不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

首都圏を中心に、マンション選びのためのお役立ち情報を提供しています


ノイズシェアリングの時代!? 騒音を地域で公平負担

関西空港調査会が17年5月付で取りまとめた『航空需要に対応した空港運用研究会報告書』(主査:平田輝満 茨城大学工学部准教授)。

もともとは、今後の関西における空港の諸問題を念頭にした研究会の報告書なのだが、羽田新飛行ルート問題の参考となりそうな記述も多くみられる。


もくじ

『航空需要に対応した空港運用研究会報告書』構成など

関西空港調査会のホームページに掲載されている『航空需要に対応した空港運用研究会報告書』(17年5月)(本文:PDF1.7MB、資料編1:PDF40MB、資料編2:45MB)になかなか興味深い記述がみられる。

航空需要に対応した空港運用研究会報告書

3章構成、本文25頁、資料編184頁。

第1章 研究会の概要
第2章 研究会報告の概要
第3章 まとめ
(1)航空機の小型化と航空需要の増大
(2)次世代の航空交通システムと空港運用
(3)国内外の混雑空港の動向と周辺住民への説明
(4)今後に向けて
資料編

同報告書は「近年における航空需要増加に対応した空港運用方策について国内外の空港の事例から、空港周辺地域の環境に配慮した運用方法の考え方・メニューなどを研究することを目的」として、15~16年度に5回開催された研究会の成果がとりまとめられたもの。

平田輝満茨城大学工学部准教授(06年から13年の運輸政策研究所に在籍。首都圏空港機能強化に関する動向、次世代の管制システムなどの新しい情報にも精通)の講演がベースとなっている。

 

以下、抜粋して紹介しよう。

諸外国では当たり前の戦略的環境アセスができていない!?

平田准教授が指摘している「ほとんど計画が固まり・・・市民の意見を最大限取り入れて、より良い案をともに検討しようという形になりづらい」という状況はまさに羽田新飛行ルートに当てはまるのではないか。

羽田空港の運用方法と騒音影響に関する考察(私案)と環境影響評価制度について

(略)戦略的環境アセスは諸外国では当たり前になっている。日本でも平成14年くらいから埼玉県が率先してやっている。従来の事業アセスでは、事業計画段階で、どこに路線を引くか、空港の滑走路をどうデザインするかといった段階で環境アセスを行うので、ほとんど計画が固まり環境の影響があるとわかったときは、それを低減するために取りうる措置が限られてしまう。行政もある程度固まった案の段階であると、どうしてもその案を守る姿勢になり、市民の意見を最大限取り入れて、より良い案をともに検討しようという形になりづらい。そうすると市民と闘うことになって、計画が進まないということも考えられる。(略)

(本文 P8~9)

海外ではノイズシェアリングの時代!騒音を全地域で公平負担

ヒースロー空港やシドニー空港では、「騒音が受容できるか?」ということから、「本当に公平なのか?」という点に住民の関心が移ってきているという。

シドニー空港におけるNoise Sharing~飛行経路の分散

(より公平に騒音を負担するということをヒースロー空港でも言い始められた)その最先端をいくのがシドニーです。1990 年前半に第3 滑走路を作る時に騒音が社会問題化しました。この時の反省を踏まえて、騒音を全地域に公平に負担する方式に切り替えました。そのために滑走路の運用方式をたくさん持っています。処理能力は落ちますが、ノイズをシェアするための運用方式を可能な限り持っているという、かなり珍しい空港です。

航空機騒音に関する近年の評価例

ノイズシェアリングと呼ばれる環境正義のコンセプトというのは、非常に広く受け入れられるようになってきました。騒音に関しては、今まで「騒音が受容できるか?」ということでしたが、そういう問いではなく、「本当に公平なのか?」という点に住民の関心が移ってきていることが言われてきています。

(資料編1 P39)

NY空域再編に約9 年!日本の空域再編は1 年くらい

NY空域再編では、アメリカ連邦航空局の職員が出向いて、非常に広域で何回もオープンハウスのような説明会を開き約9年を費やしたという。

 NY 空域再編の計画プロセスと計画決定

(略)この(NY)空域再編に約9 年かけています。日本の空域再編は1 年くらいで終わります。日本は環境影響評価法の中で、空域再編では環境影響評価をしなくてもいいことになっています。

FAA つまりアメリカ連邦航空局の職員が出向いて非常に広域で何回もオープンハウスのような説明会を開き、パネルを用意して住民1 人1 人と意見交換することを地道に続けました。こういうのも法律にやれと書いてあります。最終決定案に決定後、特に騒音が悪化する地域から数多くの訴訟が起きましたが、原告側の訴えは棄却されています。

(資料編1 P96)

 あわせて読みたい

2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
Copyright(C)マンション・チラシの定点観測. All rights reserved.