不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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マンション抽選、事前調整は必要悪か

駐車場跡地に建つ小規模マンション。

【第1期 本広告】大手町駅直通14分、駅徒歩9分。総戸数25戸(管理室1戸含む)、9階建。販売戸数10戸、1LDK(45.61m2)〜3LDK(91.99m2)。販売価格2,830万円〜5,990万円。平成24年3月上旬竣工(本チラシ掲載日の1年後)。

B3判チラシのオモテ面によくある怪しげな記載。

  • 第1期登録受付開始
    • 登録受付日時/平成23年3月26日(土)10:00〜10:30
    • 抽選日時/平成23年3月26日(土)10:45〜(公開抽選)

金曜日のチラシで、翌日の土曜日の登録受付を謳う。
しかも受付時間は、たったの30分間。
その受付締め切りの15分後には“公開抽選”を行うとある。

なぜ、このような周知期間の短いチラシが存在するのか?
このような周知期間の短いチラシから想像できるのは――
「予告広告」でモデルルームに集客しながら、販売見通しが得られた段階で「本広告」を出して、短期間で登録受付・抽選を行うという、最近流行りの販促ワザだ。
本来、「予告広告」とは、販売価格などが確定していないために、「本広告」に先立ち、物件の販売開始時期をあらかじめ告知する広告のこと。

平たくいうと、「予告広告」とは、販売価格を早期に決定できない(決定したくない)デベロッパーと、物件情報を早期に入手したい消費者、双方のニーズを満たすために生まれた特例の制度だ。
ところが、物件情報を消費者に早期に伝えようという本来の趣旨から外れ、デベロッパーに都合のよい販売価格決定のための集客手段となっている。

マンション抽選の事前調整不可ルールは遵守されているか?
業界の自主ルール「不動産の表示に関する公正競争規約施行規則」によれば、「予告広告」には「本広告を行うまでは、契約又は予約の申し込みに一切応じない旨及び申込みの順位の確保に関する措置を講じない旨」の表示が義務付けられている(第6条)。

金曜日のチラシで、翌日の土曜日の30分間というピンポイトで登録を受付け、その15分後に抽選を実施する芸当ができるなんて。
第6条ルールは遵守されているのか?

マンション抽選、事前調整は必要悪か
震災仮設住宅や特養ホームの入居順が「抽選」で決められるのは、個々の状況を勘案することもあろうが、需要が供給を大きく上回っている場合に公平を期すため。

では、必ずしも人気のない新築マンションでも「抽選」となるのはなぜか?
人気・不人気住戸が混在する新築マンションを「抽選」ではなく、「先着順」にすると、不人気住戸が売れ残ってしまう。

売れ残って困るのは、売り主だけでなく、既購入者も同じだから、マンション抽選の事前調整は、必要悪だという見方もできそうな気がするが――
仮に「先着順」であっても、不人気住戸の価格水準を低く設定すれば、それなりに希望する人は増えるだろうから、売れ残りリスクは減るのだが――それでは、売り主の利益が最大化できない。

販売戸数も価格も開示されていない「予告広告」の段階で、販売価格の落としどころを探りながら、購入希望者が特定の住戸に集中しないように、事前に調整したうえで、“抽選”に持ち込むことで、売り主も利益を最大化することができる。

消費者の視点からいえば、本来であれば、売れ残って値下げ販売されたであろう不人気物件を高値でつかまされていることになる。
事前調整された“抽選”により、売り主利益が最大化される一方で、購入者が不利益を被っているという構図。

このような消費者の不利益を回避するためにも、予告広告期間中は希望住戸要望書の受付も含めて、事前の調整禁止ルール(不動産の表示に関する公正競争規約施行規則第6条)は厳格遵守される必要がある。
マンション抽選の事前調整は、決して必要悪ではないのだ。

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(本日、マンション広告4枚)

2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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