6年連続、企画競争を経て随意契約で博報堂が受注していたが、23年は2020年東京五輪テスト大会をめぐる独占禁止法違反疑惑で入札への指名停止措置を食らい、東北新社がタナボタ受注。今年度は東北新社か博報堂のどちらが受注するのか注目していたのだが、再び博報堂が約2.5億円で受注した。
国交省に情報開示請求してから2か月余り(請求5月12日⇒受領7月29日)、ようやく関係文書を入手できたので、ひも解いてみた。
24年は再び博報堂が受注
入札公告(航空局)24年3月28日
提出期限 24年4月17日17時00分
履行期間:契約締結日の翌日から25年3月31日まで
※企画競争
本業務は、令和2年3月29日より羽田空港において運用が開始された新飛行経路の運用状況や、騒音・落下物対策に関する国の取組み及び羽田空港そのものの経済的重要性や機能強化のメリット等について、各種広告媒体を通じた情報提供を行うとともに、新飛行経路下の住民の意見把握を行うものである。
この業務は6年連続、企画競争を経て随意契約で博報堂が受注していたが、23年は2020年東京五輪テスト大会をめぐる独占禁止法違反疑惑で入札への指名停止措置を食らい、東北新社がタナボタ受注。今年度は東北新社か博報堂のどちらが受注するのか注目していたのだが、再び博報堂が受注した(次表)。
※東北新社は、2021年2月当時内閣総理大臣であった菅義偉氏の長男を含む東北新社の役職員が、監督官庁である総務省の幹部職員を接待していた問題を起こしている(WIKI)
開示請求により入手した文書
筆者は今回、次のように開示請求をした。
※前回、前々回の開示請求で本件に係る文書は把握できていたので、今回もピンポイントで文書請求。
国土交通省航空局航空ネットワーク部首都圏空港課長が令和5年2月15日に企画提案書の提出を招請した「羽田空港機能強化に係る情報提供・意見把握検討等業務」に係る以下の文書
(1)特定通知書
(2)非特定通知書
(3)企画提案に関する評価結果
(4)予定価格調書
(5)請負契約書
(6)企画提案書
そして今回、国交省が開示したのは次の5つの文書。
- 企画提案書(PDF:1.4MB)
- 企画提案に関する評価結果(PDF:48KB)
- 特定通知書(PDF:85KB) ←博報堂に送付された文書
- 請負契約書(PDF:917KB)
- 予定価格調書(PDF:88KB)
※非特定通知書(落札できなかった企業に通知する文書)が不存在となったのは、1社入札(博報堂のみ)だったため。
以下、順にひも解く。
企画提案書:全頁のり弁
企画提案書は22枚。鑑(表紙)以外のページは全面マスキングされて真っ黒。いわゆるのり弁である(次図)。
これでは博報堂がどのような提案をしたのか全く分からない。
企画競争実施の公告文書には次の記載があったにもかかわらず、全頁がのり弁となった。
(7)特定した提案内容については、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」(平成11年法律第42号)において、行政機関が取得した文書について、開示請求者からの開示請求があった場合は、当該企業等の権利や競争上の地位等を害するおそれがないものについては、開示対象となる場合がある。
なぜ、全頁がのり弁となったのか。
「行政文書開示決定通知書」には、のり弁理由につき、次のように記されていた。
開示する行政文書のうち、企画提案内容については、当事業を実施する法人のノウハウに関する内容であり、法第5条第2号イの「公にすることにより、当該法人又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」に該当するため、当該情報が記録されている部分を不開示とした。
企画提案に関する評価結果:ほぼのり弁
「企画提案に関する評価結果」は、A4横1枚。ほぼのり弁(次図)。
招請に応じたのがA社(=博報堂)1社であることと、受注に至ったA社の評価点が92.8点であることが分かる。
「提案内容に対する評価」に係る項目は非公開となっている。なぜ非公開なのか。
「行政文書開示決定通知書」(PDF:805KB)には次のように記されていた。
②の文書(筆者注:企業提案に関する評価結果)のうち、詳細な評価項目・配点については、職務上必要な関係者以外には知られていない非公開の情報であり、公にすることにより不特定多数の者が知ることとなった場合、企画提案書審査に伴う契約業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、法第5条第6号柱書きの「当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」に該当するため、当該情報が記録されている部分を不開示とした。
ようするに、国交省がどのような点をどのように評価したのか、手の内は明かさないということである。
特定通知書:博報堂は100点満点の92.8点
本業務を受注した博報堂に通知された文書(次図)。
鑑1枚と点数表からなる。
上表を可視化したのが次図。
「業務の理解度」と「業務の実施方針」は満点だが、「ワーク・ライフ・バランス等の推進に関する指標」については、5点満点に対して1点と低い。
請負契約書:契約額 約2.5億円
請負契約書は全部で26枚。3枚目に記載されている履行期間(令和6年6月12日~令和7年3月31日)と請負代金額(249,925,451円、税込み)のほかには重要な情報は見当たらない(次図)。
3枚目以降に記された各条文は、「役務の提供等」の請負契約書に使用される標準的な書式が下敷きになっているからだ。たとえば東京航空局HPの「入札・契約関係の要領等」にも公開されている。
予定価格調書:予定価格の100%で契約
A4横1枚。この予定価調書によって予定価格が249,925,451円に決定されていたことが分かる(次図)。
ということは博報堂が今回、予定価格の100%(=249,925,451円÷249,925,451円×100)で契約できたことになる。
雑感(なぜ2社でなく1社入札だったのか)
6年連続、企画競争を経て随意契約で博報堂が受注していたが、23年は2020年東京五輪テスト大会をめぐる独占禁止法違反疑惑で入札への指名停止措置を食らい、東北新社がタナボタ受注。今年度は東北新社か博報堂のどちらが受注するのか注目していたのだが、再び博報堂が約2.5億円で受注した。
東北新社でなく、博報堂が受注したことに驚きはないが、とっても気になることがある。
過去6年連続で博報堂が受注したうち、少なくとも21~23年度は2社による企画競争を経て契約していることが掲示請求にて入手した文書によって確認されている。ところが、24年度は博報堂の1社による入札だった(東北新社は応札していない)。
約2.5億円もの委託案件を複数社でなく、1社応札で処理した国交省の考え方を知りたいものである。
あわせて読みたい
- 情報公開請求によって入手した文書を分析した記事(まとめ)
- 羽田新ルートに係る気になる契約情報