「午後3時から7までの時間帯で羽田発着便を増やしても、乗り継ぎ客が増えるだけで、日本への観光客の増加などによる経済効果はほとんど期待できない」という共産党の指摘は正しいのか?
増便しても乗り継ぎ客が増えるだけ(共産党の指摘)
江東区議会第2回定例会の一般質問(6月14日)に立った共産党のそえや良夫議員(5期)。増便による観光客の増加は期待できないという趣旨の発言が気になった。
午後3時から7までの時間帯で羽田発着便を増やしても、乗り継ぎ客が増えるだけで、日本への観光客の増加などによる経済効果はほとんど期待できません。
航空会社の利益のために住民の安全を犠牲にする、新飛行ルートの撤回を国に求めるべきです。
午後3時から7時の時間帯は、アジア便と北米便が集中する時間帯なので、同時間帯で増便しても乗り継ぎ客が増えるだけだという指摘。
同様の発言は今年の4月3日、国会参議院「国土交通委員会」において山添拓参議院議員(共産)にもみられた(羽田新ルート|参院「国土交通委員会」質疑全文-誰のための機能強化なのか?)。
もし「増便しても乗り継ぎ客が増えるだけ」という共産党の指摘が正しければ、国交省が掲げる「訪日外国人の増加⇒増便」というロジックが成立しない。大問題ではないか。
首都圏の国際競争力の強化、訪日外国人旅行者のさらなる増加、国内各地への経済効果の波及等の観点から、空港処理能力の拡大を含めた首都圏空港の更なる機能強化を図る必要がある。
「首都圏空港機能強化技術検討小委員会の中間取りまとめ 本文」P5より
共産党の指摘(推論)は正しいのか?
国土交通省航空局が毎年公表している「空港管理状況調書」の最新版(平成28年空港管理状況調書(PDF:699KB))に、東京国際空港(羽田空港)の国際線の月別乗降客数(乗客、降客、通過客)のデータが掲載されている(次表)。
同データを可視化したのが次のグラフだ。
月別の乗客・降客数がともに60~70万人程度であるのに対して、通過客数は1.7~2万人程度。羽田空港の国際線利用者数に占める通過客数の割合は0.6~1.3%でしかない。
国際線利用者数に占める通過客数の割合が2%にも届いていない現状を鑑みると、「増便しても乗り継ぎ客が増えるだけ」という共産党の指摘(推論)には無理があるのではないか。
日本では政策決定に関わる定量評価につき、与野党とも弱い…
日本では政策決定に関わる定量評価につき、極めていい加減な状況が露見している。獣医師需要予測しかり、高プロ・アンケートしかり、受動喫煙問題のエビデンスしかり。
彼の国ではエビデンスに基づいて政策決定されるという(トランプ政権になってからは疑わしいところもあるが……)。
たとえば、喫煙規制の厳しいサンタフェ州(介入群)と緩いブエノスアイレス市(対照群)を比較分析した結果、受動喫煙を強いられていた人々の健康状態が改善したことが確認された。さらに喫煙の規制強化はレストランやバーなどの売上に影響を与えないことが明らかになったという。
※詳しくは、「データ氾濫時代に必読!『「原因と結果」の経済学』」参照。