朝日新聞は2月10日の1面トップで、今後「ファクトチェック」コーナーを設け、政治家の発言を随時取り上げていくとしている。
その朝日新聞に同日掲載された民泊関連記事をファクトチェックしてみた。
朝日新聞が「ファクトチェック」コーナーを開設
政治家らの発言内容を確認し、その信憑性を評価するジャーナリズムの手法「ファクトチェック」。米国メディアが積極的に取り組んでいる。
朝日新聞でも「ファクトチェック」コーナーを設け、政治家の発言を随時取り上げていくとしている。
2月10日の1面は安倍首相の改憲手続きにまつわる発言が「誤り」であるとしている。
(ファクトチェック記事|朝日新聞2月10日)
フェイクニュースが蔓延する時代には、新聞にはファクトチェック機能を期待したい。
ところで、同日の25面に民泊関連の記事が掲載されている(次図)。
この記事の内容は正しいのか?
ファクトチェックしてみよう。
「民泊特区 まず順調」という見出しは正しいのか?
(民泊記事|朝日新聞 2月10日)
民泊特区 まず順調
国の特区制度を活用してマンションなどの空き部屋などを旅行者に有料で貸し出す「民泊」を大田区が解禁して、1年が経った。区が「特区民泊」として認定した物件は9日で30件に達し、居室数は106室となった。
(中略)
大田区内でも今後、特区民泊と新法での民泊が並立することが考えられる。三井英司・生活衛生課長は「事業者も様子見の段階で、民泊が大きく動き出すのはこれから。特区民泊は一定の成果を出しており、安心安全な民泊として信頼される取り組みを続けたい」と話す。(朝日新聞 2月10日)
大田区が特区民泊を開始して1年が経過。
大田区のホーム―ページには2月7日現在の認定施設数が29件掲載されている(次図)。
2月9日時点のデータは未だ掲載されていないが、記事の「30件」は間違いないとみていいだろう。
でも、「民泊特区 まず順調」で「特区民泊は一定の成果」を出しているのかといえば、そうではない。
大田区内で民泊仲介サイトAirbnbに登録された物件数(大変が違法民泊)が鰻上りであるのに対して、大田区の認定施設の件数は昨年の10月以降ほとんど増えていない。
この事実をもって、「民泊特区 まず順調」と言えるのか。
少数派の「ホームステイ型民泊」のメリットを強調!?
また、朝日の記事は、人数が多くても家族で一緒に過ごせることを民泊のメリットとして掲げている。
利用者「家族6人一緒に過ごせる」
上海から訪れた中国人観光客の范華清さん(32)は今月初め、大田区鵜の木1丁目の特区民泊を利用した。IT関連企業に勤める范さんは初の来日で、妻と7歳の長男、母と義父母の6人で滞在。「人数が多くても家族で一緒に過ごしたかった。ホテルではそうはいかない」と民泊のメリットを挙げた。(以下略)
(同上)
范華清さん一家が宿泊したのは木造一戸建ての2階。
たしかに、人数が多くても一緒に泊まれるのは民泊のメリットの一つであることに間違いはない。
でも、日本では清く美しい一戸建ての「ホームステイ型民泊」は極めて少数派。大半は金儲けを重視する「投資型民泊」。その多くはマンションだ(次図)。
「マスコミ報道では分からない!全国4万6千件の民泊構造を可視化」より
極めて少数派である一戸建ての「ホームステイ型民泊」のメリットを報じるのであれば、「投資型民泊」によってマンション住人が被害を受けているという(【漫画】民泊被害のリアル!隣戸の民泊にヒドイ目に会った実話)デメリットを報じなければバランスを欠いた記事といえよう。
朝日新聞は、政治家の発言のファクトチェックと合わせて、一般記事の内容のファクトチェックも強化したほうがいいのでは。