7月29日に実施された国交省ヒアリングにおいて、従来ルートでも離発着「90回/時」以上の運用があった事実が判明。「夕方の旺盛な国際線需要に応えるには」従来ルート「80回/時」ではなく新ルート「90回/時」の導入が必要という国交省のロジックに綻びか。
新ルートなくても、従来ルートで対応できるんじゃないの、という話。
大村究氏(羽田問題解決プロジェクト代表)の指摘
羽田低空飛行見直しのための議員連盟の主催(協力:羽田問題解決プロジェクト)で7月29日、国交省へのヒアリングが実施された。ヒアリングで話題になったのは、固定化回避検討会が2年以上開催されていないことと、従来ルートでの運用実績について。
特に、興味深いのは大村究氏(羽田問題解決プロジェクト代表)が取り上げた従来ルートでの運用実績について。
国交省が今回開示した24年2月1日から3月31日の時刻別、従来・新ルート別の離着陸回数データ(次図)を元に、新ルートを使わなくても、従来ルートでも増便に対応できるのではないかという趣旨の指摘である。
国交省からの提供資料(PDF:8.3MB)4枚目以降より
まずは大村氏の次の発言。
最後に、せっかく非常にディティールの資料を作っていただいてありがとうございました。これをずっと待っていたんで。
私、この資料を見て、実は現状の能力との見方が難しいので、私の方でわーっとチェックしてみたんですけども、すごい事実がありまして、3月の方、これ見ていただくとちょっと大変なんで説明しますが、北風はいいです。南風のルートの右半分の方で、まず最初は3月14日の18時(筆者注:「17時」の間違い)から新ルートで94回飛んでいます。
(中略)
それから、3月29日の19時台、従来ルートで90回飛んでいます。それから30日は新ルートで90回飛んでいます。それから31日は従来ルートで午前中に95回飛んでいます。
(中略)
この事実を見ると、そもそも新ルートが本当に増える合理性があるのかと正直思ったんですね。それに対してご見解を。
大村氏の質問に対して、国交省(加島課長補佐)は、的確に反論することができなかったのである。
はい、すいません。ただいま頂いた質問なんですが、まだ数字の方の精査はできておりませんので、こちらの方でもちょっと確認等させていただければというふうに思います。
※詳細は、「羽田新ルート|固定化回避検討会などに係る国交省ヒアリング(24年7月29日)」参照。
羽田新ルート問題に関心のある方でも、大村氏の指摘を理解するのは難しいかもしれない。以下、できるだけ分かりやすいように解説する。
国交省の従来の説明:従来ルート(80回/時)⇒新ルート(90回/時)
まず「南風時」の昼間の運用状況について、従来ルートと新ルートの違いの確認(次図)。
従来ルート(左図)では、離発着の合計は80回/時なので、「時間帯により大きく異なる国際線の航空需要に対応することが困難」とされている。
一方、新ルート(右図)であれば、離発着の合計は90回/時まで可能となるので、「夕方の旺盛な国際線需要に応えるには、上記の選択肢以外にない状況」というのが、国交省のこれまでの説明である。
FAQ「滑走路の使い方をどのように見直したのですか」|国交省を元に筆者作成
ところが、今回国交省が開示した離着陸回数データ(上述)によって、従来ルートでも90回/時を超える処理ができてしまった日があることが確認されたのである。
従来ルートでも離発着「90回/時」以上の運用あり!
国交省が今回開示した表形式のデータを元に、横軸を日時、縦軸を1時間当たりの合計離発着回数のうち80回以上に絞って描いたのが次図。
新ルートだけでなく、従来ルートでも離発着が「90回/時」以上で運用された時間帯が発生していたことが確認できる。
従来ルートで離発着が「90回/時」以上で運用された時間帯は、何回あったのか?
1時間当たりの合計離発着回数の頻度分布(次図)で確認してみると、「81~90回/時」が31回、「91~100回/時」が3回発生していたことが分かった。
「91~100回/時」が3回発生していた具体的な日時は、次の通り。
- 2月15日17:00~17:59|93回(=離陸48+着陸45)
- 3月17日17:00~17:59|95回(=離陸49+着陸46)
- 3月31日11:00~11:59|95回(=離陸54+着陸41)
ちなみに、新ルートに係る1時間当たりの合計離発着回数の頻度分布は次図。
「81~90回/時」が16回、「91~100回/時」が1回発生。
従来ルートよりも発生回数が少ないというなかれ。2・3月は北風運用が多いので、従来ルートと新ルートの時間帯別の発生回数の比較にはあまり意味はない。
重要なことは、国際線の航空需要に対応することが困難とされていた従来ルート離発着80回/時を上回る回数で運用されていたという事実が確認できたことだ。
新ルートなくても、従来ルートで対応できるんじゃないの、という話。国交省の抗弁が待たれる……。
あわせて読みたい