マンションを買い替える人は、仲介業者に依頼するのが一般的。誰もができるだけ高く売りたい、買うタイミングに合わせて売りたいと考えるのだが、なかなかそうは問屋が卸さない。
多くの不動産仲介業者は、依頼者の最大利益ではなく、自分たちの利益の最大化を志向するという利益相反構造があるからだ。
そんななか、依頼者の利益を最大化するために働いてくれるのが不動産エージェント。
本書では、不動産の売却事例を通して、不動産エージェントに依頼することの具体的なメリットが描かれている。
マンション売却で時間的な余裕がある人にとって、不動産エージェントを利用してみる価値はありそうだ。
- 大西倫加・長嶋修(著)『悩める売主を救う 不動産エージェントという選択』幻冬舎 (2022/11/21)
レインズ掲載9割以上が囲い込まれている
レインズに掲載されている9割以上の不動産が囲い込まれているという。
顧客をたくさん抱えている大手不動産会社であっても、問題があるという事例が紹介されている。
「売れない」のではなく「他社に売る気がない」
(前者)レインズに掲載されている9割以上の不動産は「広告掲載区分」の項目が「不可」となっています。これはその名のとおり、物件を掲載している不動産仲介会社しか広告展開してはいけないことを意味しています。他の不動産仲介会社が物件を気に入り、うちで買主を見つけるために広告展開しようと思いついたとしても、広告掲載区分が不可であればいっさいの広告展開活動が行えないのです。
広告掲載区分が不可になっているということはすなわち、囲い込んでいますよ、両手取引を狙っていますよ、といった不動産仲介会社のメッセージともいえるわけです。他社が広告展開できないのですから、不動産が買い手候補の目に留まる機会も極端に減るわけなので、取引発生機会も著しく少なくなってしまいます。売主にとってこの状況は決して看過できるものではありません。
両手取引そのものは悪い手段ではありませんが、このようなルールとそれに付随した不動産仲介会社だけが得られるうま味があるからこそ、作為的な囲い込みが減らず、不動産取引のチャンスに恵まれず、悩む売主があとを絶たないのです。
たとえ囲い込みがあったとしても、大手不動産会社内での囲い込みであれば、顧客をたくさん抱えているから売却もスムーズなのではと考える方もいるかもしれません。しかし残念ながら、大手不動産会社の社内連携には疑わしい点が多々あります。
(中略)実際にこのようなことがありました。(以下略)
(P26-27/[PART 1]売主の幸せを追求する「不動産エージェント」とは)
不動産仲介の現場、日本と海外の違い
アメリカでは両手取引は禁止。売主と買主、それぞれで別のエージェントがつくのが常識だという。
不動産仲介の現場、日本と海外の違い
(前略)日本で習慣化している両手取引はアメリカでは禁止されています。一つの取引に対して、売主と買主、それぞれで別のエージェントがつくのが常識です。また、エージェントは厳しい審査をクリアした人間しかなれず、この厳格な審査によって高い倫理性が担保されています。
不動産の囲い込みもアメリカでは固く禁じられています。不動産情報を登録するデータベースとして日本ではレインズが有名ですが、アメリカにはMLS(Multiple Listing Service)があります。その規模はレインズの比ではなく、物件そのものの情報に加えて登記状況や過去の取引履歴など、不動産に紐づいたデータがほぼ網羅されています。掲載されている情報には制限がなく、MLSを閲覧できる立場であれば、その情報を使って自身の事業に自由に活用することができます。(以下略)(P165/[PART 3]不動産エージェントがこれからの不動産仲介を変える)
本書の構成
全3章、183ページ。
- [PART 1]売主の幸せを追求する「不動産エージェント」とは
- [PART 2]売主が絶対に後悔しないために――
- [PART 3]不動産エージェントがこれからの不動産仲介を変える
Amazon⇒『悩める売主を救う 不動産エージェントという選択』
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