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開示請求!「飛行計画経路の短縮実現に向けた要件調査」

国交省航空局が航空システムサービスに委託していた「飛行計画経路の短縮実現に向けた要件調査」(履行期限22年3月22日)に係る仕様書と報告書を開示請求によって入手した。

羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会」の検討内容とリンクしているのかと思って開示請求したのだが、入手資料を読むとどうも違ったようだ。せっかく入手した資料なので、内容を整理しておくことにした。

  • 仕様書(PDF:169KB)、報告書(4.6MB←ファイルサイズが大きいので注意!

※以下長文。時間のない方は「もくじ」と「雑感」をお読みいただければと。


もくじ

国交省に開示請求

航空局が21年9月2日に入札公告を出した「飛行計画経路の短縮実現に向けた要件調査」の「発注概要」には次のように記されている。

発注概要:飛行計画経路の短縮実現に向けた要件調査

  • 最最短経路対象便選定実現に向けた技術の整理運用方式変更の課題
  • 最短経路選定実現に向けた運用手順及び要件の整理及び提案
  • システム開発計画及び導入計画の提案
  • 導入コスト・維持コスト・効果の算出
  • 今後の AI 活用についての検討

羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会」の検討内容とリンクしているのかどう知りたくて、国交省航空局がK社に委託していた「飛行計画経路の短縮実現に向けた要件調査」(履行期限22年3月22日)に係る仕様書と報告書を開示請求することにした。

 

国交省に22年9月3日、同調査の報告書と仕様書を開示請求したところ、10月11日に「行政文書開示決定通知書」(PDF:0.6MB)が届いた。

同通知書には、不開示とした部分は「なし」と記されていた。

不開示とした部分とその理由

  • なし

 

同通知書が届いた翌朝(10月12日)、「行政文書の開示の実施方法等申出書」をe-Govを使ってオンラインで申請し、220円を電子納付したところ、翌日(10月13日)に公文書がe-Gov経由で届いた。

※22年4月からe-Gov電子申請システム上での開示文書の交付が可能になったため(ファイル容量上限12MB)、開示請求手続きが迅速化された。

報告書を読み解く

報告書の構成

報告書は全229枚。本文(204枚)と参考資料(25枚)で構成されている。

  • 第1章 調査の概要
    • 1.1 調査の背景および目的
    • 1.2 調査内容
    • 1.3 調査フロー
    • 1.4 調査結果の概括
    • 1.5 本調査で使用する用語、略語
  • 第2章 AIの技術および活用に関する調査
    • 2.1 本調査におけるAIの定義
    • 2.2 代表的なAI技術とその活用場面
    • 2.3 海外の航空業界におけるAI活用動向調査
    • 2.4 他分野へのAI技術の活用事例
    • 2.5 AIシステムの運用体制
    • 2.6 航空管制システムにおけるAI開発および運用プロセス
  • 第3章 最適経路対象便選定についての検討
    • 3.1 最適経路対象便選定の運用要件
    • 3.2 最適経路対象便の選定方法について
    • 3.3 1stStep 予め設定された短縮経路へ変更可能な便の提案
    • 3.4 2ndStep 最適経路へ変更可能な複数便の組み合わせを提案
    • 3.5 最適経路対象便選定の運用フロー
    • 3.6 最適経路対象便選定における平等性の実現方法
  • 第4章 最適経路対象便選定に関するシステムの導入
    • 4.1 機能要件
    • 4.2 システム構成
  • 第5章 システム開発および導入計画
    • 5.1 1stStepのシステム開発計画および導入計画
    • 5.2 2ndStepのシステム開発計画および導入計画
  • 第6章 費用対効果
    • 6.1 費用の検討
    • 6.2 効果の検討
    • 6.3 費用対効果の分析
  • 第7章 今後の航空管制におけるAI活用に関する検討
    • 7.1 航空管制システムにおけるAI活用
    • 7.2 TOPS の既存機能へのAI適用
    • 7.3 AI活用の今後の展望
  • 【参考資料】別紙1 AIC 経路と最適経路の経路差調査結果
調査概要

「1.1 調査の背景および目的」として、飛行計画経路の短縮実現のために、管制システムへのAI技術等の導入可能性を検討する旨が記されている。

(調査の背景)

(前略)エアラインは飛行経路を計画する際に、AIC(Aeronautical Information Circular)によって指定される標準経路(AIC経路)に従っている。AIC経路は、円滑な交通流を形成する目的で、交差経路や上昇降下フェーズにおける対面交通の発生を抑制する等、さらには空域構成、航行援助施設や管制作業負荷等の様々な条件が考慮され、予め出発空港と到着空港を結ぶ路線毎に一律に設定されているため、最短の経路となっていない。

飛行計画経路長の短縮を行うには、AIC経路によらない最短の経路での計画が必要となるが、刻々と変化する空域の混雑状況、飛行経路上の管制官の作業負荷、エアライン間の平等性等を勘案し、最適な経路を飛行する対象便の選定をしなければならない。さらに対象便の選定は、飛行計画が提出される出発の2時間前から遅くとも出発の1時間半までに行わなければならず、短時間で複雑な条件の中から最も効果の出る組合せの対象便を選定することは、コンピュータによる計算なしでは実現できない

昨今、各産業分野においてAI(人工知能)技術の導入が進んでいる。管制システムは、AIによらない従来のロジックで組まれたシステムで構成されているが、小売り分野で活用されている需要予測AI技術や物流分野で活用されている最適な配送経路提案AI技術等を応用することにより、航空管制分野においてもより効率的な運航の実現に寄与するものと考える

(調査の目的)

本調査は、飛行計画経路のさらなる短縮実現へ向けた要件を調査し、特に航空管制分野においてAIを導入するにあたり必要なAI技術の整理・AI技術を用いた運用要件やシステム要件・プロトタイプを用いた可用性検証・開発/導入計画・導入コストや便益について整理することにより、今後の導入の判断の材料とすることを目的としている。

「1.3 調査フロー」として、次の5項目と各細目が描かれている(次図)。

  • (1) 最適経路対象便選定実現に向けた技術の整理
  • (2) 最適経路選定実現に向けた運用手順および要件の整理・提案
  • (3) システム開発計画および導入計画の提案
  • (4) 導入コスト・維持コスト・効果の算出
  • (5) 今後のAI 活用についての検討

飛行計画経路の短縮実現に向けた要件調査_調査フロー

全体スケジュール

「第5章 システム開発および導入計画」のなかに掲載されている全体スケジュールを見ると、完了するのは2031年度と息の長い計画であることが確認できる(次図)。

飛行計画経路の短縮実現に向けた要件調査_全体スケジュール

費用対効果

「第6章 費用対効果」の結論が「6.3.6 分析結果のとりまとめ」として、次のように記されている。

表6.3.6-1より、最適経路調整の導入においては、費用分析パターン①の1stStepはロジックで実装し2ndStepはAI(FO分析装置使用)で実装する場合が総合的にみて最も効率的で推奨できる整備方法であると考える。

費用対効果(表6.3.6-1)
拡大

AI活用の今後の展望

AI活用により、管制官が意思決定に注力できる管制支援システムの構築が可能になるとしている。

7.3 AI活用の今後の展望

  • 2021年度末より陸域CPDLC運用トライアルが開始したことを受け、航空路空域においてもデータリンクの運用が行われる予定である。航空路空域においては、管制指示がより複雑になるとともに、管制間隔も狭まることから、今後解決すべき課題が多くあると考えられる。
    しかし、AIが推奨した回避案をデータリンク機能でアップリンクするなど機能間連携を高度化することにより、より管制官が意思決定に注力できる管制支援システムの構築が可能となる
    さらに、国内高高度と洋上を飛行するオーバーフライト機について、最適な交通流を考慮した管制指示をシームレスに実施することが可能となり、AI適用によりTBOに近い世界が実現できると考えられる。

※CPDLC(Controller–pilot data link communications):管制官パイロットデータリンク通信(CPDLC)は、管制官パイロットデータリンク(CPDL)とも呼ばれ、航空管制官がデータリンクシステムを介してパイロットと通信できる方法のこと(WIKI)。

※TBO(Trajectory Based Operation):航空機の正確な経路を飛行する能力を使用して最適なパフォーマンスを得るために、空港から空港への航空交通を戦略的に計画および管理する方法のこと(WIKI)。

雑感

墨消し部分ゼロに感動

「羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会」の検討内容とリンクしているのかと思って開示請求したのだが、入手資料を読むとどうも違ったようだ。

飛行計画経路長の短縮のために、管制システムへのAI技術の導入可能性を検討した内容で、システムを開発し導入を完了するのが2031年度という長期の計画。羽田新ルートの固定回避のタイムスパンとは全く合わない。

詳細な調査・検討内容が記されているのだが、昨日のブログで紹介したのり弁満載の報告書「東京国際空港における同時RNAV進入運用の導入後安全性評価に関する調査」とは異なり、墨消し部分はゼロ。「事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」に該当しそうな部分はありそうに思えるのだが……。

記載内容は技術用語が多く難解だが、墨消し部分がないのでストレスなく読めることに感動を覚える。

ディスカウント受注!?

報告書の内容を読んでいて、気になった点がある。「システム開発および導入計画」(次図、再掲)である。

昨年度(21年度)はシステムに係る要件調査が実施されたことになっていて、まさに今回の調査報告書がその一部を成している。注目したいのは今年度(22年度)予定されている「システム設計」である。

飛行計画経路の短縮実現に向けた要件調査_全体スケジュール

じつは、昨年度の調査業務を144万円の「低入札価格」で落札(落札率10.5%)したのはK社。国交省は「低価格入札」を認めた理由の一つに、「経験豊富な要因を配置することで品質を下げることなく他社より工数を削減、少人数での効率的な調査の実施が可能」なことを掲げている。

(略)本調査に必要な管制業務、飛行方式業務等の知識や、実態調査を熟知した経験豊富な要因を配置することで品質を下げることなく他社より工数を削減し、少人数での効率的な調査の実施が可能とした。また、直接人件費及び直接経費の削減に努めることで、当該価格による入札を可能としたため。 

たしかに、K社は20年度に今回の調査の前段となりそうな「運航開始前の最適な飛行経路調整の自動化に係る導入検討調査」を受注した実績を有しているので、今回の調査を効率的に進めることができた可能性はあるのかもしれない。

そのK社は22年8月17日に「運航情報のデジタル化対応に関するシステム設計」も1千700万円(落札率93.6%)で落札しているのである。

 

「システム開発および導入計画」に記載されている「システム設計」と「運航情報のデジタル化対応に関するシステム設計」が同じものを指しているのかどうかは、仕様書や報告書などで確認しないと断定できない。

でも、もし同じものであったとすれば、来年度以降も「システム設計」に関連する業務がありそうだし、2025年度には「システム評価」の業務も予定されているなど、長期間にわたって関連業務を受注できる確度が高まるので、昨年度「低下価格入札」(落札率10.5%)で契約したことに頷ける。

まあ、あくまでも現時点では仮定の話ではあるが。

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2022年6月1日、このブログ開設から18周年を迎えました (^_^)/
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