不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

首都圏を中心に、不動産(マンション購入・賃貸)に係る分析記事を提供しているブログメディア


羽田新ルート2年、国交省の情報戦、羽田新ルート問題を取り上げない都議会

羽田新ルートの運用が始まって今日で2年。
新型コロナの感染拡大の影響で大幅な減便が続いているのにもかかわらず、なぜ政府は羽田新ルートの運用を強行し続けているのか――。


もくじ

コロナ減便下、なぜ羽田新ルートの運用を強行し続けている?

国交省の言い分、都民の反発

新型コロナ感染拡大の影響で大幅な減便を強いられているなかで羽田新ルートを運用し続ける根拠としての”フル運用に向けた助走期間論”はもはや説得力を失っていて、そのため国交省が主張し始めた千葉県民との”騒音共有化論”は都民から強い反発を受けて、「分散等の観点」というマイルドな表現に置き換わった(「騒音共有」から「分散等」へ)。

 

それでも都民からの反発は収まらず、港区議会で21年6月18日に「羽田都心飛行ルート下の住民・勤労者を対象とした実態調査と調査結果の公表を求める請願」が全会派一致で採択されたり、渋谷区議会で21年10月13日に「羽田新ルートの運用停止を国に求める意見書」が全派一致で採択されたりしている。

 

また、都議会有志は21年6月14日に「羽田新飛行ルート見直しのための都議会議員連盟」を結成

「固定化回避」という時間稼ぎ

固定化回避とは、羽田新ルートによって現在騒音などの悪影響を受けている住民にとって、将来緩和されるかような幻想を抱かせる表現。羽田新ルートを推進している自公や都民ファーストの議員らにとって都合のいい表現である。

斉藤大臣のように「国土交通省において安全性評価等の具体的な作業を進めているところです」(衆議院 予算委員会 22年2月16日)と言っておけば、当面の時間稼ぎにはなるだろう。

でも、固定化回避の中身が具体的になるにつれて、当初抱いていた幻想は落胆に変っていくのではないか。なぜならば、国交省はパイロットから見たら「あり得ないことを検討」(元JAL機長・航空評論家の杉江弘氏 21年4月24日)しているからだ。

意味がない 見直し
羽田新ルートの「固定化回避」は実現するのか」から

国交省の情報戦

選挙のタイミングに合わせてチラシを配布!?

国交省が羽田新ルートに関してチラシを配布したのは3回。うち2回は航路下の各区市役所等だけでなく、各戸にも配布している。

これらのチラシ配布時期と選挙期間との関係を可視化したのが次図。

都議選と衆院選のそれぞれのタイミングに合わせてチラシが配布されたように見えなくもない。

チラシ配布時期と選挙期間の関係

国交省が言いたいことはたくさん書かれているが、市民が知りたいと思うことや、市民に知らせるべきことが必ずしも書かれていないチラシ。羽田新ルートを推進している自公の候補者は活用したのだろうか……。

※詳しくは、「羽田新ルートのチラシ、選挙に合わせて配布!?」参照。

年度末にポスティングをする理由

5か月前にポスティングしたのに、なぜ22年度末のギリギリの時期に、まるで予算消化の年度末工事のように、ポスティングをしたのか。考えられる理由は二つ。

ひとつは、航路下住民に対して「丁寧な説明」を行ったという実績作り

もうひとつは、委託業務費との関係

じつは、前回チラシのポスティングも今回チラシのポスティングも、国交省が博報堂と21年度に契約した「羽田空港機能強化に係る情報提供・意見把握検討等業務」(契約金額2.5億円)の一部。

業務内容は「各種広告媒体を通じた情報提供を行うとともに、新飛行経路に対する住民の意見把握を行う」こととされている。第5回の固定化回避技術検討会がなかなか開催されないので、年度末のギリギリのこの時期のポスティングを実施することで、当初予定されていたポスティングの規模(配布地域・回数)との帳尻を合わせようとしたのではないか。

 

ちなみに、博報堂は5年連続(17~21年度)で「羽田空港機能強化に係る情報提供・意見把握検討等業務」を受注している。5年間の契約金額の合計は14億円を超える(次表)。

「羽田空港機能強化に係る情報提供・意見把握検討等業務」契約実績
羽田新ルート|気になる契約情報(22年度)※随時更新」より

 

※詳しくは、「羽田新ルート|半年も経たないのに2回目ポスティング」参照。

氷塊落下はなかったことに!?

22年3月14日15時30分過ぎ、渋谷区内のテニスコートに空から氷塊が落下。

テニスコートの周辺には氷塊が落ちてくるような高層建物はなく、またヒョウが降ってくるような気象状況ではなかったことから、氷塊は航空機からの落下物である蓋然性が高い。


ところが、国交省は「調査の結果、航空機由来の氷塊とは断定できない」とたったの2日で結論付けた。どのような検討プロセスを経て、誰が新ルートの運用を続ける判断を下したのか。国交省の説明責任とマスメディア(東京新聞を除く)の力量が問われている。

 

渋谷区内の氷塊落下関連記事

羽田新ルート問題を取り上げない都議会

都議会の定例会本会議の代表・一般質問で、積極的に羽田新ルート問題を取り上げているのは共産党だけ(次表)。

港区議会や品川区議会、渋谷区議会など、区議会レベルでは羽田新ルート問題が一定程度取り上げられているが、都議会では羽田新ルートを推進している自公や都民ファーストの議員はもちろん、立憲議員もほとんど取り上げないという異常な状況(と私は思う)が続いている。

羽田新ルートに係る定例会本会議代表・一般質問人数

※詳しくは、「都議会、羽田新ルート問題を取り上げない異常」参照。

【参考】羽田新ルートの運用実績

国交省が毎月末に公表している「羽田空港の新飛行経路の定期運用報告」(2か月前のデータが掲載されている)をもとに、羽田新ルートの運用実績を可視化した。

飛行機数の月次変化

飛行機数の月次変化(風向・別ルート)を次図に示す。

飛行機数の月次変化(風向・ルート別)
羽田新ルート|国交省の「定期運用報告」を可視化」より

北風時運用時間(7時~11時半・15時~19時)が南風時運用時間(15時~19時)より長いぶん、荒川北上ルートの便数が多くなる。

江戸川区民は、この荒川北上ルートだけでなく、従来の南風・悪天時の着陸ルートの飛行騒音の影響も受けている。詳しくは、「羽田新ルート|北風時の荒川沿いルート、江戸川区の陸域にまでズレ込んでいる」参照。

航空機騒音の月次変化

都心低空飛行ルート(南風時)

都心低空飛行ルート(南風時・A/C滑走路到着ルート)の騒音レベルの最大値平均の月次変化を次図に示す。

騒音レベルの大きさは概ね次の順となっている。

  • 高輪台小>田道小>広尾中>落合第二小>千早小>袋小>赤塚第二中

騒音レベルの最大値平均の月次変化 【都心低空飛行ルート(南風時)】


荒川沿い北上ルート(北風時)

荒川沿い北上ルート(北風時・C滑走路出発到着ルート)の騒音レベルの最大値平均の月次変化を次図に示す。

大型機通過時の騒音レベルは、概ね65~70dBの範囲で推移している。ただし、東京都の公表データと違って、各機最大値の最大値ではなく、各機最大値の平均値であることに要留意。

騒音レベルの最大値平均の月次変化 【荒川沿い北上ルート(北風時)】

※詳しくは、「羽田新ルート|国交省の騒音測定データを可視化※随時更新」参照。

あわせて読みたい

羽田新ルートの運用が始まって1年目の記事。

2021年6月1日、このブログ開設から17周年を迎えました (^_^)/
Copyright(C)マンション・チラシの定点観測. All rights reserved.