都議会議員に交付されている政務活動費は適切に使われているのか。
都議会議員の多い5会派(自民・都ファ・公明・共産・立憲)のなかで、「政務活動費」に占める「広報紙(誌)発行費」の割合が突出しているのが都民ファーストであることは既にこのブログで紹介した(都議会|5会派の「政務活動費」)。
本日は、都議会がHPで公開している「収支報告書・会計帳簿・領収書等」を元に都民ファーストの23年度の「政務活動費」につき、さらに深掘りする。
※以下、敬称略
「政務活動費」支出内訳
共通・議員合計「政務活動費」の支出内訳(23年度)を次図に示す。
※都民ファーストに交付された23年度の「政務活動費」(1億5,900万円)は、「都民ファースト」(≒議員共通)と26名の各議員(24年区長選辞任2名、24年死去1名を含む。政務活動費ゼロ1名を除く)で帳簿が整理されている(執行残約1,139万円、執行率93%)。
条例で規定された全14項目のうち、最も多いのは「広報紙(誌)発行費」。次いで「人件費」「事務所費」「事務費」。
「人件費」「事務所費」「事務費」といった「調査活動補助費」としての固定的経費を除くと、ほとんどが「広報紙(誌)発行費」を占めていることが分かる。
「政務活動費」月次変化
共通・議員合計「政務活動費」の月次変化(23年度)を次図に示す。
共通・議員合計とも、年度末になると「広報紙(誌)発行費」が激増している。
※各月の棒グラフの左側が共通、右側が議員合計を示している。
議員ランキング
都民ファーストに交付された23年度の「政務活動費」(1億5,900万円)のうち、「都民ファースト」(≒議員共通)分(約5,180万円)と執行残(約1,139万円)を除く約9,581万円につき、27名の各議員(24年区長選辞任2名、24年死去1名を含む。政務活動費ゼロ平慶翔を含む)の支出内訳を次図に示す。
政務活動費
「政務活動費」が最も多いのは福島りえこ 429万円(2期、世田谷)、最も少ないのは(※1)おじま紘平 198万円(2期、練馬)。その差231万円。
※1:最も少ないのは伊藤大輔 171万円(1期、立川)だが、23年補選当選者。
※2:平慶翔(2期、千代田)の政務活動費はゼロ円については、後述【参考1】参照。
多い議員:福島りえこ 429万円(2期、世田谷)
「政務活動費」が多い議員上位10名を以下に示す。
※千円以下は四捨五入
- 1位:福島りえこ 429万円(2期、世田谷)
- 2位:たきぐち学 425万円(3期、荒川)
- 3位:入江のぶこ 424万円(2期、港)
- 4位:石川良一 423万円(3期、南多摩)
- 5位:小山有彦 422万円(4期、府中)
- 6位:関野たかなリ 421万円(2期、北多摩第一)
- 7位:後藤なみ 421万円(2期、足立)
- 8位:伊藤ゆう 418万円(4期、目黒)
- 9位:保坂真宏 416万円(2期、台東)
- 10位:尾崎大介 413万円(5期、北多摩第三)
少ない議員:おじま紘平 198万円(2期、練馬)
「政務活動費」が少ない議員上位10名を以下に示す。
23年補選で当選した伊藤大輔 を除くと、おじま紘平がダントツで少ない。
※千円以下は四捨五入
- 1位:伊藤大輔 171万円(1期、立川)※23年10月15日補選で当選
- 2位:おじま紘平 198万円(2期、練馬)
- 3位:内山真吾 275万円(2期、昭島)
- 4位:増子ひろき 313万円(4期、文京)
- 5位:成清梨沙子 317万円(2期、墨田)
- 6位:龍円あいり 326万円(2期、渋谷)
- 7位:清水やすこ 330万円(2期、西多摩)
- 8位:山田ひろし 342万円(2期、三鷹)
- 9位:白戸太朗 351万円(2期、江東)
- 10位:森村隆行 354万円(2期、青梅)
※平慶翔(2期、千代田)の政務活動費はゼロ円については、後述【参考1】参照。
広報紙(誌)発行費
「広報紙(誌)発行費」が最も多いのは後藤なみ 421万円(2期、足立)、最も少ないのは小山有彦 0万円(4期、府中)。
多い議員:後藤なみ 421万円(2期、足立)
「広報紙(誌)発行費」が多い議員上位10名を以下に示す。
※千円以下は四捨五入
- 1位:後藤なみ 421万円(2期、足立)
- 政務活動費の全額が「広報紙・誌発行費」。内容は都政レポートに係るデザイン費・印刷代・ポスティング代(8・9・3月)。特に1月と3月に集中している。
- 2位:福島りえこ 401万円(2期、世田谷)
- 3位:関野たかなリ 387万円(2期、北多摩第一)
- 4位:藤井あきら 374万円(2期、町田)
- 5位:本橋弘隆 363万円(2期、豊島)
- 6位:保坂真宏 320万円(2期、台東)
- 7位:伊藤ゆう 315万円(4期、目黒)
- 8位:菅原直志 311万円(2期、日野)
- 9位:茜ヶ久保嘉代子 303万円(2期、杉並)
- 10位:増子ひろき 301万円(4期、文京)
「政務活動費」に対して「広報紙(誌)発行費」の占める割合が9割を超える議員は以下の6名。
- 後藤なみ 100%(2期、足立)
- 増子ひろき 96%(4期、文京)
- おじま紘平 96%(2期、練馬)
- 藤井あきら 94%(2期、町田)
- 福島りえこ 94%(2期、世田谷)
- 関野たかなリ 92%(2期、北多摩第一)
少ない議員:小山有彦 0万円(4期、府中)
「広報紙(誌)発行費」が少ない議員上位10名を以下に示す。
※千円以下は四捨五入
- 1位:小山有彦 0万円(4期、府中)
- 2位:森村隆行 24万円(2期、青梅)
- 3位:伊藤大輔 80万円(1期、立川)
- 4位:成清梨沙子 84万円(2期、墨田)
- 5位:村松一希 121万円(2期、練馬)
- 6位:入江のぶこ 133万円(2期、港)
- 7位:内山真吾 175万円(2期、昭島)
- 8位:おじま紘平 190万円(2期、練馬)
- 9位:石川良一 206万円(3期、南多摩)
- 10位:白戸太朗 214万円(2期、江東)
「政務活動費」に対して「広報紙(誌)発行費」の占める割合が1割未満の議員は、以下の2名。
- 小山有彦 0%(4期、府中)
- 政務活動費の50%を人件費、35%を事務所費に費やしている
- 森村隆行 7%(2期、青梅)
- 政務活動費の61%を人件費、19%を事務所費に費やしている
人件費
「人件費」が最も多いのは森村隆行 217万円(2期、青梅)、最も少ないのはゼロ(11名)。
多い議員:森村隆行 217万円(2期、青梅)
「人件費」が多い議員上位10名を以下に示す。
※千円以下は四捨五入
- 1位:森村隆行 217万円(2期、青梅)
- 2位:小山有彦 210万円(4期、府中)
- 3位:成清梨沙子 180万円(2期、墨田)
- 4位:入江のぶこ 176万円(2期、港)
- 5位:村松一希 163万円(2期、練馬)
- 6位:尾崎大介 97万円(5期、北多摩第三)
- 7位:石川良一 97万円(3期、南多摩)
- 8位:保坂真宏 71万円(2期、台東)
- 9位:白戸太朗 48万円(2期、江東)
- 10位:伊藤大輔 48万円(1期、立川)
ゼロ議員:11名
「人件費」がゼロの議員は、以下の11名。
下記11名は、総じて「広報紙(誌)発行費」の割合が高い。
- 山田ひろし (2期、三鷹)
- 伊藤ゆう (4期、目黒)
- 清水やすこ (2期、西多摩)
- 菅原直志 (2期、日野)
- 龍円あいり (2期、渋谷)
- 関野たかなリ (2期、北多摩第一)
- 福島りえこ (2期、世田谷)
- 藤井あきら (2期、町田)
- おじま紘平 (2期、練馬)
- 増子ひろき (4期、文京)
- 後藤なみ (2期、足立)
事務所費
「事務所費」が最も多いのは小山有彦 149万円(4期、府中)、最も少ないのはゼロ(8名)。
多い議員:小山有彦 149万円(4期、府中)
「事務所費」が多い議員上位10名を以下に示す。
※千円以下は四捨五入
- 1位:小山有彦 149万円(4期、府中)
- 事務所賃料月額23万円+更新料22万円のうち50%を計上
- 2位:入江のぶこ 114万円(2期、港)
- 3位:石川良一 94万円(3期、南多摩)
- 4位:伊藤ゆう 89万円(4期、目黒)
- 5位:茜ヶ久保嘉代子 80万円(2期、杉並)
- 6位:山田ひろし 73万円(2期、三鷹)
- 7位:森村隆行 66万円(2期、青梅)
- 8位:白戸太朗 61万円(2期、江東)
- 9位:村松一希 57万円(2期、練馬)
- 10位:内山真吾 52万円(2期、昭島)
「政務活動費」に対して「事務所費」の占める割合が2割を超える議員は以下の6名。
- 1位:小山有彦 35%(4期、府中)
- 2位:入江のぶこ 27%(2期、港)
- 3位:伊藤大輔 24%(1期、立川)
- 4位:石川良一 22%(3期、南多摩)
- 5位:山田ひろし 21%(2期、三鷹)
- 6位:伊藤ゆう 21%(4期、目黒)
ゼロ議員:8名
「事務所費」がゼロの議員は、以下の8名。
- 龍円あいり (2期、渋谷)
- 福島りえこ (2期、世田谷)
- おじま紘平 (2期、練馬)
- 増子ひろき (4期、文京)
- 後藤なみ (2期、足立)
- 本橋弘隆 (2期、豊島)
- 保坂真宏 (2期、台東)
- 尾崎大介 (5期、北多摩第三)
【参考1】平慶翔、政務活動費ゼロ円!?
23年度の都民ファーストの「会計帳簿」には、平慶翔の名前が全く出てこない。
改めて過去の年度の都民ファーストの「会計帳簿」をひも解いてみると、19~21年度には平慶翔の名前は出でくるが、22・23年度には出てこない。
デイリー新潮が23年4月27日に報じた「政治資金収支報告書の偽名疑惑」と関係があるのだろうか……。
一つは政治資金収支報告書。慶翔氏が代表を務める政治団体のそれを確認すると、会計責任者として聡さんの名が記されている。だが、その名は慶翔氏が名乗らせていた偽名。この世に存在しない人物を報告書に記載していることになる。
もう一つは本人の事務所だ。実はHPに記されている住所はダミーで、実質的な事務所は聡さんが暮らしていた低層マンションの一室にあるのだ。
【参考2】政務活動費について
政務活動費とは、議員が行う調査研究、情報収集、政策立案、広報・広聴活動等に要する経費に対して交付されるもの。政務活動費の使途基準は、東京都政務活動費の交付に関する条例「別表」により次表のように定められている。
政務活動費の交付対象は、会派(所属議員が1人の場合を含む)。交付額は、議員1人につき月額50万円×所属議員数(政務活動費の概要 | 東京都議会)。
東京都議会の「政務活動費関係規程」を以下に列挙しておく。
- 地方自治法(抄)
- 東京都政務活動費の交付に関する条例
- 東京都政務活動費の交付に関する条例施行規則
- 東京都政務活動費の交付に関する条例施行規程
- 東京都政務活動費調査等協議会要綱
- 東京都政務活動費に係る領収書等の写しの閲覧に関する要綱
雑感
政務活動費は自己PRのため!?
都議会議員の多い5会派(自民・都ファ・公明・共産・立憲)のなかで、「政務活動費」に占める「広報紙(誌)発行費」の割合が突出しているのが都民ファーストである。
23年度の「政務活動費」(交付額1億5,900万円、執行残約1,139万円、執行率93%)は、「人件費」「事務所費」「事務費」といった「調査活動補助費」としての固定的経費を除くと、ほとんどが「広報紙(誌)発行費」を占めている(次図、再掲)。
年度末になると「広報紙(誌)発行費」が激増している。(次図、再掲)。
「広報紙(誌)発行費」が自己PRのため、特に年度末の予算消化として使われている状況が透けて見える。
「政務活動費」が最も多いのは福島りえこ 429万円(2期、世田谷)、最も少ないのは(※1)おじま紘平 198万円(2期、練馬)。その差231万円(次図、再掲)。
※1:最も少ないのは伊藤大輔 171万円(1期、立川)だが、23年補選当選者。
かつては「政務調査費」と呼ばれ、交付目的は「議員の調査研究」
そもそも「政務活動費」は、かつて「政務調査費」と呼ばれ「議員の調査研究」のために交付されていた。ところが、自治法の一部改正(2012年8月29日)のタイミングで議員修正によって「政務調査費」から「政務活動費」に改称された。そのときに交付目的が「議員の調査研究」から「議員の調査研究その他の活動に資するため」と変更され、使途が拡大されたのである。
その使途に関して住民から批判が絶えない一方で、議員の間には、「調査」に関わらせていることが使途を窮屈にしているという不満が少なくなかったといいます。地方議会議長会三団体からは、この政務調査費については、①支出と調査研究活動の厳格な関連性が要求され、政務調査活勣が自己抑制的になる傾向がある、②住民への議員活動の成果の報告が政務調査費の対象となるかが微妙である、との理由から、「現行地方自治法上、調査研究活動に特化されている政務調査費制度を見直し、幅広い議員活動等に充てることができることを明確にするよう法改正を行うこと」という要望が自民党等に寄せられていました。
そこで、「政務調査費」を「政務活動費」に改称し、交付の目的について100条14項に「その他の活動」の6文字を付加して「議員の調査研究その他の活動に資するため」とする改正が行われたのです。(大森 彌「自治体議員入門」第一法規 2021/11/24,p75-76)
政務活動費は、議員報酬とは異なり、「交付することができる」となっていて、支給可否も額も任意。すでに政務活動費が既得権益視されているなか、政務活動費を2016年に廃止した自治体がある。大阪市泉南市(人口6.5万人、定数18人)だ。それまで1か月あたり5万円支給されていた政務活動費を廃止した理由は次のとおり。
廃止理由は、①条例や法によって、あるいは制度で規制されたものを、政務活動費と称して費用を支弁されていることが議員活動そのものに規制を加えることになり、議員の自主的活動の中で、自律的な政策提言を行うことのほうが、より柔軟な政治活動を行えるのではないかと考えること、②政務活動費の支給などを受けずに、議員が、その自主的活動の中で、自律的な政策提言を行うことのほうが、より柔軟な政治活動を行えるのではないかと考えること、③議会議員は、個々の自己責任で自由に議員活動を行うべきであり、政務活動費の交付によって、その活動に制限が及ぶことがないよう、現下の社会情勢等も勘案し、条例廃止を提案するということでした。
(同上,p88)
都議会にいる現在の維新議員は1名。松田りゅうすけ氏(1期、大田)。次回都議選で(25年7月予定)、維新候補が「身を切る改革」として「政務活動費」の廃止を訴えることはないのか……。
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