横書きの学術論文だけでなく、縦書きの啓発書にも力を入れている京大名誉教授・鎌田浩毅氏の新著『M9地震に備えよ 南海トラフ・九州・北海道』中公選書(2024/8/9) を読了。
「地球科学に疎い読者も楽に読めるよう徹底的に噛み砕いて説明した」というだけあって、とても読みやすい。日本列島に住んでいる人にとっての必読書ではないか。
※朱書きは、私のメモ。
東京都の「地域危険度一覧表」
危険度が最も高いランク5は荒川区、足立区、墨田区、江東区など東部の6区、という悪い意味でのお墨付き。
東京都の「地域危険度一覧表」
(前略)危険度が最も高いランク5は荒川区、足立区、墨田区、江東区など東部の6区を中心として表示され、そのほか中西部の中野区や杉並区にも「ランク4~5」の地域が出た。
危険度の原因をくわしく調べると、1番目の「建物倒壊危険度」に関しては直下型地震で生ずる揺れへの地盤と建造物の抵抗力が関わることがわかる。具体的には、東京下町の河川の土砂が埋めた沖積地では地盤が軟弱で、地震動か増幅されやすい。同様にウォーターフロント沿いの埋め立て地も液状化などが起こりやすい。
(中略)
この危険度ランクは5年ごとに更新されており、2018年2月に東京都が公表した図を前回の2013年と比べると、建物倒壊の危険度は2割、また火災の危険度は4割低下した。地域危険度一覧表に表示される危険性とともに、首都圏に林立する高層ビルやタワーマンションの安全性が問題となっている。(P83-84/第1章 東日本大震災は終わっていない)
※5年間で大きく悪化している町丁目は少ない一方、大きく改善している町丁目は少なくないことが分かる(次図)。
「総合危険度、5年間で改善・悪化している町丁目はどこか(23区)」より
長周期の揺れは遠くまで届く
東海地震の長周期地震動が首都圏にもたらす揺れは東日本大震災時の揺れの3倍程度になると想定されていることは、あまり知られていないのではないか。
長周期の揺れは遠くまで届く
(前略)東京・名古屋・大阪など大都市圈で長周期による揺れが東日本犬震災を上回ることが判明し、東海地震の長周期地震動が首都圏にもたらす揺れは東日本大震災時の揺れの3倍程度になると想定されている。そこで気象庁の新しい緊急地震速報では、立つことが難しい「階級3」以上の揺れが予想された地域に向けて発表することにしたのである。
この長周期地震動だけではなく、南海トラフ巨大地震では宮崎沖から静岡沖までの長さ700キロメートルにわたる震源域が、ほぼ同時に様々な周期の地震を発生させると考えられる。こうした現象でどれくらい出るかは、事前に予測することが極めて難しい。
よって「想定外」の揺れによって被害が増える可能性は否めず、甚大災害が発生してから初めて地震現象の理解が進むこともこれまでは少なくなかった。自然界では必ず想定外が起きることを念頭において防災対策を立てる必要がある。
(P178-179/第2章 国家を揺るがす西日本大震災)
※長周期地震動対策の対象地域内(次図の緑色で示す範囲)において、2000年5月以前に建築された超高層建築物等(高さが60mを超える建築物及び地上4階建て以上の免震建築物)は、南海トラフの巨大地震による長周期地震動の影響を受ける恐れがあるとされている。
「そのタワマン、「長周期地震動」対策済みですか | スムログ」より
本書の構成
3章構成。全290頁。
- 第1章 東日本大震災は終わっていない
- 第2章 国家を揺るがす西日本大震災
- 第3章 日本海と北日本に迫る危機
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