公益社団法人東京青年会議所品川区委員会の主催で9月29日夜、オンラインによる「品川区長選挙 公開討論会」が開催された。
羽田新ルートに係る部分につき、各候補者の発言を文字起こししておいた。
※敬称略。
品川区長選挙公開討論会(概要)
公益社団法人東京青年会議所品川区委員会の主催で9月29日夜、オンラインによる「品川区長選挙 公開討論会」が開催された。
討論会は90分(20:30~22:00)。ニコニコ動画に生配信された動画は、録画を視聴することができる(次図)。
また、候補者6人の政策については、政策比較表として閲覧できる。
討論会90分の構成は以下の通りだった。
- 自己紹介@3分
- ファシリテーター から自己紹介に係る質問@1分
- 共通質問1(コロナ)@1分
- 共通質問2(羽田新ルート)@1分
- 共通質問3(庁舎建て替え・アリーナ建設)@1分
- 候補者クロストーク(2巡)←羽田新ルート2件含む
- 共通質問4(子育て支援、保育園の問題)@1分
- 共通質問5(学校選択制)@1分
- 共通質問6(区長になったら)@1分
- 共通質問7(地域のブランディング政策)@1分
- 最後に言いたいこと@30秒
羽田新ルートに係る各候補者の発言
討論会90分のうち、羽田新ルートに係る老討論は「共通質問2(羽田新ルート)」と候補者クロストーク2巡目で2回(山本氏から森沢氏への質問、西本氏から森沢氏への質問)あった。
以下、各候補者の発言を書き起こす。
※敬称略。
原(ファシリテーター ):新ルートの問題について
次の質問は、羽田低空飛行、新ルートの大問題についてでございます。
この低空飛行による騒音、今非常に大きな問題として捉えられておりますが、この新飛行ルートは維持されるべきでしょうかという質問をご用意させていただいておりました。
こちらは事前に皆様の回答からは、賛成の声はなかったかなと思いますけれども、もし異を唱えるとしたら、実際の飛んでしまってるものに対して、具体的に誰に何を伝えることで、どう現状を変更していくかっていうところの、少し具体性っていうとこも含めて、それぞれのお考えを是非お聞かせいただければと思います。
村川:従来の海側から来てもらうやり方等含めて、現実化してほしい
新ルートによる被害状況っていうのがありましてね。私たまたま東大井に住んでいて、京急立上駅の近くなんですが。ものすごい爆音ですよね。地上200m、ご商売やってる花屋さんとかもお客さんからの話が聞こえてこない。その花屋さんからバラ一輪もらったんですけど、それはそれとして、とにかく区が、区役所が責任持ってこの騒音についてデータをきちっと把握する。難聴の方もいればいろんなお立場の方、特に、子供に悪影響を与えますね。
それからルート変更っていうのはかなりこれは専門家の知恵を発揮していただく必要がありますので、私どもと勉強会などをやっている杉江さんっていう元JALの機長の方をはじめ、そういう方のご意見を聞きながら新しいルートをどうするかということで、従来の海側から来てもらうやり方等含めて、現実化してほしいなと思っております。
森沢:固定化回避、早期実現を求めていきたい
今は国が進めようとしている固定化回避というところ、早期実現を求めていきたいと思ってます。合わせて今もお話ありましたけれども、テレワーク中にうるさいであるとか、あるいはお子さんの習い事で先生の言ってる声が聞こえないといったような騒音の影響というのも出ているというのも事実であります。
それがどういったエリアで、どういったところで実際に起こっているのかというのをしっかりと現状を、影響を把握するために全区民アンケートという形で取りたいというふうに思ってます。そのファクト、事実をもって国にしっかりと働きかけていきたい、そのように思っています。
山本:断固反対
私としては断固反対。反対です。私自身、飛行ルートの真下に住んでおります。騒音被害を肌身で感じています。
経済的なメリットと区民の暮らしや命は比較するべきではないと考えています。もちろんこれは区の一存では決めることができない。しかし、まずは区民の声これをしっかりと聞いていくことがまず大事だと思ってます。
そして区民の声を明らかにするためには住民投票を実施して、そしてその結果をもってしっかりと国に対して届けることが大切だと思っています。
石田:代替案、私はだいぶ出してきたつもりであります
私の場合は議会の中でも決議をあげさせて頂いた時の、私は中心メンバーだったと思っておりまして、全会派一致で決議をあげさせていただきました。そして固定化回避、これの会議もそのことによって私は出来たと思っております。
基本的に私の家のすぐそばも飛んでるわけでありますけれども、国策でもあるわけでありまして、それに対する代替案、これも私はだいぶ出してきたつもりであります。その中でいかに将来を見据えてこの品川の上空を飛ばないようにしていけるのか、この活動をしっかりやっていきたいと思っております。
西本:海から出て海から入る、このルートにしなければいけない
羽田空港の新ルートについては議会の中で議連というのを作って反対、そして元に戻すという活動してまいりました。
したがって私の考えとしては、前の、海から出て海から入るという、このルートにしなければいけないと思っております。
そしてまず、住民投票ということで条例案が出て、否決されてしまいました。その経緯を含めて品川区民の皆様方の気持ちをまとめると。そしてそのまとめた意見を国交省に突きつけるということやってきたいと思っておりますし、また国としては、やっぱりできることはまだまだあるだろうと思っています。
横田基地の問題もありますし、国でもっとやることをやっていただいて、命より大切なものはないわけでありますから、品川区の上空からは飛行機の方は撤回をしたいと思っております。
候補者クロストーク
山本(⇒森沢):なぜ住民投票ではなくて、アンケートなのか
森沢さんにご質問させていただいてもいいですか。内容は羽田新ルート問題です。
これは森沢さんはアンケートという形をとっていらっしゃると思いますが、なぜ住民投票ではなくて、アンケートなのかと。区民の声をしっかりと届けるには、きちんとした住民投票の方が説得力があるのではないかと私は考えているのですが、その点はどのように考えていらっしゃるかを教えていただいてもよろしいでしょうか。
森沢:賛成・反対、対立のような構図が出てきてしまう
ありがとうございます。やはり住民投票であると、賛成・反対、そういった形で対立のような構図が出てきてしまうというふうにも感じています。
白か黒かでない第3の選択肢というのも私も都議会と都議会時代の姿勢として持ってきたんですけれども、やはりここは区民のニーズ、どういった影響が出ているのかということを実際に把握していく中で、それを持って国に働きかけて、こんな影響が出てるんですよということをしっかりファクト、ホント、事実を持って働きかけていくことが重要だと思っていますので、私は区民アンケートという形が有効だというふうに感じています。ありがとうございます。
西本(⇒森沢):固定化回避という意味合い?
すいませんもう一度、森澤候補にお願いしたいんですけど、すいません。飛行機の問題です。
先ほど固定化回避検討会の検討を、それを見るというふうに言ってますけれども、この固定化回避検討会はA滑走路、C滑走路を必ず使うということでの前提でやってるんです。そうなるとA滑走路、C滑走路を使うということは、品川区の上空は必ず通るんですね。必ず通るんです。ですので、固定化ということは、森沢候補からすると何を持って固定化回避という意味合いを持ってるんでしょうか。今の現状ですと固定化回避検討会の中身を見ると決して品川区の上空を通らないということにはならないというのが明白なんですが、いかがでしょうか。
森沢:粘り強く働きかけていきたい
あのー、それでいますと、あのですからこそ、このアンケート、区民の皆さんのアンケートをとって、どういった形でこの影響が出ているかということを踏まえた上で、国にしっかりとそこに影響が出ている、だからこそ、ちゃんとその固定化回避、違う方法もあるかもしれないといったことを、考えてほしいということを、粘り強く働きかけていきたい、というふうに思っております。
※質問に答えていない。
雑感
森沢氏:抽象的で中身が薄いが、好感度が高く演出されていた
アメリカ大統領選挙におけるテレビ討論会はその後の選挙戦を大きく左右すると言われている。もし今回の品川区長選挙公開討論会のあとに、品川区の有権者に討論会の結果アンケートが実施されたならば、森沢氏が高い支持率を獲得したのではないか。筆者がそのように考えた理由は次の2点。
ひとつは、森沢氏の話ぶりがとても好感度が高く演出されていたことだ。限られた時間内で要領よく回答できているできていることに加え、他の候補者が話しているときに何度もうなずくなど、画面に映し出される自分の表情までうまく表現できていた。話している内容そのものは、どちらかといえば抽象的で中身が薄いのだが、画面から受ける印象がそのことを感じさせない効果を生み出している。
2点目は、候補者クロストーク(候補者が候補者を指名して質問する)で森沢氏が最も多く指名されたこと(次表)。他の候補者から多くされたことで、森沢氏が有力候補であることを印象付ける効果を生み出している。
今回の公開討論会を無党派層が視聴すれば、その多くは森沢氏に投票するのではないだろうか。
※このブログを読んだ人に誤解されないために補足しておくと、森沢氏は公約に「はまの区政の継承と発展」を掲げていることから、羽田新ルートに関しても濱野区長が国に丸投げした姿勢を「継承」する可能性があること。
クロストーク西本(⇒森沢)で、西本氏から固定化回避の意味合いを問われ、森沢氏の回答は全く答えになっていないというか、はぐらかしていたのがその証左。
石田氏:候補者の中で話す内容が最も具体的
区議を6期も務めたこともあり、今回の候補者の中で話す内容が最も具体的であった。施策を進める能力が高いことを印象付けられたのではないか。
今回の公開討論会を自民支持層が視聴すれば、ネットで流布されている石田氏のネガティブな情報に対抗し得る安心材料を得たとして1票を投じるのではないか。
山本氏:話題の狭さとともに行政経験のなさが浮き彫りに
民間企業での経験(元三菱UFJ銀行員)を行政に活かすという基本姿勢はいいのだが、話す内容が「民間」に偏り過ぎていて得意・不得意分野が可視化された。話題の狭さとともに行政経験のなさが浮き彫りになってしまったのではないか。
容姿の良さが活かされず、話の軽さが40代という若さと相まって、視聴者には安定感を欠いた印象を与えたのではないか。
村川氏:評論家的
福祉に詳しい学者肌であることは伝わったかもしれないが(実際に元大学院教授)、何度も話が終わらないうちに時間切れになったこと、話している内容が評論家的であることなどを踏まえると、無党派層からの支持は得られなかったのではないか。
西本氏:ネット討論会形式への対応には失敗
区議を5期も務めたこともあり、どのテーマについても的確に話せていたし、実務能力が高そうな印象を与えていたのではないか。
ただ、ネット討論会形式への対応には完全に失敗している。背景にぼかしを入れていたことと本人の顔にあたる照明が暗かったことなど、視聴者に与える印象はよくない。
大西氏:体調不良で欠席は論外
品川区長選の6人の候補者のうち唯一欠席。体調不良のため欠席したとのことであった。これでは区政を任せられない。
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