都は2月2日、民泊のガイドライン案を公表。営業日数などを規制する都独自の条例は制定しない方針。
23区や、保健所が設置されている町田市と八王子市には適用されないという、なんとも肩透かしなガイドラインなのだが、念のため内容を確認しておこう。
都、民泊のガイドライン案を公表(日経記事)
都は2月2日、民泊のガイドライン案を公表。営業日数などを規制する都独自の条例は制定しない方針。パブコメを経て、3月15日までにガイドラインを正式決定する。
都、民泊のガイドライン案 業者に立ち入り調査
東京都は2日、住宅の空き部屋に旅行者を有料で泊める民泊について、運用のガイドライン案をまとめた。違法民泊を防ぐため、業者への立ち入り調査や衛生管理などに関する研修会を定期的に実施するほか、事業開始前の住民への周知などのルールを作る。営業日数などを規制する都独自の条例は制定しない方針だ。
都は23区や、町田市と八王子市の保健所設置市を除く地域で、民泊を指導・監督する。都民へのパブリックコメント(意見公募)を15日まで実施し、業者の届け出が始まる3月15日までにガイドラインを正式決定する。(以下略)
(日経新聞2月3日)
都の民泊のガイドライン、23区は適用外
23区や、保健所設が置されている町田市と八王子市には適用されないという、なんとも肩透かしなガイドラインなのだが、念のため内容を確認しておこう。
都が2月2日付で公表した民泊ガイドライン案(住宅宿泊事業の実施運営に関するガイドライン案)には、つぎの3つの文書が添付されている。
- (別紙1)東京都における住宅宿泊事業への対応方針について
- (別紙2)東京都における住宅宿泊事業の実施運営に関するガイドライン案(概要)
- (別紙3)東京都における住宅宿泊事業の実施運営に関するガイドライン案における各規定の考え方
国のガイドラインとの違いや考え方が表形式で分かりやすく整理されている別紙3(PDF:274KB)をもとに、気になる点を整理しておこう。
(別紙3)
都独自の規定
「都独自の規定」として、気になったのは以下の3点。
法適合性確認チェックリストの作成
建築基準法などの法適合性が確認できるチェックリストの作成を民泊事業者に課している。
事業を営もうとする住宅の安全確保措置
(1)省略
(2)法第6条に定める届出住宅の安全確保に関する国土交通大臣告示との適合状況について、東京都が定めたチェックリストを作成すること
周辺住民への届出番号・届出年月日の周知
国のガイドラインにはない規定。
届出後の周辺住民等への周知
事前周知を行った周辺住民等に対し、届出番号及び届出年月日について周知すること
都の研修会を毎年受講しないと検査対象
都が開催する研修会を複数年受講していない事業者を優先して現地調査するとしている。
定期調査
東京都は、事業の適正な実施状況の確認等のため、定期的に届出住宅等の現地調査を行う。
特に、苦情が頻回発生している住宅宿泊事業者や都が開催する研修会を複数年受講していない住宅宿泊事業者等に対して、優先的に現地調査を行う。
毎年受講していないと「複数年受講していない」扱いとされるということになるのではないか。
国のガイドラインを明確化
「国のガイドラインを明確化」として、気になったのは以下の3点。
民泊住所などHPで公開
民泊事業は情報開示請求の対象となっている。
届出者の同意前提ではあるが、届出番号や所在地などがホームページで公開するとしている。
情報の取扱い
(1)省略
(2)東京都に対して事業に関する情報開示請求等があった場合に、東京都が請求者に対し、当該情報について提供する。
(3)届出者の同意に基づき、事業に関する情報(届出日、届出番号及び届出住宅の所在地)をホームページ等に公開する。
玄関やポストに標識掲示を義務化
国のガイドラインでは、標識表示は努力義務(共同住宅の場合にあっては、個別の住戸に加え、共用エントランス、集合ポストその他の公衆が認識しやすい箇所へ簡素な標識を掲示することが望ましい)であったが、都ガイドラインでは義務化。
標識の掲示
法で定める標識を届出住宅の玄関等に掲示するとともに、東京都が定めた簡易な標識を集合ポスト等に掲示すること
都主催の研修会毎年受講を義務化
都が主催する研修会に「2年を超えない期間ごと」(ようするに毎年)受講しないと、優先的に検査対象になる(前述)。
研修会の受講
住宅宿泊事業者及び住宅宿泊管理業者は、事業に関する知識の習得のため、2年を超えない期間ごとに、東京都が開催する住宅宿泊事業に関する研修会を受講すること
雑感
「オモテナシ型民泊」に取り組んでいるホストにとっては、なんとも気が重くなるような規定が付加されている。プライバシーは丸裸になるし、毎年研修会に参加しなければならないし……。「もう、やってられない!」ということにならないか。
逆にいえば、利益優先で運営されている「投資型民泊」のホストに対しては、一定の歯止めになるのかもしれない。
ただ、罰則規定が強化されたわけではないし、同ガイドラインは23区と町田市・八王子市は適用外だ。今後、各区が都ガイドラインを踏襲した区ガイドラインを独自に策定しなければ、違法民泊に対してはほどんど影響がないかもしれない。