不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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住宅ローンは現代の小作農

幹線道路沿いに建つ大規模マンション。

【先着順】大手町駅直通37分、駅徒歩15分。総戸数107戸、7階建。販売戸数4戸、3LDK(70.61m2)〜4LDK(83.70m2)。販売価格1,698万円〜2,898万円。平成24年8月6日竣工済み(本チラシ掲載日の4カ月前)。

  • ※2008年5月24日(土)、2012年10月5日(金)の物件と同じ。

新聞半紙大のチラシのオモテ面に、よく見かける買い急ぎを煽る説明。

  • その1 いよいよ消費税増税
    • たとえば販売価格2,100万円のマンションを購入したとすると・・・その差87.5万円!
  • その2 住宅ローン金利が過去最低水準
    • 頭金を貯めている間に金利が上がってしまったら・・・
  • その3 月々の家賃負担を考えると・・・
    • 80m2超住戸(3LDK)の場合。頭金8万円、月々6万円台の返済でご購入が可能。賃貸にお住まいの方は、今お支払いの家賃とぜひ比べてみてください。

上記のチラシの説明で、買い急ごうと思われた方、昨夜のNHKニュースウオッチ9「住宅ローンに迫る崖 マイホームなぜ破綻?」をご覧になられただろうか。
亀井静香先生が金融・郵政改革担当大臣当時にぶち上げた「金融円滑化法(中小企業や住宅ローンの金銭債務の支払いを一定期間猶予するモラトリアムな法律)」が来年の3月末に期限切れとなり、住宅ローンの破たん者が増える可能性があることを報じていた。

視そびれた方には、新書『「持たない」ビジネス 儲けのカラクリ』を一読されることをオススメする。
住宅を購入する(所有する)ことのリスクについて、一章を費やして詳述されている。
第一章の目次は次のとおりだ。

第一章 マイホーム「購入」「賃貸」の論争に決着

  • 「家を買ったら資産が残る」という幻想
  • 初年度破綻も有り得る35年ローンの危険性
  • 総支払額だけじゃない購入と賃貸の差
  • なぜ35年間も同じ収入があると信じられるのか
  • 高まる職住接近の必要性が、不動産の価値を激変させる
  • インターネットが高めた意外な価値観
  • ビジネスの立地的優位性は常に変動する
  • 現在は地方の倉庫化、将来は日本の倉庫化
  • 田園調布も将来は別荘地になる!?
  • UR=独立行政法人都市再生機構
  • 若い独身者は絶対に会社から徒歩圏内の賃貸で
  • マイホーム幻想に隠された国家的すり込み!?
  • 貧すれば鈍すのワンルームマンション大家
  • 企業も不動産などの資産を持たなくなってきている

著者は、UR(独立行政法人都市再生機構)の賃貸に住むことを提案している。
具体的には次のくだり。

自分は都内のUR賃貸住宅で暮らしています。ご存知の方もいると思いますが、URとは独立行政法人都市再生機構のことで、わかりやすく言えば昔の公団住宅です。
この物件を選んだ理由はいくつかありますが、もっとも大きな基準となったのは「東京駅からタクシーで2,000円以内で且つ家賃15万円以下の物件」でした。
(中略)
このURからURへ移るときは保証金が流用されるので新たに用意する必要はありません。また、建物に問題が発生するとすぐに修繕してもらえます。
もちろんですが、賃貸ですから資産価値の増減を気にする必要もありません。固定資産税の負担も賃借人である居住者には直接請求されません。
自分が居住する区は、都内で大地震の際に津波被害がもっとも大きいのではないか、地盤が緩いのではないかと警戒されているエリアですが、賃貸物件なので地震等の災害で、資産価値が下がるのではないかといった不安もありません。
立地による便利さと堅牢な建築による安心感、住んでみてわかる暮らしやすさや居住空間などを鑑みれば、UR物件は極めてコストパフォーマンスが高いと言えるのではないでしょうか。

「家を買う」という言葉自体が大きな誤解を生んでいるという。
「ローンを払い終わるまで、その住宅を『銀行から借りている』のと変わりません」という著者の指摘はそのとおりだと思う。


「住宅ローンは現代の小作農だ」という指摘は、なかなか辛辣だ。
「永遠とも思える35年ローンを組み、その返済のために働くマイホーム購入者」の姿は、「地主から畑を借り、頑張って収穫してもほとんど地主に持っていかれてしまう小作農」の姿が極めて似ているという。


「持たない」ビジネス 儲けのカラクリ (角川oneテーマ21)

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2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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