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国交省の体質!? 国民に知らせず公表データ差し替え

最近、国土交通省が国民に知らせずに公開データを差し替えた事例2件(航空局1件、鉄道局1件)に遭遇した。

ほとんどの人は気が付いてないだろうから、紹介しておこう。


もくじ

事例1(航空局):騒音環境が改善した「好天時」のデータのみ掲載

「羽田新飛行ルート問題」が整理された本邦初の著書『マスメディアが伝えない!? 羽田新飛行ルート問題』を8月4日出版した。

出版する前に、原稿を確認していて気が付いた事例。

なぜ、「FAQ冊子」から「中野付近、埼玉県南部」の表記が消えたのか?

国交省が運営している「羽田空港のこれから」というサイトに公開されている「羽田空港のこれから~ご質問にお答えします~」という冊子(以下、「FAQ冊子」)の一部の図が以前のものと異なっているのだ。

具体的にいうと、現在の「FAQ冊子」(バージョン3.0)の着陸イラスト(P54)では高度915mを飛行する直下の騒音レベルが「約63~70db」として「新宿付近」と記されている(次図)。

バージョン3.0

ところが、以前公開されていた「FAQ冊子」(バージョン2.1)の着陸イラスト(P44)では、騒音レベルは同じなのだが、「新宿、中野付近、埼玉県南部」と記されていたのだ(次図)。

バージョン2.1

 

なぜ、17年1月11日に更新された現在のバージョン3.0から、「中野付近、埼玉県南部」の表記が消えたのか?

「FAQ冊子」の問合せ窓口(0570-001-160)に電話照会してみた。

電話照会(1日目)

※以下、主なやり取りのみ。

  • 当方:「羽田空港のこれから」のバージョン3.0のP54の着陸イラストには「新宿付近」と記載されています。以前のバージョン2.1では、「新宿、中野付近、埼玉県南部」と記載されていました。
    バージョン3.0では「中野付近、埼玉県南部」が消えています。変更された理由は何でしょうか?
  • 相手:そういう内容ですと、国交省に確認しないと回答できません

  • 当方:確認にどれくらい時間がかかりますか?
  • 相手:明日になります。
  • 当方:それでは明日、こちらから改めて電話いたします。どちら様に電話すればいいでしょうか?
  • 相手:私は〇〇ですが、誰が電話に出ても分かるようにしておきます。
  • 当方:そうですか。それではよろしくお願いいたします。

ということで、翌日電話してみた。

電話照会(2日目)

※以下、主なやり取りのみ。

  • 相手:飛行経路の見直しに伴い、好天時と悪天時でルートが変更になりました。混乱しないようイラストでは好天時のケースを掲載することにしました。その結果、新宿だけの表記になっています。
    好天時は飛行高度が引き上げられましたので、「中野付近、埼玉県南部」の騒音データは変わります。混乱しないように、好天時でそろえています。
  •  当方:なぜ、好天時にそろえたのでしょうか?
    中野に住んでいる人にすれば、中野の表記がなくなったことで、かえって混乱するのではないでしょうか?
  • 相手:悪天時の場合をカッコ書きするとかすればよかったのかもしれません。貴重なご意見として今後の検討の参考にさせていただきます。

  •  当方:好天時ではなく、悪天時でそろえれば、図を変更する必要はなかったのではないでしょうか。
  • 相手:貴重なご意見として今後の検討の参考に・・・

  • 当方:ちょっ、ちょっと待ってください。バージョン3.0の図はむしろ正確さを欠いているのではないでしょうか。「好天時の場合」と注記するか、カッコ書きで悪天時の情報を残すという方法もあるのではないでしょうか。
  •  相手:貴重なご意見として今後の検討の参考にさせていただきます。

上記のやり取りは分かりにくいかもしれないので、「以前の計画案」と飛行経路の一部を見直した「現在の計画案」との違い、「FAQ冊子」への掲載範囲を表に整理しておいた(次表)。

国交省の立場からすれば、一部経路の変更(飛行高度の引き上げ)により、騒音環境が改善した「好天時」のデータのみを掲載したかったのかもしれない。

でも、住民の立場からすれば、バージョン3.0(現在の計画案)においても、より厳しい「悪天時」の情報を掲載すべきではないのか。

「FAQ冊子」への掲載範囲

変更履歴を残すなど「丁寧な説明」を!

発信する情報は少ないほうが、波風が立たないのかもしれない。

問い合わせてきた人たちには「貴重なご意見として・・・」という低姿勢な紋切り型の言葉で丸く収めるよう、国交省から指導されているのだろうか。

まあ、バージョン3.0と2.1の違いになど気が付く人なんていないのだろう。
そもそもバージョンが変わったことさえ知る人は多くはないだろう。少なくとも「FAQ冊子」の末尾にでも、変更履歴を残すなど「丁寧な説明」を期待したい。

事例2(鉄道局):ひっそりと「混雑率データ」を更新

いつの間にか「混雑率データ」が更新されていた

国土交通省 都市鉄道政策課は毎年1回、鉄道の混雑率のデータを公表している(次図)。

ところが公表時期がいつなのかは、どこにも記されていない。

混雑率のデータを公表

 

昨年7月27日に投稿したブログ記事「全国エリア別!通勤電車の混雑率ランキング(平成27年度」をそろそろ更新する必要があるのかなと思って、同記事中の「平成27年度の混雑率データ(PDF:150KB)」をクリックしたところ、同じURLであるにも拘らず、「平成27年度の混雑率データ」ではなく、「平成28年度の混雑率データ」が表示されたのだ。

同記事を更新するにあたって、データ元の都市鉄道政策課に、なぜ公表日時を曖昧にしているのかなど電話照会してみた。

電話照会

※以下、主なやり取りのみ。

  • 当方:混雑率データは「年1回」公表されるようになっていますが、具体的な公表日はいつなのでしょうか?
  • 相手:例年7月下旬です。今回の公表日は7月25日です。

  • 当方:ホームページのどこを探しても、公表日が見当たりませんでした。公表日を明確にしていない理由は何でしょうか? また、公表した際に新着情報に掲載していないのはなぜでしょうか?
  • 相手:特に理由はありません。淡々と更新しているだけです。
「PKOの日報」じゃないのだから、過去データも残すべき

公表日を曖昧にしておきたい気持ちもわからなくはないが、データを黙って差し替えちゃいかんぜよ。

しかも「平成27年度の混雑率データ」は、どこにも残されていないし。「PKOの日報」じゃないのだからキチンと過去データにもアクセスできるように残しておいてほしいものである。

で、「平成28年度の混雑率データ」を元に書いたのが次の記事。

 

長文になったので、以下にまとめておこう。

まとめ

国土交通省が国民に知らせずに公開資料を差し替えた事例2件は以下のとおりである。

事例1(航空局)

  • 国交省は、羽田新飛行ルート計画案を国民に広く周知する目的で、「羽田空港のこれから」というサイトを運用している。同サイトで公開されている「FAQ冊子」の騒音情報がいつの間にか、国交省にとって都合のいい情報に変更されている。少なくとも「FAQ冊子」の末尾に、変更履歴を残すなど「丁寧な説明」を期待したい。

事例2(鉄道局)

  • 国土交通省 都市鉄道政策課は毎年1回、鉄道の混雑率のデータを公表している。ところが、公表時期がいつなのかは、どこにも記されていない。その結果、いつの間にか新年度のデータに差し替えられているという状況にある。「PKOの日報」じゃないのだからキチンと過去データにもアクセスできるように残しておいてほしいものである。
2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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