不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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「販売戸数」の広告表示ルールは守られているのか?


納品代行物流センター跡地に建つ、超高層マンション。

銀座一丁目駅直通8分、駅徒歩12分。総戸数456戸、31階建。平成24年9月下旬竣工(本チラシ掲載日の3カ月後)。

  • 【第3期3次 予告広告】販売戸数/未定、1R(39.73m2)〜3LDK(93.77m2)。予定販売価格2,500万円台〜7,300万円台、予定最多価格帯3,900万円台(4戸)。
  • 【先着順】販売戸数20戸、1R(39.73m2)〜3LDK(117.69m2)。販売価格2,978万円〜9,988万円、最多価格帯3,900万円台(3戸)。
  • ※10年10月17日(日)、11年2月10日(木)の物件と同じ。

新聞半紙大のチラシの右下隅に、サッカー元日本代表の長身のディフェンダーのスーツ姿、上半身の写真が小さく掲載されている。


チラシ裏面の「物件概要」に目を凝らしていて、興味深い表記に気が付いた。

※表示されている価格、専有面積、バルコニー面積等の数値は、第3期3次以降の全住戸(70戸)を基礎としています。
第3期3次以降の販売戸数、価格、専有面積等は本広告におきましてお知らせいたします。

このチラシは、「第3期3次」の「予告広告」。
総戸数が456戸だから、「第3期2次」までに、385戸(=456戸−70戸)が「販売」されたことになる。
※「販売戸数」とは、「販売しようとする新築分譲マンションの住戸の戸数」のことであり、契約戸数ではない。念のため。


これまでの「販売」履歴を確認すべく、リクルート社のフリーマガジン「SUUMO新築マンション(首都圏版)」のバックナンバーをひも解いてみた。

  • 2011年2月8日号「第1章」販売戸数120戸


  • 2011年4月26日号「第1期」販売戸数20戸


  • 2011年6月21日号「第2期1次」販売戸数20戸
  • 2011年8月30日号「第2期2次」販売戸数11戸
  • 2011年11月1日号「第2期3次」販売戸数10戸


  • 2012年1月31日号「第3期」販売戸数20戸
  • 2012年2月28日号「第3期2次」販売戸数12戸

「第1章」から「第3期2次」の「販売戸数」を合計すると、213戸になる。
ところが、上述の「第3期2次」までに販売された戸数385戸と一致しない。
各期・次を単純に合計した戸数(213戸)よりも、172戸(=385戸−213戸)も多いのだ。
SUUMOの「本広告」で「第1章」から「第3期2次」で販売するとされていた合計戸数(213戸)よりも、172戸も多くの住戸が販売されているのは、なぜか?


SUUMOのバックナンバーをよく見ていくと、その理由が分かる。
2011年2月8日号の「第1章 本広告」では、販売戸数が120戸とされていた。
ところが、翌週の2月15日号の「第1期 予告広告」には、「第1期の販売戸数が未確定のため、物件データは第1期以降の全販売対象住戸(250戸)のものを表示しています」とされている。
「第1期以降の全販売対象住戸(250戸)」というのは、「第1期」に先立つ「第1章」の実際の「販売戸数」が206戸(=総戸数456戸−250戸)であったことを意味している。
つまり、SUUMO 2月8日号の「第1章 本広告」で「販売戸数120戸」と謳っておきながら、実際にはそれよりも86戸も多い206戸を販売していたのだ。


同様に、第1期では「販売戸数20戸」を謳っておきながら、実際の販売戸数は40戸(+20戸)。
第2期1次では「販売戸数20戸」に対して40戸(+20戸)、第2期2次では「販売戸数11戸」に対して20戸(+9戸)、・・・・・・。
SUUMOに掲載されていた「販売戸数」と、実際の「販売戸数」との差をグラフにすると、次のようになる。
SUUMOに掲載されていた「販売戸数」と、実際の「販売戸数」
SUUMOで表示していた「販売戸数」を超えて、販売することは許されるのか?
下記に示す不動産公正取引協議会連合会 公正競争規約研究会編『不動産広告の実務と規制(10訂版)』の相談事例(240頁)にあるように、許されていないのだ。


■Q■第1期の来場者に第2期以降の住戸を販売したい
当社では、新築分譲マンション(総戸数50戸)を3期に分けて販売し、1期として10戸を抽選方式で販売する旨の広告をするつもりです。
残りの40戸については第2期と第3期に振り分けて販売する予定ですが、万一、第1期の広告で多数の来場者があった場合は、第1期の広告で集客したモデルルームヘの来訪者のうち、希望者には第2期以降の販売予定住戸について、第1期の販売と並行して先着順で販売することも考えていますが、問題ないでしょうか。


■A■
新築分譲マンションを3期に分けて販売することは問題ありません。
しかし、抽選方式で販売するという第1期の広告で集客した顧客に対し、第2期以降の販売子定住戸を先着順で販売することは、顧客の焦りを誘発して契約に結びつけようとする「あおり広告」であると同時に表示規約第8粂(必要な表示事項)の規定上からも問題がある販売方法です。
つまり、お尋ねの場合には、第2期以降に販売を予定している40戸の住宅の面積や価格を表示しないまま集客したことになり、厳密にいえば、その40戸分について表示規約第8条の必要な表示事項を記載していないことになります

(本日、マンション広告7枚)

2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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