第219回臨時国会(25年10月21日~12月17日)の参議院の質問主意書のなかに、6番目としてマンション管理に係る次の質問主意書が埋もれている。
塩村あやか 参議院議員(立憲民主)が10月21日に提出した質問主意書に対する政府答弁書が公開されたのでひも解いてみた。
読みやすいように、一問一答形式に再構成。
※時間のない方は、「質疑応答のポイント」と文末の「雑感」をお読みいただければと。
- 塩村あやか 参議院議員(立憲民主)
- 雑感:「周知徹底」で危機は防げるのか
塩村あやか 参議院議員(立憲民主)

(参議院 決算委員会 25年6月9日 動画より)
塩村あやか 参議院議員(当選回数2回、立憲民主党、元グラビアアイドル、共立女子短大卒、47歳)
我が国では、分譲マンションのストック数が令和6年末で約710万戸に上るなど、マンションは国民の1割以上が選択する重要な居住形態となっている。
一方、築40年以上のマンションについては、令和6年末現在で約148万戸存在し、20年後には約3.3倍に増加することが見込まれているほか、70歳以上の世帯主割合が約55%となる「二つの老い」、すなわち、マンションと居住者の双方における高齢化が進行している。
老朽化したマンションが適切に管理・再生されないまま放置されると、外壁等の剥落などにより居住者や近隣住民の生命・身体に危害が生じるとともに、周辺の住環境や都市環境が悪化するなど深刻な問題を引き起こす可能性があるため、マンションの管理・再生の円滑化等を図ることが必要となっている。
こうした状況を踏まえて、建物の区分所有等に関する法律(昭和37年法律69号。以下「区分所有法」という。)、マンションの建替え等の円滑化に関する法律(平成14年法律78号)、マンションの管理の適正化の推進に関する法律(平成12年法律149号)等を改正する「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和7年法律47号。以下「改正法」という。)が令和7年5月に成立した。
しかし、マンションの適正管理について、更に検討すべき課題が残されていると考える。
問1(老朽化マンションの実態と対策)
改正法により、老朽化したマンションの建替え等に必要な決議の要件が緩和された一方、区分所有者の経済的負担は変わらないため、改正法の施行だけではマンションの建替え等が進むとは限らない。また、資力に乏しい高齢の居住者の中には修繕や建替えの意欲が低い者もいるほか、転売目的の購入や外国人による購入も増えている。
将来的に、こうしたマンションは管理不全に陥り、廃墟化する可能性が高いと考える。改正法では、外壁剥落等の危険な状態にあるマンションへの勧告など地方公共団体の権限強化が措置されているが、管理不全に陥る前に建物の適切な管理を促し、長寿命化を図ることが重要である。
問1-1:建替え等が困難となるマンション、実態調査等?
廃墟化し、建替え等が困難となるマンションが将来増えていくことは明らかと考えるが、政府として、このような傾向について把握するための実態調査等を行っているか示されたい。
答1-1:「マンション総合調査」を5年に一度実施
国土交通省においては、無作為に抽出した全国の管理組合(マンションの管理の適正化の推進に関する法律(平成12年法律149号)第2条第3号に規定する管理組合をいう。以下同じ。)及びマンションに居住する区分所有者(建物の区分所有等に関する法律(昭和27年法律69号。以下「区分所有法」という。)第2条第2項に規定する区分所有者をいう。以下同じ。)を対象とした「マンション総合調査」を5年に一度実施し、当該調査において「空室戸数(3ヶ月以上)割合」、「空室のうち、所有者が不明・未連絡の戸数割合」、「総会の開催状況」、「管理規約の有無」等の項目を調査し、マンションの居住や管理の状況等について把握している。
問1-2:20年、30年先を見据えた抜本的対策を講ずるべき
廃墟化を未然に防ぐためにも、マンションの適正管理に関し、その重要性を周知徹底するほか、20年、30年先を見据えた抜本的対策を講ずるべきと考えるが、政府の今後の方針を具体的に示されたい。
答1-2、3:マンションの管理の適正化の推進、図っているところ
※後述(答1-2、3)参照。
問2(管理適正化の主体と協力)
今後、高経年のマンションが増加していくことが見込まれる中で、その管理が適切に行われるためには、管理組合及び区分所有者が、マンションの管理に常に関心を持ち、責任を持って携わっていくことが必要である。
問2-1:賃貸人と賃借人、マンション管理適正化に取り組む必要
管理組合を機能させるために、分譲マンションの一部住戸を賃貸物件として貸し出している場合でも、賃貸人は主体的にマンション管理に取り組むとともに、賃借人も管理組合の活動に参加することにより、賃貸人と賃借人が共にマンションの管理適正化に取り組むことが必要であり、政府もそれを促すべきと考えるが、政府の見解と具体的な対策を示されたい。
答2-1:マンション標準管理規約等の周知徹底に努めてまいりたい
管理組合はマンションの区分所有者で構成される団体又は法人であることから、その活動は、当該区分所有者において主体的に行われるべきものである。
また、区分所有者に対しては、管理組合によるマンションの管理規約の制定又は変更の際に参考として利用されることを目的として国土交通省が策定しているマンション標準管理規約において、「管理組合の構成員として相互に協力」すると明記している。
お尋ねの「賃借人」については区分所有者には含まれないものの、マンション標準管理規約において、区分所有者がその専有部分を第三者に貸与する場合には、当該第三者に、マンションの管理又は使用に関する事項等について定めた規約等を遵守させなければならないとしている。
政府としては、管理組合及び当該第三者がそれぞれの立場から相互に協力し、マンションの管理が適正かつ円滑に行われるよう、マンション標準管理規約等の周知徹底に努めてまいりたい。
問2-2:区分所有者の相互協力義務、国民の意識変容を図るべき
改正法により、区分所有法に区分所有建物の管理に関する区分所有者の相互協力義務が明記されたが、マンションの適正管理は区分所有者の責務であることを政府が広く周知徹底し、国民の意識変容を図るべきであると考える。
説明会やセミナーの開催回数等の数値目標を設定した上で取組を推進するべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
答2-2:区分所有者の責務等の周知徹底に努めてまいりたい
マンションの管理が当該マンションの区分所有者において適正かつ円滑に行われることは重要であると考えており、令和7年内に改正法の内容に関する説明会を全ての都道府県で開催することとし、現在、順次実施しているところである。
また、マンションの管理に関するシンポジウムについては毎年度開催しているところである。政府としては、今後も引き続き、関係者のニーズを踏まえつつ説明会等を実施することにより、区分所有者の責務等の周知徹底に努めてまいりたい。
問3:適正管理への取組が困難なマンション、政府の具体的な対策
管理計画認定制度を活用するなど管理に積極的なマンションがある一方、消極的なマンションもあり、今後、マンション管理の水準が二極化することを懸念している。
区分所有者がマンション管理に消極的な要因としては、管理意識の低さのほか、居住者の高齢化の進行、行政の関与への拒否感などが考えられるが、管理不全状態になってしまったマンションを再生することは容易ではなく、地方公共団体が公費で支援することにも限界がある。
適正管理への主体的な取組が困難なマンションへの対応を充実させるべきと考えるが、政府の具体的な対策を示されたい。
答3:マンションの管理の適正化の推進、図っているところ
お尋ねの「20年、30年先を見据えた抜本的対策」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、マンションの管理の適正化については、マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針(令和3年国土交通省告示第1286号)にあるように、「管理組合、国、地方公共団体、マンション管理士、マンション管理業者その他の関係者は、それぞれの役割を認識するとともに、効果的にマンションの管理の適正化及びその推進を図るため、相互に連携して取組を進める必要がある」との考え方の下、その推進を図っているところである。
また、第217回国会において成立した老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律(令和7年法律47号。以下「改正法」という。)においては、管理組合の管理者等に対する都道府県知事等による報告徴収等の規定が設けられるとともに、都道府県知事等の請求により区分所有者が不明である専有部分(区分所有法第2条第3項に規定する専有部分をいう。)等を裁判所が選任する管理人に管理させることができる制度が創設されるなど、マンションの管理の適正化を図るための措置が講じられたところであり、政府としては、まずは、当該措置の周知徹底を図るとともにその推進に努めてまいりたい。
問4:専門家を派遣して助言する制度、支援を強化・拡充するべき
マンション設備の高度化や区分所有者の多様化・高齢化等を背景に、マンション管理を外部の管理会社に委託する管理組合が増えているが、管理組合が管理会社の言いなりになっている場合がある。
改正法では、区分所有者への一定の説明・報告を管理会社に対して義務付けているが、区分所有者側に専門的な知識がなければ説明・報告を理解することは難しい。
管理組合にマンション管理士などの専門家を派遣して助言する制度を設けている地方公共団体もあるが、これはマンション管理の適正化や管理組合の自立を促すには大変有意義な制度と考える。
政府としても、このような制度を積極的に周知して利用を促進するとともに、地方公共団体への支援を強化・拡充するべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
答4:専門家派遣等の取組を支援しているところである
マンションの管理の適正化を図るためには、マンション管理士等の専門家を積極的に活用することが有効であると考えている。
改正法においては、管理組合等に対し必要な援助等を行う民間団体をマンション管理適正化支援法人として登録することができる制度が創設されるとともに、都道府県知事等による専門家のあっせん等の措置が規定されたところであり、また、令和7年度当初予算において措置された「マンション総合対策モデル事業」において、地方公共団体が行うマンションの管理状況等の実態調査や管理組合の合意形成のための専門家派遣等の取組を支援しているところである。
政府としては、引き続きこれらの施策を通じて、地方公共団体の支援に努めてまいりたい。
雑感:「周知徹底」で危機は防げるのか
答弁書を一読して感じるのは、「現状追認」と「周知徹底」の繰り返しである。
老朽マンションの危機は20年先の話ではなく、すでに都市のあちこちで始まっている現実だ。にもかかわらず、政府の言葉は他人事めいていないか。
問う側が「抜本的対策」を求めても、「周知」「推進」「努めてまいりたい」との常套句でかわしていないか。制度は整ったが、動かす意思が見えない。
空き家問題の轍を踏むように、マンションもまた“静かな崩壊”を迎えてしまうのか……。
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