第217回国会(25年1月24日~6月22日)の衆議院の質問主意書を眺めていて、外国人の土地取得規制に関する件名があることに気が付いた。
太 栄志 衆議院議員(立憲)が6月10日に提出した質問主意書に対する政府答弁書が公開されたのでひも解いてみた。
内容を読みやすくするため、一問一答形式で再構成した。
※時間のない方は「質疑応答のポイント」と文末の「雑感」のみでもご一読いただければ幸いである。
- 太 栄志 衆議院議員(立憲)
- 雑感(論点は複雑…)
太 栄志 衆議院議員(立憲)

(衆議院 外務委員会 25年5月9日動画より)
太 栄志 衆議院議員(立憲民主党、当選回数2回、元 長島昭久衆議院議員秘書、中央大学院卒、48歳)
我が国における土地および建物(以下「土地等」という。)の取得、賃貸借、利用、売却その他の取引(以下「取得等」という。)については、日本人、外国人、内国法人若しくは外国法人の別または取引の目的のいかんを問わず、原則として自由に行うことができる。
しかし、外国人または外国法人による土地等の取得等が無制限に行われることに対して、安全保障の観点から潜在的なリスクがあることが指摘されてきた。
特に、防衛関係施設の周辺、国境離島、森林等において、実質的な所有者や利用目的が明らかにされていない外国人または外国法人による土地等の取得等が報告されており、地域住民に懸念を抱かせていると考える。
政府は、これまでの国会での質疑において、外国人または外国法人による土地等の取得等の規制について検討する旨答弁している一方、我が国は世界貿易機関を設立するマラケシュ協定(以下「WTO協定」という。)附属書1Bのサービスの貿易に関する一般協定(以下「GATS」という。)において土地取引について留保を付していないことから、専ら外国人または外国法人のみを対象とする制度を設けることは、GATS第17条に規定する内国民待遇との関係で問題が生ずる可能性があるため留意する必要があるとしている。また、今後新たに留保を付するのは困難である旨も答弁している。
他方で、地域的な包括的経済連携協定(以下「RCEP」という。)においては、外国人または外国法人による土地の取得または賃貸借に関し、サービス貿易および投資に関する内国民待遇、市場アクセスおよび最恵国待遇の義務に留保を付し、現行の措置として外国人土地法を記載している。
これらを踏まえて、以下、政府に対し質問をする。
問1:GATSとRCEPとの関係について
問1-1:RCEP締約国に対して、GATSとRCEP双方の規定が適用?
RCEPの締約国は全てWTO協定の締約国であることから、RCEPの締約国に対しては、GATSとRCEP双方の規定が適用されるという理解でよいか。
問1-2:RCEP締約国との間では、GATSとRCEPどちらの規定適用?
我が国が、外国人または外国法人による土地等の取得等を禁止または制限する法制上の措置を講じた場合、RCEPの締約国との間では、GATSとRCEPのどちらの規定が適用されるのか。
答1-1&2:RCEP協定とGATSの双方の規定が適用される
地域的な包括的経済連携協定(2021年条約第7号。以下「RCEP協定」という。)の締約国については、いずれも世界貿易機関を設立するマラケシュ協定(1994年条約第15号)附属書1Bのサービスの貿易に関する一般協定(以下「GATS」という。)の締約国であり、RCEP協定とGATSの双方の規定が適用される。
問1-3:我が国以外のRCEP締約国の自然人または法人による土地の取得または賃貸借を禁止し、または制限することは、RCEPの規定に違反?
我が国が、外国人土地法第4条第2項の規定に基づく「国防上必要ナル地区」を政令で定めた上で、同条第1項の規定に基づき、我が国以外のRCEP締約国の自然人または法人による土地の取得または賃貸借を禁止し、または制限することは、RCEPの規定に違反するか。
答1-3:土地の取得または賃貸借を禁止し、または制限することができる
お尋ねの「RCEPの規定」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、RCEP協定の附属書3表Bの留保事項14においては、内国民待遇(第8・4条および第10・3条)、市場アクセス(第8・5条)および最恵国待遇(第8・6条および第10・4条)に関し、日本国における土地の取得または賃貸借を禁止し、または制限することができるとされており、現行の措置として外国人土地法(大正14年法律第42号)が記載されている。
問2:GATS第14条の2について
問2-1:外国人または外国法人による土地等の取得等を禁止し、または制限、GATS第14条の2(安全保障のための例外)に基づく措置に当たる?
我が国が安全保障上の理由から重要施設(防衛関係施設等)および国境離島等について、外国人または外国法人による土地等の取得等を禁止し、または制限することを内容とする法制上の措置を講ずることは、GATS第14条の2(安全保障のための例外)に基づく措置に当たると考えるか。
問2-2:(外国人・外国法人の土地取得禁止・制限)GATS第14条の2に基づく措置に当たる?
外国人土地法第4条第2項の「国防上必要ナル地区」を政令で定め、同条第1項に基づき、政令により、「外国人又ハ外国法人ノ土地ニ関スル権利ノ取得ニ付禁止ヲ為シ又ハ条件若ハ制限ヲ附スルコト」は、GATS第14条の2に基づく措置に当たると考えるか。
答2-1&2:お答えすることは困難
お尋ねの「安全保障上の理由」、「重要施設(防衛関係施設等)および国境離島等」および「外国人または外国法人による土地等の取得等を禁止し、または制限することを内容とする法制上の措置」の具体的に意味するところが明らかではなく、また、お尋ねの「政令により、「外国人又ハ外国法人ノ土地ニ関スル権利ノ取得ニ付禁止ヲ為シ又ハ条件若ハ制限ヲ附スルコト」」の具体的な内容が明らかではなく、お答えすることは困難である。
問2-3:通報された事例?
GATS第14条の2第2項の規定に基づき、サービスの貿易に関する理事会に対して同条第1項の規定に基づいてとられる措置並びにその終了について、通報された事例を政府は把握しているか。把握している場合にはそれぞれ可能な限り事例を示されたい。
答2-3:ニカラグアがホンジュラス・コロンビアに対して講じた
お尋ねについては、世界貿易機関事務局によれば、これまで、ニカラグアがホンジュラスおよびコロンビアに対して講じたお尋ねの「措置」について2000年にサービスの貿易に関する理事会に「通報」した事例があるとのことである。
問2-4:WTO協定に基づく紛争解決手続がとられた事例?
GATS第14条の2第1項の規定に基づいてとられる措置について、GATS締約国間で貿易に関する国際紛争が発生し、WTO協定に基づく紛争解決手続がとられた事例を政府は把握しているか。把握している場合には可能な限り事例を示されたい。
答2-4:承知していない
これまで、お尋ねの「事例」があるとは承知していない。
問3:(外国人による土地等の取得禁止・制限)GATSの規定に違反?
GATSがサービスの貿易に関する協定であることを踏まえると、外国人または外国法人による我が国の土地等のサービスの貿易に関連しない取得等を禁止し、または制限することを内容とする法制上の措置を講ずることは、GATSの規定に違反しないと考えてよいか。
答3:GATSについては、サービスの貿易に影響を及ぼす加盟国の措置について適用される
お尋ねの「我が国の土地等のサービスの貿易に関連しない取得等を禁止し、または制限することを内容とする法制上の措置」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、GATSについては、サービスの貿易に影響を及ぼす加盟国の措置について適用されるものである。
雑感(論点は複雑…)
太栄志議員の問題意識は明確だ。
外国資本による土地取得が安全保障に与える影響に警鐘を鳴らし、GATSやRCEPといった国際協定との整合性を丁寧に問う。
その主張は、漠然とした不安の扇動ではなく、現行制度のすき間を突くロジカルな追及である。
にもかかわらず、政府答弁は「意味するところが必ずしも明らかではない」「お答えすることは困難」──まるでマニュアルのように繰り返される文言ばかり。
RCEPでは土地取得の制限が可能と述べながら、GATSでは「内国民待遇」を盾に消極的な姿勢を崩さない。
論点は複雑である。だからこそ、本気で議論すべきなのに、政府は“答える気がない”ように見えてしまう。
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