湾岸の某エリアで、ファンタジーな演出が施された大規模タワーマンションが、なぜ「建物の長寿命化」だけが「☆」(一つ星)なのか?
当該物件の「建物の長寿命化」を例に、☆評価の具体的な意味を調べる方法を紹介しよう。
「建物の長寿命化」だけが「☆」(一つ星)の大規模タワーマンション
湾岸エリアに建つ大規模タワーマンションの広告。
物件概要
【第1期 本広告】銀座一丁目駅直通4分、駅徒歩12分。総戸数1,076戸、48階建。販売戸数340戸、1LDK(43.92m2)~4LDK(121.14m2)。販売価格4,300万円~2億2,900万円、最多価格帯6,900万円台(26戸)。平成31年5月下旬竣工(本チラシ掲載日の1年11カ月後)。
チラシ裏面に掲載されている「東京都マンション環境性能表示」のラベルを見て、ちょっとビックリ。
4つの項目(建物の断熱性、設備の省エネ性、太陽光発電・太陽熱、みどり)は「☆☆☆」(三ツ星)なのに、「建物の長寿命化」だけが「☆」(一つ星)なのである。
湾岸の某エリアで、ファンタジーな演出が施された大規模タワーマンションが、なぜ「建物の長寿命化」だけが「☆」(一つ星)なのか?
「建物の長寿命化」が「☆」というマンションは一般的なのか?
東京都環境局が公開している「マンション環境性能表示」物件を調べてみると、「建物の長寿命化」は「2013年度基準」では、「☆☆」(二つ星)の物件が多いことが分かっている(次図)。
ハッキリ言えば、当該物件のような「建物の長寿命化」が「☆」のマンションは、一般的ではないのである。
「「設備の省エネ性」「建物の断熱性」は三つ星が当たり前!「東京都マンション環境性能表示」の相場感」より
「☆☆☆」はともかくとしても、なぜ「☆☆」を得られなかったのか?
当該物件の「建物の長寿命化」を例に、☆評価の具体的な意味を調べる方法を以下に紹介しよう。
☆評価の具体的な意味を調べる方法
STEP1:「マンション環境性能表示」HPにアクセスする
まず、東京都環境局の「マンション環境性能表示が公表されているマンション」のページにアクセスする(次図)。
地図上で、当該物件が建つ地域をクリックする。
STEP2:「建築物環境計画書」を開く
マンションの一覧が表示されたら、当該物件の「建築物環境計画書」の欄の「●」をクリックする(次図)。
当該物件の「建築物環境計画書」が開いたら、「長寿命化等」を確認する。
当該物件では、「縫持管理、更新、改修、用途の変更等の自由度の確保」として、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)の「維持管理対策等級(専用配管)2」、「維持管理対策等級(共用配管)1」と記されていることが分かる(次図)。
また、「躯休の劣化対策」として、「劣化対策等級3」と記されていることも分かる(次図)。
STEP3:「マンション環境性能表示ガイドライン」で照合する
「維持管理対策等級(専用配管)2」や「維持管理対策等級(共用配管)1」、「劣化対策等級3」とは、どういうレベルを意味しているのか?
「マンション環境性能表示ガイドライン(第二版)東京都環境局 平成22年7月」(PDF:1.9MB)で確認することができる。
「建物の長寿命化」の「☆」評価は、「☆☆」評価を下回る水準であり、「劣化対策等級3かつ維持管理対策等級2~3相当」に達していない場合を意味しているのだ。
- ☆・・・・・下記を下回る水準
- ☆☆・・・・劣化対策等級3かつ維持管理対策等級2~3相当
- ☆☆☆・・・劣化対策等級3かつ維持管理対策等級3で、間取り、又は、用途変更に支障のない階高及び梁下の高さの設定
(同ガイドライン P7)
つまり、品確法の「維持管理対策等級(専用配管)2」と「劣化対策等級3」は「☆☆」水準を満たしているが、「維持管理対策等級(共用配管)1」であるがゆえに、「☆」に留まっているのである。
STEP4:住宅性能評価・表示協会HPでレベルを確認する
では、「維持管理対策等級(共用配管)1」とは、どのようなレベルなのか?
一般社団法人住宅性能評価・表示協会のホームページで確認できる。
「維持管理対策等級(共用配管)の等級2」(=基本的な措置)を満たすためには、次のaとbの対策を講じる必要がある。
- a.躯体を傷めないで補修を行うための対策
例)配管が、貫通部を除き、コンクリートに埋め込まれていないこと- b.躯体も仕上げ材も傷めないで点検、清掃を行うための対策
例)適切な点検等のための開口や掃除口が設けられていること(「 住宅性能表示制度|住宅性能評価・表示協会」より)
当該物件の場合は、aとbの対策が講じられていなかったので、「☆☆」を得られなかったということになる。
平たく言えば、当該物件は、共用部分の給排水管や給湯管などの維持管理(清掃、点検、補修)を容易にするために必要な対策が見込まれてない設計になっているということだ。
魔法の杖を一振りすれば、簡単に維持管理できるという訳ではない。
(本日、マンション広告2枚)