2020年7月の都知事選挙は小池氏の圧勝だった。
羽田新ルートは品川区民の投票率にどの程度影響を与えたのか。品川区選挙管理委員会事務局から入手した投票所別の有権者数・投票者数・投票率データを可視化分析してみた。
※他区の分析結果:港、新宿、目黒、大田、渋谷、中野、豊島、北、板橋、練馬
品川区選管から入手した都知事選挙データ(PDF:220KB)
羽田新ルート通過、19地域に及ぶ
筆者の独自調査によれば、品川区民の3割(12万人)が騒音の影響を受ける。羽田新ルートが通過する地域は、19地域に及ぶ(次図)。
- A滑走路到着ルート
大崎2丁目、大崎3丁目、大崎5丁目、勝島1丁目、勝島2丁目、上大崎2丁目、上大崎3丁目、西五反田1丁目、西五反田2丁目、西品川1丁目、西品川3丁目、東大井2丁目、東大井3丁目、東大井5丁目、東五反田5丁目、広町2丁目 - C滑走路到着ルート
東品川2丁目、八潮1丁目、八潮2丁目
町丁目別の投票率ランキング(20年)
投票所ごとのデータを町丁目ごとに集計し、20年都知事選挙の投票率を算出した。
全130地域の投票率ランキングのうち上位10地域と下位10地域を下記に示す。
※1位(北品川5丁目と5丁目)の投票所は同じ御殿山小学校なので、投票率も同じとなっている。
※6つの町丁目(広町2丁目、勝島3丁目、八潮1丁目、八潮2丁目、八潮4丁目、東八潮)は人口ゼロ。
※品川区の20年都知事選挙の平均投票率は56.21%。
- 1位:北品川5丁目(60.14%)
- 1位:北品川6丁目(60.14%)
- 3位:八潮5丁目(59.12%)
- 4位:中延3丁目(58.99%)
- 4位:西中延2丁目(58.99%)
- 4位:西中延3丁目(58.99%)
- 7位:西五反田4丁目(58.91%)
- 8位:八潮3丁目(58.82%)
- 9位:大井7丁目(58.72%)
- 10位:中延2丁目(58.53%)
- 省略(11位から112位)
- 113位:西五反田1丁目(51.38%)
- 113位:東五反田1丁目(51.38%)
- 113位:東五反田3丁目(51.38%)
- 116位:西五反田2丁目(51.16%)
- 117位:西五反田6丁目(50.90%)
- 117位:西五反田7丁目(50.90%)
- 119位:勝島1丁目(50.72%)
- 119位:勝島2丁目(50.72%)
- 119位:南大井1丁目(50.72%)
- 119位:南大井2丁目(50.72%)
- 119位:南大井3丁目(50.72%)
- 119位:南大井6丁目(50.72%)
【注記】
投票所ごとのデータを町丁目ごとに集計する際に、複数の町丁目にまたがって投票所が設定されている場合には、複数の投票所の当日有権者数と投票者数を合わせて、投票率を算出した。
たとえば、A1丁目のうち、1~8番地の住民の投票所がa小学校、9~49番地の住民の投票所がa幼稚園だった場合、A1丁目の投票率としては、2か所の投票所の当日有権者数と投票者数を合わせて、投票率を算出している。
投票率の分布図
20年:北品川5・6丁目、八潮地域の投票率が高い
20年都知事選挙につき、品川区に係る町丁目別の投票率データを地図に落としたのが次図。
A滑走路に近くて豪邸や高級マンションがある北品川5・6丁目のほか、飛行騒音に悩まされているA・C滑走路到着ルート周辺の八潮地域(品川区南東部)の投票率が高いことが分かる。
- 1位:北品川5丁目(60.14%)
- 1位:北品川6丁目(60.14%)
- 3位:八潮5丁目(59.12%)
- 4位:中延3丁目(58.99%)
- 4位:西中延2丁目(58.99%)
- 4位:西中延3丁目(58.99%)
- 7位:西五反田4丁目(58.91%)
- 8位:八潮3丁目(58.82%)
- 9位:大井7丁目(58.72%)
- 10位:中延2丁目(58.53%)
16年:北品川5・6丁目の投票率が高い
前回(16年)の品川区に係る町丁目別の投票率データを地図に落としたのが次図。
北品川5・6丁目の投票率が高かった。
- 1位:北品川5丁目(65.48%)
- 1位:北品川6丁目(65.48%)
- 3位:八潮3丁目(64.39%)
- 4位:中延3丁目(64.05%)
- 4位:西中延2丁目(64.05%)
- 4位:西中延3丁目(64.05%)
- 7位:八潮5丁目(63.83%)
- 8位:戸越4丁目(62.84%)
- 8位:豊町1丁目(62.84%)
- 8位:豊町2丁目(62.84%)
町丁目別の投票率の変化(20年-16年):全町丁目において投票率が低下
さらに、投票率の変化(前回16年との差)を地図に落としたのが次図。
全町丁目において、今回(20年)は前回(16年)よりも投票率が低下している。
- 114位:上大崎1丁目(-5.28%)
- 114位:東五反田4丁目(-5.28%)
- 114位:東五反田5丁目(-5.28%)
- 117位:大崎1丁目(-5.32%)
- 118位:北品川5丁目(-5.34%)
- 118位:北品川6丁目(-5.34%)
- 120位:東五反田2丁目(-5.46%)
- 121位:西五反田1丁目(-5.48%)
- 121位:東五反田1丁目(-5.48%)
- 121位:東五反田3丁目(-5.48%)
- 124位:八潮3丁目(-5.57%)
投票率と平均年齢との相関
投票率と平均年齢との相関を可視化したのが次図。
平均年齢が高いほど投票率が高くなるかと予想していたが、特に相関は見られなかった。
年齢よりも年収との相関があるのか……。
※平均年齢は投票権のない年齢層および外国籍も対象としている。
まとめ
投票率の地域分布からは、羽田新ルートの顕著な影響を見出すことはできなかった。
あえて言うとすれば、A滑走路に近くて豪邸や高級マンションがある北品川5・6丁目のほか、飛行騒音に悩まされているA・C滑走路到着ルート周辺の八潮地域(品川区南東部)の投票率が高いこと。
小池ゆりこ氏の得票率の地域分布であれば、羽田新ルートの影響を詳しく見出せた可能性はゼロではないが、残念ながら投票所ごとの候補者得票率データは入手していない。
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