号線の建築が進んでいるものの、開業時期については現段階で見通しが立っていない状況にある。
- こうした再開発事業等の効果は既にある程度先行して地価やマンション分譲価格に織り込まれていると考えられる。
- 中古マンションの在庫は増えつつあり、今後マンション需要が反転増加に転じる要因は見当たらず、供給過剰感が生まれつつある現状ではマンション市況は概ね横ばい、経済情勢次第ではやや下落する可能性もある。
- マンション素地については建築費の高止まりによりデベロッパーによるより厳格な選別化が進むものと見込まれる。こうした背景から引き続き将来の地価動向は横ばいと予想される。
【豊洲】価格上昇の動きが一段落。今後、マンション取得者による売却の動き
一次取得層による購入限度額に近づいており、足元では価格上昇の動きが一段落。今後、インフラ整備による利便性向上を期待してマンションや素地を取得した者による売却の動きが出てくる。
地価動向
- 東京五輪開催決定以降、当地区は強いマンション需要を反映して、新築マンション分譲価格の上昇が続いたが、一次取得層による購入限度額に近づいており、足元では価格上昇の動きが一段落している。
- また、中古マンション取引においては需要者の購入意欲は底堅く、新築時の分譲価格と同程度の水準での取引も多く見られるが、価格を調整して成約に至る取引も目立っている。
- なお、豊洲市場の移転延期の決定に関しては、当地区のマンション需要を減退させるものではなく、マンション分譲価格への影響は認められない。
- このような状況から、デベロッパーの投資採算性が反映される当地区の地価動向は横ばいに転じた。
将来地価動向
- 当地区では、新築・中古ともに住戸の大量供給が続いたため、将来的には、取引件数の減少が予想され、また、豊洲市場のオープン延期に伴って環状2号線の開通が不透明となったことに関しては、現時点でマンション市場への目立った影響は認められないが、今後、インフラ整備による利便性向上を期待してマンションや素地を取得した者による売却の動きが出てくることも考えられる。
- 一方、都心に近い当地区は、居住目的を中心としたマンション需要が底堅いため、マンション分譲価格等の安定的な動向を背景に、当地区における将来の地価動向は横ばいと予想される。
【有明】ピークアウトとの見方が強まっている
地価動向
- 湾岸部のマンション市場は、東京五輪の開催決定以降極めて好調であったが、販売価格の上昇や売出物件の増加、経済情勢の不透明感等の懸念材料から、ピークアウトとの見方が強まっている。
- 当地区においても他の湾岸エリア同様、マンション成約価格の頭打ち傾向が見受けられるが、五輪関連施設の建築や国家戦略特区の指定を受けた大規模開発事業等が計画されるなど注目度が非常に高いことから、デベロッパーによる開発素地の取得意欲は依然として強く、地価動向は引き続きやや上昇傾向にある。
将来地価動向
- 東京五輪関連施設や地区計画によるまちづくりが具体化しつつあり、都心部と湾岸部を繋ぐ環状2号線の開通予定のほか、銀座と有明を結ぶ地下鉄構想が掲げられるなど、開発が遅れた当地区は他の湾岸エリアの中でも将来の発展期待が高いエリアである。
- 湾岸エリアのマンション市況はピークアウトの様相を呈しているものの、こうした将来に対する期待から堅調な需要を維持し、デベロッパーの取得意欲も引き続き強い状況が見込まれ、将来の地価動向はやや上昇傾向が続くと予想される。
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