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羽田新ルート問題、形式答弁に終始する政府──松尾明弘議員の丁寧な追及

第217回国会(25年1月24日~2025年6月22日)の衆議院の質問主意書210件(6月2日現在)のなかに、192番目として、羽田新ルートに係る次の質問主意書が埋もれている。

松尾明弘 衆議院議員(立憲民主党)が5月20日に提出した質問主意書に対する政府答弁書が公開されたのでひも解いてみた。

読みやすいように、一問一答形式に再構成しておいた。
※以下長文。時間のない方は、「質疑応答のポイント」と文末の「雑感」をお読みいただければと。


質疑応答のポイント

松尾明弘 衆議院議員(立憲)

松尾明弘 衆議院議員(立憲)
衆議院 安全保障委員会 25年4月11日 動画より)
松尾明弘 衆議院議員(立憲民主党、当選回数2回、東大法卒、50歳)

羽田空港の新飛行経路、いわゆる羽田新ルート(以下、新ルート)の導入以降、東京都心部では航空機の騒音や安全性に関する懸念が広がっている。特に渋谷区や港区などの市街地上空では、低高度での飛行により住民らの日常生活への影響が顕在化していると承知している。


羽田空港の利便性強化や国際競争力向上を目的として導入されたはずの新ルートだが、機能強化の効果が薄く、住民の安心・安全とのバランスを欠いたまま運用が継続されていることは問題であると考える。


これらの問題意識を踏まえ、次の事項について質問する。

【問1:発着回数について】

国土交通省航空局作成の「羽田空港のこれから~ご質問についてお答えします~v.6.2」において、現在のように、東京湾上空に飛行経路を設定し、海側から到着し、海側へ出発する方法(以下、従来ルート)では、1時間当たりの発着回数は現行の80回から82回までしか増やすことはできない旨説明されている。

問1-1:発着回数が82回を超えた日、悪影響?

新ルート飛行開始以降、新ルートを運用している時間帯において従来ルートの飛行で1時間当たりの発着回数が82回を超えた日があれば、年ごとの日数及び1時間当たりの平均回数をそれぞれ可能な限り示された上で、超えたことによる悪影響があれば、悪影響の具体的な内容を伺いたい。

答1-1:安定的に当該処理を行うことが困難になる

御指摘の「新ルート飛行開始以降、新ルートを運用している時間帯」において「従来ルートの飛行で1時間当たりの発着回数が82回を超えた日」について、お尋ねの①「年ごとの日数」及び②「1時間当たりの平均回数」(小数点第2位を4捨5入した数字)を年ごとにお示しすると、それぞれ次のとおりである。

  • 令和2年 ①零日 ②零回
  • 令和3年 ①零日 ②零回
  • 令和4年 ①6日 ②85.8回
  • 令和5年 ①18日 ②86.0回
  • 令和6年 ①24日 ②88.0回

従来ルートの飛行で1時間当たりの発着回数が82回を超えた日

また、お尋ねの「超えたことによる悪影響」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「82回」は、「従来ルート」において、「羽田空港」の滑走路処理容量に鑑み、安定的な航空機の離着陸の処理を行うための一時的ではなく恒常的な「1時間当たりの発着回数」の上限であり、仮に、これを上回る状態が継続する場合、安定的に当該処理を行うことが困難になると考えられる。

問1-2:発着回数を82回から90回、年間で何回増える?

新ルートを運用している時間帯において1時間当たりの発着回数を82回から90回まで増やす場合、羽田空港の発着回数は、年間で何回増えるか、可能な限り示されたい。

答1-2:1万950回増える

お尋ねについては、1万950回増えるものと考えている。

【問2:米軍ヘリと新ルートとの関係について】

米軍ヘリが、新ルートを低空飛行する旅客機との接触を避けるために東京都心部を低空飛行で飛んでいるのではないかとの指摘に対し、令和3年5月28日の参議院本会議において赤羽国土交通大臣(当時)は、新ルートを運用している時間帯においても、周辺空域において、米軍ヘリが管制機関に連絡を行うことで任意の高度で飛行することが可能な仕組みとなっているため、新ルートの設定が米軍ヘリの飛行に影響を与えているとは認識していない旨答弁している。

問2-1:米軍ヘリ「任意の高度での飛行」、新ルート運用時の特別管制空域又は航空法第81条に規定する最低安全高度以下での飛行も含まれる?

東京都心部において、米軍ヘリが飛行可能な「任意の高度での飛行」に、新ルート運用時の特別管制空域又は航空法第81条に規定する最低安全高度以下での飛行も含まれるか否かを明らかにされたい。

答2-1:「新ルート運用時の特別管制空域」での飛行が含まれ、「航空法第81条に規定する最低安全高度以下」での飛行は含まれない

御指摘の答弁における「任意の高度で飛行すること」には、お尋ねの「新ルート運用時の特別管制空域」での飛行が含まれ、お尋ねの「航空法第81条に規定する最低安全高度以下」での飛行は含まれない。

問2-2:米軍ヘリ、新ルート旅客機と交差、衝突事故の懸念?

任意の高度での飛行が可能ということは、米軍ヘリに対し、あらゆる高度での飛行を許容していることになり、新ルートを飛行する旅客機と交差することによる衝突事故の懸念があると考えるが、政府の見解を伺いたい。

答2-2:「衝突事故の懸念がある」とは考えていない

御指摘の「任意の高度での飛行」については、答2-1で述べたとおりであり、「あらゆる高度での飛行を許容している」との御指摘は当たらず、また、御指摘の「米軍ヘリ」が御指摘の答弁における「新飛行経路」の「周辺空域」で飛行する際には、航空管制官が飛行の方法等について必要な指示を行っていることから、政府としては、お尋ねのように「衝突事故の懸念がある」とは考えていない。

問2-3:新ルート導入前に、旅客機と米軍ヘリとの交差リスクについて十分なシミュレーションや評価を行ったのか?

政府は、新ルート導入前に、旅客機と米軍ヘリとの交差リスクについて十分なシミュレーションや評価を行ったのか。行ったのであれば内容と結果をそれぞれ示されたい。

答2-3:「旅客機と米軍ヘリとの交差リスク」はないと考えている

お尋ねの「十分なシミュレーションや評価」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、2の2についてで述べたとおり、御指摘の「米軍ヘリ」が御指摘の答弁における「新飛行経路」の「周辺空域」で飛行する際には、航空管制官が飛行の方法等について必要な指示を行っていることから、政府としては、御指摘の「旅客機と米軍ヘリとの交差リスク」はないと考えている。

問2-4:米軍ヘリの飛行ルートや日時等をどのように把握?

政府は、東京都上空を飛行する米軍ヘリの飛行ルートや日時等をどのように把握しているか。また、その把握の仕組みは機能しているのか。

答2-4:「飛行ルートや日時」について事前に把握していない

お尋ねの「飛行ルートや日時等」の具体的に指し示す範囲が必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、政府としては、お尋ねの「飛行ルートや日時」について事前に把握していないものの、答2-2で述べたとおり、御指摘の「米軍ヘリ」が御指摘の答弁における「新飛行経路」の「周辺空域」で飛行する際には、航空管制官が飛行の方法等について必要な指示を行っており、また、米側においては、従前から、米軍機の飛行に際して安全の確保に努めているものと承知している。

【問3:航空機の騒音について】

国土交通省航空局作成の「羽田空港のこれから~ご質問にお答えします~v5.1.2」における騒音の大きさを説明する資料に基づくと、新宿・渋谷などの東京都心部では、新ルートによる航空機の騒音レベルが68~74デシベルに達しているとの実態があるとされている。


この騒音レベルは、騒々しい街頭のレベルである70~80デシベルに近く、品川区の大井埠頭や大井町付近では76~80デシベルになる。新ルート直下の住民からは睡眠障害やストレスの増加などの健康被害が報告されていると承知している。

問3-1:健康被害を受けている住民に対する補償?

このような実態を踏まえれば、航空機騒音の軽減に向けてあらゆる方策を検討する必要があると考えるが、政府は健康被害を受けている住民に対する補償や騒音被害を軽減するための追加的な対策を検討しているのか。検討しているのであればその具体的な内容を示されたい。

答3-1:「補償」、特段の措置を講ずることは考えていない

お尋ねのような「補償」については、特段の措置を講ずることは考えていないが、御指摘の「健康被害」の防止の観点も含め、国土交通省においては、公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律(昭和42年法律第110号)第8条の2の規定に基づき、国土交通大臣が指定する同法第2条に規定する特定飛行場の周辺の区域に当該指定の際現に所在する住宅(人の居住の用に供する建物又は建物の部分をいう。以下同じ。)について、その所有者又は当該住宅に関する所有権以外の権利を有する者が航空機の騒音により生ずる障害を防止し、又は軽減するため必要な工事を行なうときは、一定の基準の下で、その工事に関し助成の措置をとることとしている。


また、お尋ねの「騒音被害を軽減するための追加的な対策」については、同省のホームページの「羽田空港のこれから」(以下「ホームページ」という。)で示しているとおり、「今後の取組」として「更なる騒音負担軽減・・・に資する方策について国際動向等を踏まえた調査・研究」を実施することとしており、これを踏まえ、今後、検討していく予定である。

問3-2:住民が受ける航空機騒音をどのような方法で把握?

政府は住民が受ける航空機騒音をどのような方法で把握しているか、観測地点のみならず、騒音が収集される環境も併せて明らかにされたい。

答3-2:複数箇所において騒音測定器を設置して航空機の騒音測定

お尋ねの「観測地点のみならず、騒音が収集される環境も」の趣旨が必ずしも明らかではないが、お尋ねの「方法」については、年間を通じて複数箇所において騒音測定器を設置して航空機の騒音を測定することとしており、また、お尋ねの「観測地点」については、航空機の飛行経路の主要な部分との間に障害物が存在せず、大きな建築物等に近接する地点ではなく、航空機騒音と航空機騒音以外の騒音との差が10デシベル以上確保できるような場所の中から選定した航空機騒音測定局の設置場所において実施することとしている。

問3-3:観測環境の違いは考慮?

航空機騒音の把握に際し、例えば、屋上のような開けた観測地点と、ビルの合間のような音がこもりやすい地点では聞こえ方が全く異なると考えるが、そのような観測環境の違いは考慮されているのか。

答3-3:大きな建築物等に近接する地点を避ける

答3-2で述べたとおり、航空機の騒音の測定地点の選定に当たっては、大きな建築物等に近接する地点を避けることとしており、お尋ねの「ビルの合間のような音がこもりやすい地点」において当該騒音の測定は行っていない。

問3-4:欧州地域向けの環境騒音ガイドライン、採用しない理由?

我が国の航空機の騒音を規制する基準について、地域類型Ⅰ(専ら住居の用に供される地域)では時間帯補正等価騒音レベル(Lden)57デシベル以下、地域類型Ⅱ(Ⅰ以外の地域であって通常の生活を保全する必要がある地域)ではLden62デシベル以下が望ましいとされている。


一方、欧州地域向けの環境騒音ガイドライン(世界保健機関欧州事務局)は、航空機騒音をLden45デシベル以下とするよう強く勧告しているが、我が国がその基準を採用しない理由を示されたい。

答3-4:今後とも必要な科学的知見の集積に努めてまいりたい

お尋ねについては、御指摘の「欧州地域向けの環境騒音ガイドライン」において、御指摘の「航空機騒音」への暴露による不快感の増加については、その可能性が一定程度ある旨の記載がある一方で、虚血性心疾患や高血圧症の発生については、その可能性は低い旨の記載があるものと承知しており、我が国政府としては、御指摘の「その基準」の採用については慎重に検討すべきと考えており、いずれにせよ、今後とも必要な科学的知見の集積に努めてまいりたい。

【問4:「都心上空を飛行しない海上ルートの活用」を求めている】

新ルート直下の多くの住民が「都心上空を飛行しない海上ルートの活用」を求めていると承知している。


政府は住民説明会において「住民の意見を踏まえて検討する」と述べているが、検討は行われたのか示された上で、それらの意見が具体的にどのような形で政策に反映されたのかそれぞれ示されたい。

答4:「海上ルートの実現に資する方策について国際動向等を踏まえた調査・研究」を実施することとしている

お尋ねの「海上ルートの活用」については、ホームページで示しているとおり、「今後の取組」として「海上ルートの実現に資する方策について国際動向等を踏まえた調査・研究」を実施することとしている。

【問5:成田空港の活用について】

国土交通省ウェブサイトの「羽田空港のこれから」によれば、羽田空港以外での国際線増便を実現するために検討された、成田空港を活用する方策について、国際線のニーズが高い時間帯は、「羽田空港のみならず、成田空港も既にフル稼働の状態にある」としている。


しかし、平成22年10月13日の成田空港に関する4者協議会において成田空港の年間発着枠を30万回に拡大することで合意されたのに対し、令和5年までの成田空港の発着枠は最大26万5252回しか使用されておらず、発着枠を全て使用している状態とはなっていない。

また、令和7年1月24日の同協議会において、同年冬ダイヤから成田空港の年間発着枠を34万回で運用することで合意されている。

問5-1:成田空港発着枠を最大限に活用してもなお新ルート必要?

国際線増便に当たり、新ルートの運用より先に成田空港の年間発着枠を全て活用すれば新ルートは不要だと考えるが、従来ルートの発着枠と、成田空港の発着枠を最大限に活用してもなお新ルートが必要なのか、政府の見解を伺いたい。

答5-1:「新ルート」を引き続き運用する必要がある

お尋ねについては、交通政策審議会航空分科会基本政策部会首都圏空港機能強化技術検討小委員会における検討の結果、平成26年7月8日に「首都圏空港機能強化技術検討小委員会の中間取りまとめ」において、「羽田空港における昼間時間帯や成田空港における国際線の出発・到着が集中する夕方の時間帯においては、それぞれ処理能力の限度までダイヤが設定されており、航空会社が希望する時間帯に就航することができないという事態が発生している」と示されており、問1-1で御指摘の「新ルートを運用している時間帯」においては、既に、御指摘のように「成田空港の発着枠を最大限に活用」しているところであり、また、「交通政策基本計画」(令和3年5月28日閣議決定)において、「首都圏空港全体での年間発着容量約100万回の実現を目指す」こととされており、政府としては、御指摘の「新ルート」を引き続き運用する必要があると考えている。

問5-2:成田空港の発着枠を更に増やすために、同協議会において協議を行うことはできないか?

従来ルートの発着枠と、成田空港の発着枠を最大限活用してもなお不足するということであれば、成田空港の発着枠を更に増やすために、同協議会において協議を行うことはできないか、政府の見解を伺いた

答5-2:「成田空港の年間発着枠を、現在の30万回から50万回に拡大すること」とされている

御指摘の「更に増やす」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、平成30年3月13日に開催された「成田空港に関する4者協議会」において締結された「成田国際空港の更なる機能強化に関する確認書」において、今後予定されている「滑走路の増設・延伸等」と併せて「成田空港の年間発着枠を、現在の30万回から50万回に拡大すること」とされている。

雑感

松尾明弘議員(立憲)は、羽田新ルート導入後の航空機騒音や安全性への懸念、特に都心上空の低空飛行による住民生活への影響を問題視し、政府に対し、発着回数の上限やその超過、米軍ヘリとの交差リスク、騒音の測定・補償、欧州基準の不採用理由などを質した。政府は現行運用に問題はないという姿勢を示している。

 

羽田新ルート問題に関する質疑応答を通じて、松尾明弘衆議院議員がこの問題に対し極めて丁寧に、かつ実証的にアプローチしていることが窺えた。

環境影響評価や騒音・落下物リスクへの懸念を的確に突き、国土交通省の姿勢に鋭く切り込む姿勢は、まさに住民の立場に立った質疑である。

一方、政府側の答弁は通り一遍の形式的な説明に終始し、真摯に向き合っているとは言い難い。「『衝突事故の懸念がある』とは考えていない」、「『新ルート』を引き続き運用する必要があると考えている」といった文言は、実態を直視せずに済まそうとする意図すら感じさせる。このような答弁態度では、地域住民の不信感は深まるばかりである。松尾議員には更なる鋭い質問を期待したい。

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