東京カンテイが10月15日に発表した「賃料月別推移」によれば、「首都圏主要都市の分譲マンション賃料は、東京23区で前月比+1.3%の3,207円/m2と5ヵ月ぶりに上昇に転じたことで、賃料水準は再び3,200円を上回った」とのこと。
賃貸市場は、あまりパッとしないようだ。
23区の賃料について、短期的な上げ下げに一喜一憂しなくて済むよう、長期的なデータを確認しみよう。
東京23区の家賃の推移
総務省統計局が毎月公表している「小売物価統計調査」データのなかに、「県庁所在市及び人口15万以上の市」の家賃(民営・公営・都市基盤整備公団住宅など)が掲載されている。
1950年以降の東京都区部のデータを抜き出してグラフ化してみた。
さらに、平成22年基準の消費者物価指数(東京都区部 年平均)のうち「持家の帰属家賃を除く総合」指数を用いて物価補正したのが次のグラフだ。
民営家賃は、高度経済成長期(1954年~1973年)とバブル期(1987年~1990年)の2回、大幅に上昇していることが分かる。
公営家賃のほうは、安価な居住環境を提供するという使命を担い、その間の上昇はなだらかだ。しかも、絶対額としても2倍強(1,500円から3,500円)に収まっている。
過去10年間を見ると、公営家賃がなだらかに上昇し続けているのとは反対に、民営家賃が下落傾向にあるのはなぜか?
家賃と世帯数の関係(東京23区)
上のグラフに世帯数(住宅・土地統計調査データによる)を追加すると、その原因が見えてくる。
「公営」や「都市基盤整備公団」の世帯数が増えていないのに、家賃が上昇傾向にあるのは、経年劣化による維持管理費などの増加によるものではないだろうか。
では、「民営」の世帯数が増加しているのに、なぜ「民営家賃」は下落しているのか?
原因として考えられるのは、「民営」の世帯数の増加以上に「民営」の借家の数が増加して、需給バランスが崩れている可能性だ。
具体的に確認してみよう。
貸家の着工戸数の推移(東京23区)
東京都が毎月公表している「住宅着工統計」に「資料-6」として「過去の新設住宅着工戸数の推移(年度別・前年度月別)」データが掲載されている。
同データのうち、年度別の貸家の着工戸数を可視化したのが次のグラフ。
過去10年間の貸家の着工戸数は5万戸~8万戸。
この間に積み上がったストックは約70万戸。
前のグラフで、この10年間で民営の世帯数の増加は約36万戸(=182万戸-146万戸)だから、貸家の戸数はその倍も増えている。
このように、民営借家の供給過剰で民営家賃が下落しているのだ。
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