震災後の日本を案じた養老孟司の新著『日本が心配』PHP新書(2025/2/18)読了。
養老先生が「それぞれの分野で実証的に論を進める点で信頼が置ける」という4人を人選し、対談。震災関連本として読み応えのある1冊。
※朱書きは、私のメモ。

南海トラフの巨大地震は2038年ごろに起こる
地震学を専門とする尾池和夫 京都大学名誉教授(84歳)による「2038年を次の南海地震が発生する年」という衝撃的な予測。
南海トラフの巨大地震は2038年ごろに起こる
(前略)この時間予測モデルにもう1つ、高知県室津港の地震時の隆起量と、地震発生の時間間隔との関係をもとにした時間予測モデルを組み合わせて、次の発生間隔を求めることもできます。歴代南海地震のうち、宝永(1707年)、安政(1854年)、昭和(1946年)の地震時の隆起量がグラフ(図116)のように増えているでしょう? そこから次のM8クラスの地震は、昭和の南海地震から88.2年後に発生すると推定できるのです。
これは2013年1月1日時点での評価です。2024年現在、すでに昭和東南海・南海地震から約80年が経過していますので、次の地震発生の切迫性がかなり高まっていることになります。この推定通りだと、次の地震は2034年でしょうか。
ただし、前出の中田高さんと、東京大学の島崎邦彦さんは論文で、過去の地震の規模と発生時期をもとにしたあるモデルから、「2040年より少し早い」と予測しています。
そこで私は、2038年を次の南海地震が発生する年と予測しておくことにしたわけです。
(中略)
いずれにしても南海トラフの大地震は、2030年代後半から50年代あたりに起こりそう。早めの値を採用して、早く対策を打っておくのがよいかと思います。さらに中田高さんは、2030年の可能性もあると言っています。(以下略)(P44-46/第1章 2038年、南海トラフ地震が起こる)
※南海トラフ巨大地震が2038年ごろに起きないとしても、「早く対策を打っておくのがよい」というのはその通りだ。
対応の遅い行政に頼るのではなく、自衛することが肝要。そのためにも、都民はどの地域が危険なのか把握しておくことが不可だ。この5年間で危険度リスクが悪化/改善している町丁目を次図に示す。

「総合危険度、5年間で改善・悪化している町丁目はどこか(23区)」より
どうなる、“震災疎開”?
都市部以外の被災地で住まいを失った人たちは、都市部の賃貸住宅などに広域的に移動をせざるを得ないから、”震災疎開”によって都市への一極集中が進むという、廣井 悠 東京大学教授(46歳)の見立て。
どうなる、“震災疎開”?
(前略)南海トラフ巨大地震では被害想定上、最悪で約240万世帯が住まいを失うと計算されていて、それに対して供給可能なプレハブ仮設住宅は5万~10万戸と言われているようです。つまり巨大災害に対して、プレハブ住宅の供給能力は全然、足りない。
そうすると、選択肢は「賃貸住宅に住む」、という一択になってしまいます。これは「みなし仮設」と呼ばれているんですが、南海トラフ巨大地震の場合は、ここで困った問題が生じます。というのも、賃貸住宅って、都市部に多いのです。つまり、都市部以外の被災地で住まいを失った方は、都市部の賃貸住宅などに広域的に移動をせざるを得ず、結果、大規模な疎開が発生するわけです。
(P96/第2章 被災のシミュレーションと復興ビジョン)
※南海トラフ地震でさらに東京への一極集中が加速するということは、想像力を働かせれば容易に気が付くことだ。
政府はこれに対して十分な準備をしているのだろうか。牧山ひろえ 参議院議員(立憲)が24年10月9日に提出した質問主意書に対する政府答弁書を読むと心配になってくる。
本書の構成
4章構成。全221頁。
- 第1章 2038年、南海トラフ地震が起こる
尾池和夫(京都大学名誉教授)×養老孟司- 第2章 被災のシミュレーションと復興ビジョン
廣井 悠(東京大学教授)×養老孟司- 第3章 巨大地震後の日本経済
デービッド・アトキンソン(小西美術工藝社社長)×養老孟司- 第4章 復興後、自然環境はどう変化するのか
永幡嘉之(自然写真家)×養老孟司
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