朝日新聞社は2025年3月期の連結決算を5月30日に発表した。
表向きは「2期連続の増収」。だが、有価証券報告書を読み解くと、新聞社の内実は、別の姿を浮かび上がらせる。
新聞が売れない時代──。読者離れ、広告収入の減少、社員の高齢化、給与の減少。不動産事業による黒字が、新聞出版の赤字を埋める構造が定着している。
朝日新聞は今、何に支えられ、どこに向かおうとしているのか。
その実態を、「有価証券報告書-第172期(2024/04/01‐2025/03/31)」から探っていく。
朝日新聞社、3月期決算 2期連続の増収(朝日記事)
朝日新聞は5月30日、25年3月期連結決算で「2期連続の増収」であったことを自ら報じている。
朝日新聞社、3月期決算 2期連続の増収
朝日新聞社が29日発表した2025年3月期連結決算は、売上高が前年比3.3%増の2780億6800万円、営業利益が同2.8%減の56億1900万円だった。
全株式を取得してグループ化した通信販売などの子会社の売り上げが新たに加わったほか、インバウンド需要を取り込んだ不動産事業が引き続き好調だったことから、2期連続の増収。前年に続き、営業黒字を確保した。純利益は97億6500万円だった。(以下略)
新聞社というより、不動産会社
大手4紙のなかで唯一、有価証券報告書を公開している朝日新聞社。その中身を追うと、新聞社というより、もはや不動産会社と呼ぶほうが実態に近い。
売上高──本業が下がり、脇役が伸びる
セグメント別売上を見れば一目瞭然である。
- メディア・コンテンツ事業(旧・新聞出版)は依然として売上の中心だが、年々減少。
- 対して、不動産事業はコロナ禍で一時落ち込んだものの、以降は右肩上がり(次図)。

利益──稼ぐのは「不動産」
不動産部門が本業の赤字を穴埋めしている構造が、数字からはっきりと読み取れる(次図)。
- メディア部門の利益は、近年は赤字続き。営業利益率も2%を超えたことがない。
- 不動産部門は、25年3月期も19.6%という高い利益率を維持し、営業利益は2年連続で84億円を突破。

社員数と給与に表れた苦境
新聞社の危機は、社員の数と給与にも如実に表れている(次図、次次図)。
- メディア部門の従業員数は、20年3月期の大赤字以降、年々削減。
- 平均年齢は上昇し、平均年収は13年間で約110万円も減少(▲8.8%)。


※年齢・給与データは、3つのセグメント(メディア・コンテンツ事業、不動産事業、その他の事業)の平均値。
朝日新聞、自ら分析──広告・折込収入の減少と部数減の現実
こうした状況について、朝日新聞社自身も悲観的な見解を示している。
有価証券報告書(第172期)に記載された「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」には、「部数減に伴い、広告収入や折込収入が減収」有料会員数は前期比4千人減」といった表現が並ぶ。
「朝日ID」635万件(25年3月31日現在)とあるが、前期の有価証券報告書に記載されていた643万件より8万件減少している。
メディア・コンテンツ事業
朝日新聞の年間平均部数は朝刊334万4千部、夕刊94万1千部(前期比で朝刊23万6千部減、夕刊12万4千部減)だった。部数減に伴い、広告収入や折込収入が減収となった。
(中略)
有料会員数は前期比4千人減の30万2千人(25年3月31日現在)だった。
顧客データの基盤となる「朝日ID」は635万件(25年3月31日現在)となった。
(中略)
当セグメントの売上高は232,426百万円と前年同期と比べ6,622百万円(2.9%)の増収、セグメント損失は2,883百万円(前年同期の損失は2,546百万円)となった。
雑感──新聞社に「しかできないこと」をもう一度
筆者は長年の愛読者であるが、最近の紙面に物足りなさを感じている。
専門性が求められる分野では、新聞よりもブロガーの記事のほうが内容が深く、説得力があるケースが少なくない。
株価欄はネットを使えない高齢者向けだとしても、あの極小文字では読者に寄り添っているとは言い難い。果たして、本当にニーズがあるのか、読者調査の結果を見てみたい。
朝日新聞の強みは、個人では難しい調査報道と、複雑な問題をわかりやすく伝える編集能力にある。その強みを活かしつつ、時代に適応した収益モデルを確立できなければ、今後の生き残りは厳しいだろう。
部数の減少は止まらず(次図)、2023年の値上げ(朝夕刊セット:4,400円 → 4,900円)は、収益改善よりも読者離れを加速させてはいないか──。

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