小島拓著『「タワマン」ブランドの崩壊』小学館(2020/12/16)
過激なタイトルにドン引き
購入するのを躊躇したのは1,320円という値段の高さだけではない。
某住宅ジャーナリストの著書かと見間違えるほどの過激なタイトルに引いてしまいそうだったからだ。
「タワマン」ブランドの崩壊
価格暴落とゴーストタウン化が始まる!
そのタワマンは今すぐ売りなさい!
湾岸のタワマン住民にとって、目を剥きそうな文言が表紙に並んでいるのである(写真)。
小島 拓という著者の名前はあまり聞いたことがなかったので、買うのを躊躇したのだが、小学館から出版されているので、まさかハズレということはないだろうと思い、アマゾンで購入。
ハズレだった。
ポジショントークが酷いのだが…
ポジショントークがあまりにも酷い。タワマンに対してどこまでも否定的なスタンス。
著者も、そのことについては「はじめに」で断りを入れている。
ここからお伝えすることは、決して耳障りの良いことではありません。むしろシビアな現実を突きつける形にはなりますが、どうか読み進めていただければと思います。本書がタワーマンションオーナーの利益に貢献することになれば、著者として望外の喜びです。
シッカリしたエビデンスに基づいた論考であればまだ救われるのだが、そのあたりが心許ない。
例えば、「第2章 価格下落が懸念される7つのリスク」では、「そもそもタワーマンションには多くの欠点があった」として、次の「7つの代表的なリスク」について解説されている。
- 維持費が高い
- 乱立で希少価値が下がり続けている
- 住民同士の合意がとりにくい
- 災害に弱い
- 相続税対策としての購入メリットが減少
- 健康を害する?
- 子育てに向かない
「リスク1 維持費が高い」として、タワーマンションの特徴がつらつら書かれているのだが、具体的なエビデンスとしては、さいたま市に建つ某タワーマンションの例が記されているだけだ。そもそもタワマンを購入しようという勝ち組や投資家にとって、維持費が高いことは気にならないのではないか。
また、「リスク4 災害に弱い」のエビデンスとしては、昨年の台風19号で水害被害を受けた川崎市中原区のタワーマンションの事例が記されているが、タワマンに限った話ではないだろう。
「リスク6 健康を害する?」のエビデンスは、伝聞に満ち溢れている。
- タワマン高層階の人ほどさらに低い気圧を感じるようです。
- 高層エレベーターを日常的に利用している人の中には、耳がつまったり塞がったりするように感じる症状に悩まされる人もいるようです。
「リスク7 子育てに向かない」では、伝聞情報をつらつら記し、最後は次のように締めくくられている。
私は専門家ではないので伝聞になりますが、調べれば調べるほどタワーマンションは子育てに向かないように感じます。
最後のページに著者プロフィールに続いて、「監修」として弁護士法人畑中鐵丸法律事務所、「監修代表」として畑中鐵丸弁護士が名を連ねているのはなぜか?
そのあたりの説明は本書には出てこなかった。記載内容のうち法律に係る部分のチェックをしているのか。湾岸タワマン民からの訴訟リスクを回避するための監修なんてことはないのか……。
以上、辛口のコメントをしてしまって著者には申し訳なかった。最後に本書の良い点についても触れておこう。
本書はポジショントークが目につくが、とても読みやすいし、ワイドショー的な面白さがある。
マンションの検討を始めようとしている人で、タワマンを選択肢に加えるかどうか迷っている人にとっては、本書のネガティブ情報は押さえておいて損はないかもしれない。
本書の構成
序章を含めて全6章。189頁。
- 序章 タワーマンション暴落Xデーが迫る
- 第1章 新型コロナが崩壊させたタワマンブランド
- 第2章 価格下落が懸念される7つのリスク
- 第3章 価格はどこまで落ちるのか?
- 第4章 既に手遅れ?居住者・投資家の嘆きの声
- 第5章 タワーマンション、低層マンション、一戸建て…不動産のこれからを読む
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