9月27日午前、重さが3キロほどの航空機の胴体に使われるパネルの一部が茨城県稲敷市江戸崎の会社の敷地内に落ちているのが見つかった。成田空港を離着陸する航空機から落下した可能性が高いという。
9月23日午前に関西国際空港を離陸したオランダ・アムステルダム行きの旅客機から、重さ約4キロのパネルが落下し、大阪市北区で走行中の乗用車の屋根を直撃する事故が発生したばかり。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、羽田空港の国際線発着回数を増やすため、都心上空を飛行する「新飛行ルート問題」。
今回の2件のパネル落下に係る報道は、羽田新飛行ルート周辺の不動産価値に影響を及ぼすのか?
結論を先に言えば、<現状では>不動産価値にあまり影響しないだろう。
そのように考える理由を以下に示す。
マスコミの報道不足と国交省の”寝た子を起こすな作戦”
国交省は、「航空機の飛行と不動産価値の変動との間に直接的な因果関係を⾒出すことは難しい」としている。
- ※詳しくは、「羽田空港の機能強化 新飛行ルートによる不動産価値への影響は?」参照。
現状では、マスコミの報道不足と国交省の”寝た子を起こすな作戦”(存在を知らない人は辿り着くことができない羽田空港ターミナルの情報発信拠点、都庁や渋谷での実績作りのパネル展示、オープンハウス型の第4フェーズ住民説明会)が功を奏して羽田新ルートの事故・騒音等の問題が世間の共通認識になっていないので、羽田新飛行ルートが不動産価値に影響を及ぼすには至っていない。
羽田新飛行ルート直下の落下物の数は少ない!?
政府答弁書「衆議院議員長妻昭君提出航空機からの落下物に関する質問に対する答弁書」(2016年11月18日)の記載内容を分析すると、航空機からの落下物は、年間40~50件程度であることが確認できる。
しかもその落下物は、すべてが日本の土地に落ちているわけではない(海上であったり、外国の地であったり)。
したがって、羽田新飛行ルートの運用が開始されると、同ルート下での落下物は増える方向にはなるが、大した数にはならなさそうだ。
- ※詳しくは、「航空機からの落下物データを可視化してみた」参照。
羽田新飛行ルートが将来、不動産価値に影響を及ぼす
以上のように、(1)羽田新ルートの事故・騒音等の問題が世間の共通認識になっていないこと、(2)航空機からの落下物は年間40~50件程度と多くないこと、などを勘案すると現状では、茨城県や大阪市でのパネル落下報道が羽田新飛行ルート直下の不動産価値に直ちに影響を及ぼすことはないだろう。
ただ、逆に言えば、羽田新飛行ルートの事故・騒音等の問題が世間の共通認識になっていくと、不動産価値に影響を及ぼす可能性は十分考えられる。
具体的に考えられるのは2つのケース。
ひとつは、2020年に向けて羽田新飛行ルートの運用が始まり、実際に住民らが巨大な旅客機が頭上を飛ぶ状況を現認し始めたときだ。
たとえば、広尾駅(港区)の上空600mを大型機が通過(C滑走路到着ルート)する際に、地上での騒音レベルは70dBを超える(飛行ルート周辺の騒音マップを描いてみた)。南風時の午後の時間帯(15~19時)、2分おきに騒音が降り注ぐ。
実際の騒音も体験し、転居する人が増え始めると、不動産価値は下落する。
もうひとつは、新飛行ルートで落下物が発生したとき。
事故に至らなくても、「羽田新飛行ルート直下は落下物による事故に遭遇する可能性があるので危険だ」という風評によって、不動産価値が下落することが考えられる。