新国立競技場の建設現場で23歳の現場監督が過労自殺した問題。
建設現場ではどの程度人手が不足しているのか?
関東地域の職人不足は15年11月以降改善している
ひところ叫ばれていた建設現場の職人不足は最近、どの程度の状況にあるのか確認してみよう。
関東地域の「建設技能労働者過不足率」は、東日本大震災が発生した2011年の復興需要により急上昇し、11年9月にピーク(4.9%)となった。その後不足率は15年8月まで2%程度を中心に推移。
ところが、15年11月に不足率が初めて▲0.3%を記録した後(つまり職人が余っている状況)、現在まで1%以下の低水準で推移している(次図)。
この2年ほど、関東地域では現場の職人は、以前ほど不足していない状況にあるようだ。
※【参考メモ】過不足率は、建設業法上の許可を受けた法人企業(資本金300万円以上)で、調査対象職種の労働者を直用する建設業者のうち約3,000社を対象とし、次式により算出されている(「建設労働需給調査」より)。
- 過不足率=[(確保したかったが出来なかった労働者数-確保したが過剰となった労働者数 )÷(確保している労働者数+確保したかったが出来なかった労働者数)]×100
工事を監督する立場の建築技術者は減少傾向
ただ、今回過労死したような、工事を監督する立場の建築技術者は減少傾向にある。今後増加する見通しはない。33歳(一級建築士の合格者の平均年齢)の人口当たりの一級建築士受験者数の割合が減少しているからだ。
「建築費指数(東京、RC造・集合住宅)」は高い水準を維持
ついでに、東京の建築費関連指数(RC造・集合住宅)の推移も確認しておこう。
冒頭の「労務費の関連指数の推移」グラフに、「建設資材物価指数(東京)」と「建築費指数(東京、RC造・集合住宅)」を重ねたのが次のグラフ。
ザックリ言えば、この2年ほどで「建設技能労働者過不足率」はかなり改善されてきたが、「建設資材物価指数」は高い水準が続いている。その結果、「建築費指数(東京、RC造・集合住宅)」も高い水準を維持している。
なお、各データには、次の資料を使用した。
- 建設技能労働者過不足率(関東):「建設労働需給調査(国土交通省)」のうち、建設技能労働者過不足率の推移(8職種計・関東)
- 建設資材物価指数(東京):「資材物価指数(建設物価調査会)」のうち、建築部門(東京)
- 建築費指数(東京):「建築費指数(建設物価調査会)」のうち、東京・RC造・集合住宅の工事原価
※若くしてお亡くなりになられた方のご冥福を心からお祈りするとともに、ご遺族の皆様にお悔やみ申し上げます。
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