不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

首都圏を中心に、マンション選びのためのお役立ち情報を提供しています


ねつ造!? 熊本地震の益城町臨時観測点データ

熊本地震の益城町臨時観測点データに「不自然な点がある」との指摘が外部からあり、大阪大などが事実関係の調査を始めたという。


もくじ

阪大「捏造かも含め調査」

観測データに「不自然な点がある」との指摘が外部からあり、大阪大などが事実関係の調査を始めたという。

熊本地震のデータ「不自然」 阪大「捏造かも含め調査」

昨年4月の熊本地震について大阪大と京都大、産業技術総合研究所の研究チームが公表した観測データに「不自然な点がある」との指摘が外部からあり、大阪大などが事実関係の調査を始めた。(中略)
研究チームは昨年4月14日の熊本地震の前震後、益城町に臨時の地震計を設置して地震波の観測を始めた。直後に本震があり、計測震度6.9を記録したとして昨夏に論文を発表した。また、ほかの研究者が自由に研究に利用できるように、ネット上でデータの公開を続けていた。
9月下旬までに、第三者から「他の記録と比較して不自然ではないか」などの指摘があったという。(以下略)

(朝日新聞 10月2日)

京大 後藤准教授の「お詫び」

問題となった論文執筆者3名のうちの1人、京都大学防災研究所の後藤浩之准教授が9月28日付でホームページに、下記のお詫び文書を掲載している。

益城町本震記録に関するお詫び

この度は皆様に多大なるご迷惑をお掛けしましたことお詫び申し上げます.

2016年に公開されました共著論文(Hata et al.,2016)につきまして,匿名の方より益城町にて観測されたとするデータに関する資料提供が2017年 9月25日にありました.指摘を受け,観測記録とされるデータを改めて精査 したところ,提供された資料に記載の事実に誤りがないこと,すなわちデー タに重要な問題があることを確認いたしました.
(中略)
なお事実関係を含め,公的な手続きを現在進めております.本件に関して動きがありましたら報告致します.
この度は誠に申し訳ございませんでした.

2017年9月28日
京都大学 防災研究所
後藤浩之

産総研 主任研究員の「反省」

問題となった論文執筆者3名のうちのもうひとり、産業技術総合研究所の吉見雅行主任研究員は9月29日付でホームページに、「共著者として公開データの不自然さに気づかなったことを大いに反省」している旨を公表している。

2016年熊本地震の益城町臨時観測点における本震記録について

2016年熊本地震の益城町臨時観測点における本震記録に関し、2017年9月25日に土木学会地震工学委員会委員長を通じ、第三者からの匿名の情報提供を受けました。これを承け、これまで熊本地震本震の益城町における臨時観測点での観測記録として公開していたデータすべての成分について解析した結果、非常に不自然なものであると認識しました。現在のところ、このデータに関する事実関係の解明に真摯に対応しているところです。(中略)
今回の情報提供に至るまで、データ公開の共著者として公開データの不自然さに気づかなったことを大いに反省しております。(以下略)

2017年9月29日
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門
吉見雅行

疑惑のポイント

京大の後藤准教授も産総研主任研究員も他人事のような反省文を掲載しているのは、論文の共著者である(筆頭著者ではない)というスタンスだからなのであろう。

問題の論文の筆頭著者は、大阪大学の秦吉弥准教授(17年4月1日で准教授になったばかり)。

問題になるようなことは何もしていない」と話しているという。

益城町に臨時の地震計を設置した大阪大学の研究者は、NHKの取材に対し「問題になるようなことは何もしていない」と話しています。

(「熊本地震 大阪大などの発表データに不自然な点 文科省が調査」NHKニュース10月2日)

 

データが不自然だとか、捏造だとか騒がれているが、疑惑が持たれているのは主に次の2点。

  • 益城町臨時観測点の地震計の記録とされるデータは、防災科学研究所の別の計測データを元に捏造したのではないのか
  • そもそも、益城町臨時観測点の地震計で本当に観測できていたのか

文科省が事実関係の調査を始めたので(林文科大臣 記者会 10月3日)、その結果が待たれる。

益城町臨時観測点のデータを用いた分析・研究は、すでに多くの研究者らによって進められている。「データが正しくなかった」ということになると、それらの研究は無駄になってしまう。

日本建築学会近畿支部が11月6日に開催予定のシンポジウムのタイトルは「大振幅地震動に対する設計と地震対策の最新動向」。熊本地震で観測されたパルス性の大振幅地震動も次のように発表が予定されている。

  •  2016年熊本地震断層近傍地震動のパルス特性と応答特性  亀井 功(亀井構造設計事務所)
  •  大振幅地震動に対する超高層建物の応答  杉野未奈(京都大学)
  •  大振幅地震動を対象とた鋼架構における変形能力向上手法の提案  多賀謙蔵(神戸大学)

発表予定の3名は、どうされるのだろうか……。

タワマン住人は安堵?

地震データが捏造だったということになると、タワマン住人はホットされるのではないだろうか。

残念ながら、捏造疑惑のデータは益城町臨時観測点のものであって、NHKスペシャル「新たな脅威 “長周期パルス”の衝撃」で、工学院大学の久田嘉章教授が「本当に条件が悪いと、倒壊する可能性はゼロではなかった」という衝撃的なコメントは、西原村の観測データによるもの。だから“長周期パルス”のリスクは消えていない。

ただ、“長周期パルス”がなかったことになっても、「長周期地震動」がタワマンの資産価値に与える影響問題のほうはなくなったわけではない。

(追記)阪大、調査結果を公表

阪大は19年3月15日、熊本地震データ捏造につき、元准教授の単独で行われたと発表。

※詳しくは、「熊本地震データ捏造|阪大元准教授の死因非公開」参照。

あわせて読みたい

2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
Copyright(C)マンション・チラシの定点観測. All rights reserved.