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羽田新ルート|大田区議会「22年第1回定例会」質疑応答

大田区議会「22年第1回定例会」本会議の一般質問(2月24日)で、杉山公一議員(共産)から羽田新ルートに関しての質疑応答があった。

議会中継(録画)をもとに、テキスト化(約6千文字)しておいた。

※以下長文。時間のない方は「質疑応答のポイント」と最後の「雑感」をお読みいただければと。

※議員質問(質問3つ)⇒空港まちづくり本部長(3問目への回答)⇒環境清掃部長(1&2問目への回答)の順に質疑が行われたが、読みやすいように、一問一答形式に再構成した。


質疑応答のポイント

1.区民の健康を守るための航空機騒音の規制強化

杉山公一 (日本共産党大田区議団)
杉山公一 議員(共産党、区議1期、元全日空社員、静岡県私立自動車工業高校卒、66歳)

問1:羽田空港周辺住民の健康影響を低減、騒音の規制を強化するべき

羽田空港機能強化増便新飛行ルートは、区民の命と健康、財産を脅かすものであり、到底許されるものでありません。今すぐ中止しようという観点から質問します。


なぜ命と健康、財産を脅かしてるのか。その一つが騒音の問題です。
大田区では1973年10月9日の議会において、区民生活の安全と快適な生活環境が確保されない限り羽田空港の撤去を要求するとの決議を経て、1977年6月12日羽田空港移転促進住民大会が開催され、5地区の住民約1000人が参加し、地元選出の衆参両議院、都議会議員、大田区議会議員、大田区長も出席し、大田区民の生活環境と自然環境を回復させるためには羽田空港沖合移転を早期に実現しよう、との決議が満場一致で採択されました。


その後、羽田空港移転問題協議会において、18項目の問題点が確認され、1983年に当時の運輸大臣が羽田空港沖合展開基本計画を策定し、騒音問題の解消などが盛り込まれ、羽田空港の沖合移転工事が着工し、騒音も沖合に移転しました。当時の住民の要望自体が後押しするという自治体本来の姿がありました。


2020オリンピック・パラリンピック開催の訪日外国人旅行客の増加と、その後のインバウンドによる旅客需要の増加を見込み、国際線の増便のため羽田空港機能強化増便新飛行ルートが2020年3月29日から、住民からの反対の声がある中で開始され、南風時の15時から19時までの約3時間において、都心上空を羽田空港 A/C 滑走路に着陸、 B 滑走路を西向きに離陸するというより運用が行われてきました。これにより騒音が沖合展開で遠のいたのに、移転前の状況に戻ってしまいました。


羽田空港は 沖合展開で24時間空港となり、深夜、早朝も貨物便が運航されるなど、住民の睡眠への影響が出ています。これまでに議会に出された陳情でも、うるさくて寝られないので深夜・早朝の飛行を規制してほしいなどの声が出されています。また、騒音によるストレスが生活環境を脅かしてるなどの声があげられています。


国土交通省は騒音の規制を環境基本法第16条第1項の規定に基づく騒音に係わる環境上の条件につき、生活環境を保全し、人の健康に資する上で維持することが望ましい航空機騒音に関わる基準で、もっぱら住居に供される地域をLden57dB、それ以外をLden62dBとしています。


新仲七町会館では最高値83.9dBを超える単発騒音も計測されていますが、Ldenに換算するとLden 51 dBとなり規制値の範囲内に収まってしまいます。

日常生活での一般的な騒音レベル、日常生活で静かだと感じるのは45dB以下です。望ましい音のレベルでは40から60dBであると言われています。

東京都の「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」では、日常生活等に適用する規制基準を定めており、これを超える騒音を発生させてはならない旨が規定されています。条例136条。区域や時間帯により40から70 dBに規制されています。

そこでお聞きします。環境基本法により航空機騒音に係る基準で規制されていますが、東京都の「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」では日常生活等に適用する規制基準を定めており、これを超える騒音を発生させてはならない旨が規定されています。条例136条。


羽田空港周辺住民の健康影響を低減するためには、騒音の規制を強化するべきでありませんか。環境基本法による航空機騒音に係る基準をより厳しくするように国に働きかけることが必要ではありませんか。お答えください。

答1:騒音規制強化ではなく、実情に応じた各種騒音軽減策の実施を求めて

環境清掃部長
環境清掃部長

私からは羽田空港に関する二つのご質問にお答えいたします。
はじめに、飛行機騒音の規制の強化のご質問ですが、航空機騒音の環境基準は環境基本法に基づき、地域類型ごとの基準値が告示され、その 類型は都道府県知事が指定することになってございます。

航空機騒音は時間帯補正等価騒音レベルであるLdenが評価指標として規定され、測定についても環境省がマニュアルを定めており、区ではこのマニアル基づき航空機騒音を測定しております。


3か所の航空機騒音調査地点における測定値はいずれも環境基準を下回っております。

また、航空機騒音と健康に関しました様々な機関などで研究報告されてることは、区としても承知しております。航空機騒音が直接健康に与える影響などにつきましては、その因果関係を含めて明確な結論が示せる段階ではないと認識しております。


区はこれまでも国に対し、騒音規制強化ではなく、実情に応じた各種騒音軽減策の実施を求めてまいりました。区では引き続き、軽減策の効果に関する検証や評価を含め、こうした対策の強化・徹底を国に求めてまいります。

2.脱炭素社会実現のため、排気ガスによる環境破壊、温暖化防止

問2:2030年までに増便に規制をかけ、二酸化炭素排出を減らしていく

杉山公一 (日本共産党大田区議団)

次に、増便すれば増便するほど、航空機の排気ガスが増加し、人体に与える害悪も増えます。そして、地球温暖化を進める温室効果ガスも増えます。2018年の世界の二酸化炭素排出量は約335億トンにもおよびました。その中で航空機からの排水量は7億4680万トンで全体の2.2%です。航空機からの排出量において、日本は4番目に多い2342万トンの二酸化炭素を排出します。


日本の航空機からの二酸化炭素排出量削減策はICAO国際民間航空機関の国際基準に従うとしていますが、持続可能な航空機燃料の開発と利用、カーボンアセットの購入で、実際の二酸化炭素の排出量削減にはなり得ていません。


5番目に多い排出量のドイツでは2217万トンを排出していますが、燃料を持続可能な航空機燃料に置き換える、国内旅客の20%を空路から鉄道による移動に変更、ヨーロッパ空域の迂回路を減らし飛行機経路を最適化し燃料の消費を抑えることで二酸化炭素の排出を減らす、航空業界の歪みを排除し、カーボンオフセットおよび削減スキームの調整、エネルギー供給、建物とシステムの技術、 EV などへのシフト、空港の小売りケータリング事業では使い捨てプラスチックの排除など、非常に細い二酸化炭素排出量を具体的に削減する対策が進められています。


そこでお聞きします。経済優先、儲け優先の増便ではなく、ドイツのように地球環境に優しい、人にもやさしい経済にすること。地球の温暖化を防ぐには時間がありません。2030年までに増便に規制をかけ、二酸化炭素排出を減らしていくことです

脱炭素社会の実現に向けて取り組む大田区として、羽田空港を抱える大田区として、航空機および空港関連から排出される二酸化炭素の削減も待ったなしです。

国や東京都と連携して羽田空港を含む大田区全体で温暖化効果ガスを2030年度までに2010年比で60%減らす対策をとることです。お答えください。

答2:脱炭素社会の実現、羽田空港のみならず、区民、事業者等との連携により着実に取り組み

環境清掃部長
環境清掃部長

次に、羽田空港を含む大田区全体での二酸化炭素排出削減についてご質問ですが、国内空港の二酸化炭素削減は国の責任において取り組みが進められ、国際空港につきましては、国別に排出量を算定することが困難なことから、国際民間航空機関であるICAOの枠組みのなかで加盟国が取り組むこととされております。国内航空における二酸化炭素削減については、機体の軽量化、代替燃料の導入などの検討が国において進められております。

空港施設における温室効果ガス排出量につきましても、2030年度までに2013年度比で46%以上削減することを目標として検討を進めております。

こうした流れを踏まえ、国は羽田空港を含む21の空港を重点調査空港に選定し、脱炭素の計画を作り、重点的な取り組みを進めることとしております。区は国による空港の脱酸素化に向けた重点的な取り組みついての温室効果ガス削減目標の達成に大きく貢献するものと考えております。大田区は2050年度まで脱炭素社会の実現を掲げております。その実現に向けて羽田空港のみならず、区民、事業者等との連携により着実に取り組みを進めてまいります。以上でございます。

3.区民の命と財産を脅かす航空機事故のリスクを軽減すること

問3:「海から降りて海に飛び立つ方式」に戻すこと

杉山公一 (日本共産党大田区議団)

次に、飛行機数が増えれば増えるほど航空機事故のリスクも増えます。騒音被害を減らすために、ゴーアラウンドを減らす取り組みが国土交通省から2021年11月26日付で大田区空港まちづくり本部宛に出され、本年4月1日より運用が開始されようとしています。


この問題で日本共産党大田区議団は2021年12月24日に国交省とレクチャーを開始しました。その時質問しましたが、「小さな部品に対してできる限り運航便に影響が出ないようなタイミングを調整して点検を行うことで、ゴーアラウンド減少に向けた取り組みを行う」は、これまでは部品欠落の報告が上がれば直ちに滑走路閉鎖し滑走路に部品が来てないか安全点検するのが常でした

これは航空機行政の安全に対する規制緩和であり、許せるものでありません。「小さな部品の大きさ、重量などの定義はあるのか」との質問に対し、「大きさなどの定義はない」との答弁は言語道断です。

羽田空港の着陸は2分から4分の間隔で降りてきます。どこをどのようにすればタイミングを調整して点検するのでしょうか。

宮崎空港に行政視察に行った時に滑走路の点検状況も見ましたが、小石一粒も見逃すものかと、広大な滑走路を点検しています。これが安全を担保してる証です。


私は前職で42年間航空機のエンジン整備を担ってきましたが、米粒大の異物でも航空機エンジン内部に吸い込まれると内部の部品の損傷を招き、内部が大きくが破壊される事例を数多く見てきました


安全を保つためには手抜きはできません。2022年2月12日には成田空港で落下物が発見されたとの報道がありました。11日に上海から到着した貨物機のものとみられています。A滑走路脇の草むらで長さ4.4m、幅60cm、 重さ 60 kg の部品が発見されています。

千葉県は国土交通省へ、日本貨物航空からの部品欠落事故については着陸時の空港内とはいえ、欠落部品も大きく、看過できるものではない。一歩間違えば人命にも関わる事故が発生したことは憂慮に耐えない。事故原因究明と再発防止について、改めて成田空港を利用する航空会社へ徹底した指導を行うとともに、地域住民の不安を解消するため、落下物防止対策に万全を期すよう要請しています。


これまでも万全の対策をしてきたはずですが、落下物、欠落部品は無くなりません。世界の民間航空機事故は2012年から2021年の10年間で約100件起きてます。

2021年10月19日米国のテキサス州ヒューストンの空港で発生した事故では、 MD 87型機が離陸に失敗し、滑走路を外れフェンスを破って草むらに突っ込み炎上しましたが、幸いにも怪我人が2人で死亡事故には至っていません。

草むらですから大事に至らなかったのです。羽田空港 B 滑走路西向き離陸中に同様の事故が起きる危険性もあります 。B 滑走路の西の端から1,200m 先にはキングスカイフロント、1,500m 先には各種液化ガスおよび圧縮ガスの製造・販売する工場があります。

事故が起きれば大惨事になります。大田区に大きな影響が及ぼされます。大惨事を引き起こさないためには川崎のコンビナートに向けて離陸しないことです。安全より経済優先ではだめです。


そこでお聞きします。事故や落下物を減らすことはできても、なくすことはできません。区民生活の安全と快適な生活環境を確保することは自治体の役割であり、より安全な飛行方式に戻すべきです。

小さな部品欠落に対して、できる限り運航便に影響が出ないよう、タイミングを調整して点検を行うことでゴーアラウンド減少に向けた取り組みを行うことは、航空行政の安全に対する規制緩和です。部品欠落の報告が発せられたら、部品の大小にかかわらず即座に滑走路を閉鎖して安全確認を行う(という)元の状態に戻すべきです。


また、羽田空港の機能強化増便新飛行ルートの運用を中止し、以前の飛行方式に「海から降りて海に飛び立つ方式」に戻すことを国に働きかけることです。お答えください。以上で質問を終わります。

答3:飛行経路の設定等、国家としての航空政策であり、国の責任において判断

空港まちづくり本部長
空港まちづくり本部長

私からは羽田空港の運用に関するご質問にお答えをいたします。この間、区では地域からのご要望を受け、国に対し ゴーアラウンド の減少を進め、騒音影響の軽減に努めることを要望してまいりました。

これを受け国では検討を重ね、航空機の安全性に対するリスクの低い小さな部品の欠落に対しては、できる限り運航への影響が出ないようにタイミングを調整して、滑走路点検を実施する取り組みを本年1月から新たに実施しております。


国は今回の運用に関して、過去の運航データや研究機関等による検証により、航空機の運航の安全性に対するリスクが低いと考えられること、海外空港においても同様の事例があることから、安全上のリスクに変わりがなく、問題はないと考えるとしております。


国が安全を確保しつつ、騒音低減につながる取り組みを進めたことにつき評価をしております。また、国では航空機の運航について、落下物防止対策を含め幾重もの安全対策を積み重ね、事故発生を防ぐための取り組みを行っております。

区といたしましては、航空機の安全は最優先で確保しなければならないものであると考えてございます。飛行経路の設定等につきましては、国家としての航空政策であり、国の責任において判断していくものと認識しておりますが、環境対策や安全対策などに確実に取り組むとともにさらなる対策の強化・徹底を強く求めてきたところでございます。


今後も国が実施する騒音対策や落下物防止対策を含め安全対策などの取り組みを注視し、引き続き万全を期すよう求めてまいります。

なお、2月11日の成田空港における落下事案につきましては、国土交通大臣に対しまして、徹底した原因究明や再発防止を図るなど、取り組みを一層強化するよう、区長が副会長を務めております「全国民間空港関係市町村協議会」として申し入れを行っているところでございます。私からは以上です。

雑感

今回の定例会本会議で質問に立ったのは、全部で13名(代表質問4名、一般質問9名)。そのうち羽田新ルート問題を取り上げたのは共産党(1名)だけだった。

登壇した杉山議員(共産、区議1期)は、個人質問の15分枠の全てを使って、羽田新ルート問題に絞ったうえで、騒音規制、脱炭素と幅広に質問するだけでなく、自身の42年間の全日空でのエンジン整備のキャリアを踏まえた質問は説得力があり、アッパレであった。

ただ、残念なことに、大田区議会本会議の代表・一般質問は再質問がないので、全く議論が深まらない。まさに”原稿棒読み大会”なのである。
大田区民はこのような区議会の現状を知っているのだろうか……。

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2021年6月1日、このブログ開設から17周年を迎えました (^_^)/
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