東京都は5月23日、「平成29年冬期 路上生活者概数調査の結果」を公表。
調査結果(概要)
平成29年1月時点での東京都の路上生活者数は、1,397人でした。このうち、都・区市町村の調査による人数は754人(区721人、市町村33人)、国管理河川が643人でした。
前年同月と比べ、合計で76人の減となりました。
市区町別や施設別(公園・道路・河川・鉄道・その他)に路上生活者の概数が表形式で公開されているのだが、いかんせん数値の羅列で直感的に把握しにくい。 そこで都の担当者に代わって、可視化してみた。
また、民間の調査結果との違いや国の調査結果も可視化してみた。
都の路上生活者調査結果
新宿区(126人)がダントツ
路上生活者数は、新宿区(126人)がダントツで多い。次いで渋谷区(83人)、台東区(81人)、墨田区(67人)の順(次図)。
半数は河川敷
路上生活者が多いのは河川敷(次図)。平成26年以降、5割を超えている。
平成29年1月時点で、河川敷(722人)、公園(346人)、道路(268人)の順。
路上生活者数にどれくらいの性差があるのか?
女性は全体の3%
23区の男性の路上生活者数は漸減し、平成27年に1,500人を切った。
女性の路上生活者数は全体の3%前後。男性に比べて、とても少ない。
最近、あまり話題にならなくなった路上生活者(ホームレス)はどのくらい減ってきているのか?
ピーク時(平成11年度)の13%
都が平成26年6月に公表した「ホームレスの自立支援等に関する東京都実施計画(第3次改訂版)」(平成27年9月一部改定)(PDF:1.9MB)の頁3に特別区(23区)と市部の「ホームレス数の推移(概数調査)」のグラフが掲載されている。
この特別区(23区)のデータに、直近のデータを加えて描いたのが次のグラフ。
平成11年度~平成16年度の5千人台から徐々に減少し、平成28年度の夏は749人まで減少。ピーク時(平成11年度夏期5,798人)の13%となっている。
調査は平日の昼間のある1日、施設管理者の目視確認によるとされている。
平日の昼間であれば、何割かの路上生活者は街をさまよっているだろうから、実際にはもっと多そうだ。
昼間の路上生活者数(都調査)に対して、夜間(民間調査)は2~3倍
じつは、ホームレス問題を研究している市民団体ARCH(アーチ)が5月2日、山手線沿いを中心とした都心11区の夜間のホームレスの人数は、都が調査している昼の人数に比べ約2.5倍だったとの調査結果を発表している(東京新聞 5月3日)。
ARCH調査結果発表資料をみると、一般市民の協力を得て(延べ471名)、昨年の冬から精力的に深夜都心のホームレス調査(ストリートカウント)を実施していることが分かる(次表)。
(ARCH調査結果発表資料 P6より)
都の調査結果(平成29年冬)とARCH調査結果(平成28年夏・冬、平成29年冬)を比べてみたのが次のグラフ。
都の調査結果(昼間)に比べて、ARCH調査結果(夜間)は2~3倍になっていることが分かる。
なぜ、都の調査結果(昼間)とARCH調査の結果(夜間)とで、これほどの差があるのか?
ARCHは、都の調査よりも道路や駅の占める割合が高い(深夜になると道路や駅で寝る人々が多くいる)ことを理由に掲げている。
昼間の都調査と比べ、深夜のストリートカウントでは道路や駅の占める割合が高く、相対的に公園の占める割合が低い
- ⇒昼間には見られないが、深夜になると道路や駅で寝る人々が多くいると考えられる
「ARCH発表資料(PDF:2.8MB)」P8より
では、他の都市の路上生活者数はどうなっているのか?
国のホームレス実態調査結果
厚労省が5月23日に公表した「ホームレスの実態に関する全国調査(概数調査)結果」をひも解いてみよう。
※同調査結果は平成29年1月、市区町村による巡回での目視調査である。上記の都の調査結果と整合している。
東京都・大阪府・神奈川県がホームレス数トップ3
平成29年1月の全国のホームレス数は5,534人(うち男性5,168人、女性196人、不明170人)。
ホームレス数は東京都(1,397人)と大阪府(1,303人)がダントツで1,300人超え。次いで神奈川県(1,061人)。あとは大幅に少なくて、200人前後で4県(愛知県、福岡県、千葉県、埼玉県)が続く(次図)。
最も少ないのは、青森県、秋田県、山形県、奈良県、島根県で、ホームレスが確認されていない。
上図で「不明」とあるのは、「目視による調査のため防寒具を着込んだ状態等により性別が確認できない者」を指している。
東京23区・大阪市のホームレス数が1千2百人超え
平成29年1月の都23区・指定都市・中核市のホームレス数は東京23区(1,246人)と大阪市(1,208人)がダントツで1,200人超え。
3位横浜市(531人)、4位川崎市(341人)、5位名古屋市(182人)、6位福岡市(181人)。