全日空では、違法民泊が混在するAirbnbとの提携につき、 社内でコンプライアンス(法令遵守)が議論にならなかったのか……。
空の安心は最優先でも、「新しい国内旅行市場の開拓を目指して」、宿泊先の安心に無頓着であってはならないのでは。
全日空・Airbnb提携の違和感
全日本空輸(ANA)と格安航空会社(LCC)のピーチ・アビエーションは11月6日、民泊仲介サイト世界最大手Airbnbジャパンと国内旅行市場の開拓に向けた協業を開始したと発表。
全日空とピーチ、民泊世界最大手と提携 国内旅行市場を開拓
全日本空輸(ANA)と格安航空会社(LCC)のピーチ・アビエーションは6日、民泊仲介サイト世界最大手Airbnb(エアビーアンドビー)ジャパンと国内旅行市場の開拓に向けた協業を開始したと発表した。
航空2社は訪日客の増加やSNSの普及拡大に伴い、日本人の個人旅行も多様化しているとし、今回の協業で、国内旅行の需要喚起につなげる狙いだ。(以下略)
(SankeiBiz 11月7日)
今年に入って、日本航空(4月)や南海電鉄(11月)が、宿泊仲介サイトを運営している百戦錬磨社と連携している。百戦錬磨社が扱っている物件はすべて合法民泊。
一方、国内でAirbnbに登録されている5万件を超える物件の多くは無届民泊(=違法民泊)である。全日空では、違法民泊が混在するAirbnbとの提携につき、 社内でコンプライアンス(法令遵守)が議論にならなかったのか……。
全日空が違法民泊を扱っているAirbnbと提携したことは、かなり違和感がある。どのくらい違和感があるのか、たとえ話を交えてみよう。
デパートは盗品を承知で仕入れない
デーパートは、盗品が含まれていることを承知のうえで、仕入れることは決してしないだろう。もし、盗品が含まれていることを承知のうえで仕入れて、販売したとすれば盗品等関与罪にあたるのではないか。
全日空が、違法民泊が混在しているのを承知のうえで、民泊サービスを提供しているAirbnbと協業する行為は何らかの法律に抵触しないのか。
ちなみに、違法民泊を取り扱っているAirbnbがお咎めを受けていない理屈は、Airbnb日本法人代表取締役 田邉泰之氏の次のコメントに見て取れる。
京都市が、運営拠点のあるアイルランドに問い合わせをしていることについて? 細かいことはわかりません。私たち日本法人はマーケティング代行で市場調査が役目です。回答はアイルランドからになるのだと思います。
(朝日新聞 朝刊 16年8月4日)
つまり、Airbnb日本法人は、市場調査を目的としたマーケティング代行者なので、国内法に抵触していないという理屈だ。
※詳しくは、「米Airbnb日本法人はマーケティング代行者なので、細かいことは分からない!? 」参照。
空の安心は最優先でも、宿泊先の安心に無頓着…
では、盗品と合法品の両方を扱っている業者から、合法品だけを仕入れるのであればどうか?
たとえ、盗品を除いて合法品のみを仕入れることが可能な相手であっても、信用を重んじるデパートであれば、決して取引には応じないだろう。
では、Airbnbが合法民泊のみを全日空に提供すると確約すれば、全日空は協業に応じていいのか?(ANAの11月6日のプレスリースからはそのような約束事は読み取れないが)
実際のところ、全日空が11月6日に開設した、マイレージ会員向けの特設サイト『ANA|Airbnb暮らすように旅しよう♪キャンペーン』には、Airbnbのサイトがぶら下がっている。特に合法民泊だけが提供されているということにはなっていない。
ANAグループの経営理念は、「安心と信頼」がキーワード。
安心と信頼を基礎に、世界をつなぐ心の翼で 夢にあふれる未来に貢献します
空の安心は最優先でも、「新しい国内旅行市場の開拓を目指して」(同プレスリース)、宿泊先の安心に無頓着であってはならないのでは。